finalは、自社ブランドfinalの最上位完全ワイヤレスイヤホン「ZE8000」を36,800円で12月16日に発売する。カラーは、シボ塗装仕上げを施したブラックとホワイトの2色。

  • ZE8000(ホワイト)

片側にシングルのダイナミックドライバーを1基搭載。このドライバーなどを収めた丸い部分と、方柱状のスティック(軸)部と組み合わせた、独特な外観となっている。既報の通り、高精細映像の8Kになぞらえて「8K SOUND」と名付けた、独自の高音質技術を盛り込んでいるのが大きな特徴だ。発売日以降の本体ソフトウェアアップデートにより、この高音質技術の力をさらに引き出す「8K SOUND+」モードも利用可能になる。

  • ZE8000(ブラック)のイヤホン本体

  • ZE8000(ブラック)のケース

新たな取り組みとして、finalはZE8000に装着できるカスタムイヤーピース(個々人の耳型をとって作る、オーダーメイドのイヤーピース)を2023年春までに発売することを計画。ソフトタイプとハードタイプの2種類を展開予定で、充電ケースもそれを見越して大型イヤーピース装着したまま収められる設計になっている。

イヤホン本体にはこのほか、ノイズキャンセリング(NC)や外音取込といった、完全ワイヤレス(TWS)イヤホンの定番機能を備え、final初のTWS用アプリも提供。スマホなどから各種設定が行えるようにした。

報道陣向けに開催された製品発表会では、実機のパッケージを見ることができたので、開封の模様を動画でお伝えする。

なお、finalは自社オンライン配信番組「final STORE LIVE!」の11月22日20時放送回でZE8000を取り上げ、さらに同社公式Twitterでは抽選で5人にZE8000をプレゼントするフォロー&リツイートキャンペーンを実施予定。プレゼントキャンペーンの応募期間は11月22日20時から同月30日まで。

  • 抽選で5人にZE8000をプレゼントするフォロー&リツイートキャンペーンを実施

  • ZE8000のカラーは、シボ塗装仕上げを施したブラック(左)とホワイト(右)の2色

ZE8000の詳細

同社は11月22日、都内で報道陣向けに製品発表会を開催し、発売に先がけて「8K SOUND」モードを試せる実機を披露。細尾満社長が登壇し、オーディオと自社製品にかける思い入れを語った後、ZE8000の概要と各機能の詳細について自ら説明した。

  • finalの細尾満社長

finalは、音響技術・理論の地道な基礎研究を重ね、商品企画・開発・製造・販売までのすべてのプロセスを自社内で一気通貫で手がけるメーカー。音質にこだわった高級ヘッドホンから、学生の小遣いでも買える手ごろなエントリーイヤホンまで幅広い価格帯のラインナップを展開し、ポータブルオーディオファンの支持を集めている。

同社では「再生音のクオリティこそが音楽体験に大きな影響を与える」と考え、音響工学や音響心理学の基礎的な研究と、それらを実現する機構設計や製造工程の開発を行っている。基礎研究を重視する会社の姿勢には、「オーディオをもっとエビデンス(根拠)や研究成果に基づいて、新しい価値を生む業界にしていきたい」という細尾社長の強い想いも反映されている。

これまでもフラッグシップのヘッドホン「D8000」で独自の平面磁界型ドライバーを積み、有線イヤホン「A8000」では極薄ベリリウム箔振動板を搭載しつつ新しい音質の知見を開発の中で得るなど、革新的なアイデアを実現してきている。8000のナンバリングを冠した製品名には、このように“革新的なアイデアを実現した製品”という意味合いがあるということで、「高級モデルだから製品名に8000を付ける」というワケではないようだ。

今回ZE8000の開発にあたり、finalの研究チームは、業界で長い間リファレンスとされてきた特性とは異なる、新たな物理特性を発見。その特性を再現するために、ハードウェアとソフトウェアを含めたシステム全体を包括的に設計し、「D8000やA8000では成しえない、ワイヤレスでこそ実現できる新しいサウンド」を生み出したという。

  • “革新的なアイデアを実現した”finalブランドの製品名には「8000」を冠する

finalではこれを高精細映像の8Kになぞらえ、「8K SOUND」と呼称。細尾社長がNHKの技術発表イベントで8K映像を実際に見て、そこで受けた“(映像の)どこにでもピントが合う、キレイというよりも知覚が揺さぶられる感じ”の印象と、社内の研究成果で生まれた“異次元のサウンド”がかみ合い、正式なモード名として採用された……という経緯があるそうだ。

8K SOUNDについて、同社では「楽曲に含まれる音楽情報を余すことなく高精細に再生。どこか特定の音域を強調することをせず、ユーザー自身が聴きたい音にフォーカスを合わせられる。フォーカスを合わせることで、ボーカル中心で聴くことも、パーカッションやベースラインに注目して聴くこともできるということ。ユーザーの聴きどころに応じて、どこを聴いても高精細で、何度聴いても楽しい音楽鑑賞を体験できる」と説明している。

