今回の観測は、M87やいて座A*のブラックホールシャドウの撮影を行ったイベントホライズンテレスコープ(EHT)の観測と同様に、国際ミリ波VLBI観測網(GMVA)と、アルマ望遠鏡(ALMA)を組み合わせた国際的なVLBIネットワークによって実現した。それに加え、3C 273のジェット全体の形状を測定するため、欧米の高感度VLBI観測網(HSA)による多波長観測も実施され、ジェットの撮影が異なる空間スケールでもって行われた。観測時期は、EHTのブラックホールシャドウの撮影と同時期の2017年のことだという。
今回の観測では、クェーサーから噴出するジェットの最も内側の領域を初めて捉えることに成功したほか、噴出するプラズマ流の開口角が中心から広範囲に渡って徐々に狭まっていき、細く絞られていくことも発見。ジェットの絞り込みが起きている領域は、中心の大質量ブラックホールの重力が影響する領域を超え、遥か遠方にまで続いていることが明らかにされたという。
なお、今回のようなジェットの絞り込みは、これまで近傍のより暗く活動度の低い大質量ブラックホールにおいて発見されてきたというが、活動性のまったく異なる大質量ブラックホールで、なぜ同じようにジェットが絞り込まれるのか、今回の観測で新たな謎が浮かび上がったと研究チームでは説明している。
また、今回の成果については、さまざまな大質量ブラックホールから噴出するジェットの絞り込過程の解明に向け、新たな扉を開いたとしているほか、今後のEHTによるさらに高い周波数帯での観測により、遠方のクェーサーやほかの大質量ブラックホールの詳細な構造を調べることが可能となるとしており、今後も各国の研究者と協力しつつ、世界中の望遠鏡や最新の技術を駆使してブラックホールやジェットの謎に迫っていくとしている。