インターネットイニシアティブ(IIJ)/東京大学/富士通/APRESIA Systems/NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)は11月24日、NEDOの「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/先導研究(委託)」で取り組む「Local5G/6Gモバイルシステムのオープンソースソフトウェア開発」において、5G携帯電話網の中核技術である5Gコアネットワーク(5GC)の国産・低コスト化に成功したと発表した。

  • 今回開発された5Gコアネットワークのイメージ

    今回開発された5Gコアネットワークのイメージ

この事業は、ポスト5Gや次世代の通信規格を見据え、携帯電話網を構成する技術を日本が持つことが市場競争・経済安全保障上の重要課題となっていることを踏まえ、2019年度からNEDOにおいて進められているもの。今回の成果は、携帯電話網の制御などを行うソフトウェアであり、ローカル5Gの実現に向けて国産・低コスト化が求められていた5Gコアネットワーク(5GC/5G Core Network)について、国産・低コスト化に成功したという内容だ。

具体的には、IIJ/APRESIA Systems/富士通の三社が5GCをオープンソースの「free5GC」を元に商用レベルの機能・性能・安定性を備えた「実用版」として実装し、東京大学大学院工学系研究科が本事業で開発された5GCに保有する既存知財を組み合わせ、データ転送・経路選択を担う機能であるUPF(User Plane Function)を高度化し、新たな特許として出願した。

今回の実装された5GCは、数回線~数千回線を効率的に管理できるようなコンパクトな実装となっているという点で、数千万回線を管理することを想定した大手通信キャリア向けの5GCとは異なる。オープンソースソフトウェアを元に開発したことで知財コストの負担が軽く、ローカル5Gのような小規模な5Gシステムを多数構築する環境に適しており、汎用機器で動作するソフトウェアとして実装されているため、5GCをクラウド化して最大限に活用できるとしている。

オープンソースソフトウェアによる実装は透明性の点で優れているが、商用利用に必要な機能が不足する、性能や安定性の検証が不十分であるといった技術的な課題がある。今回の事業では、商用ネットワークの運用を行うIIJ、商用ネットワーク製品を開発するASPERIA Systems/富士通の知見により、機能追加/性能向上/安定性の検証を実施し、商用製品として利用可能なレベルまで品質を引き上げているという。

今後、ASPERIA Systems/富士通はこの5GCを両社の5G基地局・端末設備と組み合わせたローカル5Gシステムとして製品化し、継続的に更新版としてリリースしていく。またIIJは、この5GCを用いた複数のローカル5G網と同社がMVNO事業者として提供するパブリック5G網をローミングにより利用できる通信サービスの開発を推進する。

  • ASPERIA Systems/富士通によるローカル5Gシステム製品化のイメージ

    ASPERIA Systems/富士通によるローカル5Gシステム製品化のイメージ

  • IIJが推進する複数のローカル5Gシステムのイメージ

    IIJが推進する複数のローカル5Gシステムのイメージ

さらに、東京大学は大学発ベンチャー企業の一体型ローカル5Gシステムに今回の開発成果を供給する予定としており、東京大学と民間企業の産学連携の取り組みの中で、本事業の5GCを活用した製品・サービスの検討を進め、パブリックなクラウド上で稼働するオープンな基地局設備についても研究開発を行い、5G携帯電話網のさらなる進化(=クラウドネイティブ化)に向けた取り組みを加速させるとしている。