同じ文字列でも使うフォントによってまるっきり印象が変わるなど、奥深いフォントの世界。

京都の浄土宗の寺院の副住職で、フリーペーパー『フリースタイルな僧侶たち』の編集長である稲田ズイキさん(@andymizuki)が投稿した掛け軸の書体に、「江戸時代すごい」と注目が集まっています。

実家にあった掛け軸、てっきり現代の書家の作品かと思ってたら、江戸時代の作品やってビックリした。なにこの今っぽすぎる書体……(@andymizukiより引用)

  • (@andymizukiより引用)

この投稿に対してリプライでは、「フォント職人が江戸時代にw」「パンクアートを感じました。江戸時代すげえです」といった驚きの声が続々。

「ムゲンっぽくて妄想が捗る」「海賊王目指してる人が使ってそうw」「漫画タイトルロゴじゃん…」など、ゲームや漫画、アニメを思わせるという声も相次ぎました。

投稿者の稲田さんいわく「徳本という、江戸後期のとても有名なお坊さんの書いたもので、これは『利剣名号』といって、字の端を剣のように鋭くして悪い因縁を断ち切るように書かれているだと、父に教えてもらいました。もちろん家にあるのは本物ではなく写しです」とのこと。

徳本上人は、ただひたすら「南無阿弥陀仏」を唱えて日本全国を行脚した念仏行者のひとり。木食や真冬の水行などの厳しい修行をしながら1日に何万回も念仏を唱え、庶民の救済に力を入れたといいます。

掛け軸のオリジナルは、兵庫県丹波市にある来迎寺に所蔵されているそうですよ。

「江戸時代にこんな書体があったなんて」と、多くの人を驚かせた元ツイートは、10月25日時点で21.9万件もの「いいね」を獲得。ツイ主の稲田ズイキさんに反響への感想などをうかがいました。

「今っぽすぎる書体」、投稿者に聞いてみた

――ご実家にある掛け軸とのことですが、昔からご実家にあったものですか?

実家のお寺の本堂の隣にある応接間の掛け軸で、5年前くらいから飾られていたと思います。掛け軸自体は昔から家の蔵にあったものだそうです。

――「南無阿弥陀仏(六字名号)は様々な書体で表現されている」というツイートもあります。稲田さん個人の体感として、変わった書体で書かれたものも多いのでしょうか?

僧侶のくせして自分はこうした名号には詳しくないので、ぜひともツイートのリプライ欄を確認してください。仏教タイポグラフィ展が勝手に開催されていますので(笑)。

――今回のツイートには多くの反響が寄せられていましたね。

ツイートのインプレッション数が1000万ビューを越えていてびっくりしました(笑)。日本の人口で計算すれば日本人のおよそ10人に1人のタイムラインに「南無阿弥陀仏」が表示されたことになったので「なんて日だ!」と思いました。


今回の投稿で注目を集めた「利剣名号」は、悪い因縁を断ち切るよう、「南無阿弥陀仏」の字画の末端を剣のように鋭くして書いたもの。そんな仏教的な意味のある書体が、現代の私たちにとってはパンクアートや漫画っぽく見えるというのはなんとも面白いですね。