細尾社長は“低域や高域の階調感”といった、これまでの言葉による表現では表しきれないところが8K SOUNDにはあり、1分や2分といった短い時間では判断するのではなく、ちょっと長めに聴き続けてもらうことで8K SOUNDの特徴を捉えてみてほしい、とアピールしていた。

  • 手持ちのAndroidスマートフォンと組み合わせて試聴しているところ

  • 参考までに、「BOSE QuietComfort Earbuds II」(上)とZE8000(下)を並べてサイズ感を比較してみた。比較的大ぶりなQC Earbuds IIと並べてみても、ZE8000の大きさがよく分かる。ちなみに、NC性能は(大音量下の室内という条件では)前者のほうが強めで分かりやすく消音効果が得られるが、製品開発の志向がそもそも違うので比較対象としては適切ではないかもしれない

同社が提唱する8K SOUNDの実現には、デジタル信号処理技術と、それに対応したドライバーの開発が必要となる。そこで同社は、複数のデジタル信号処理技術を組み合わせた独自のソフトウェアを開発。さらに、一般的なドライバーユニットと比べてTHD(全高調波歪率)が10分の1以下という超低歪なドライバーユニット「f-CORE for 8K SOUND」(10mm径)も新開発し、これらを組み合わせて8K SOUNDを実現している。

f-CORE for 8K SOUNDについては、ドライバーの作り方を従来の同社製f-COREドライバーとは根本的に変えているのも注目ポイント。射出成型したエッジとアルミ製の振動板を別パーツとして製造し、これを高精度に組み合わせている。さらに新開発の特殊な線材でできたボイスコイルを、振動板と接着しない空中配線方式でつなぎ合わせるなど、一貫して音質にこだわった設計になっている。

ちなみに、同社によれば8K SOUNDの音質は後述のBluetoothコーデックと直接の関係はなく、たとえばAACコーデックがメインのiPhoneシリーズでも、8K SOUNDは体感できるとのこと。

  • f-CORE for 8K SOUNDの概要

  • 一般的なドライバーユニットと比べてTHD(全高調波歪率)が10分の1以下という超低歪を実現

ハードウェア面ではほかにも高音質化にもこだわった設計として、AB級アンプと薄膜高分子積層コンデンサを搭載。

アンプについては、完全ワイヤレスイヤホンの場合は「通常は電池持ちを優先してD級アンプを採用するのがセオリー」(細尾社長)だが、あえてAB級アンプを搭載し、ノイズを抑えてSN感の向上を追求。細尾社長は「静寂の中から音が立ち上がるところで(実力を)感じてもらえるのではないか」と自信を見せた。さらに、音響用パーツとして比較的大きなルビコン製のPMLCAP(薄膜高分子積層コンデンサ)を採用。ドライバーユニットとバッテリー、基板部分をすべて分離するなど、高音質を突き詰めた設計を多数盛り込んだ。

  • AB級アンプと薄膜高分子積層コンデンサを搭載

  • イヤーピースを外してみるとこんな感じ

finalの完全ワイヤレスイヤホンとして初めて、クアルコムの無線技術「Snapdragon Sound」をサポート。対応スマートフォンと組み合わせることで、aptX Adaptiveコーデックによる最高96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス再生を可能にした。finalでは、Snapdragon Sound対応のAndroidスマホであればハイレゾワイヤレス再生に対応すると説明している。

  • クアルコムの無線技術「Snapdragon Sound」をサポートしたスマートフォンと組み合わせて、最高96kHz/24bitのハイレゾワイヤレス再生に対応

発表会場ではASUS製のAndroidスマートフォン「Smartphone for Snapdragon Insiders」(Snapdragon 888搭載)と組み合わせたデモを行っており、筆者の手持ちのSnapdragon Sound対応スマホ(motorola edge 20)でも、96kHz/24bit再生に設定してハイレゾワイヤレス再生が行えることを確認した。

  • ASUS「Smartphone for Snapdragon Insiders」でaptX Adaptiveコーデックの設定を変更できた

NC機能も備えているが、再生音に影響を与えず、耳への圧迫感や違和感を抑えた設計になっているのが特徴。シーイヤー(Cear)の協力を得て開発した独自のアルゴリズムを採用したということで、“ノイキャン酔い”(NCによって気分が悪くなる現象)の心配もないとアピールしている。

ほかにも外音取り込みに対応し、そのまま取り込む「ながら聴きモード」、風切り音を抑える「ウインドカットモード」、再生中の音量を下げる「ボイススルーモード」を含めた4パターンを切り替えて使える。なお、実機をチェックしてみたところ、NCと外音取り込みの種類を切り替えることはできるが、両方オフにはできない仕様だ。

装着部が小さく、つけていることを忘れる快適なフィッティングを追求。完全ワイヤレスイヤホンとしては奇抜なデザインだが、短時間ながら発表会場で実機を装着してみたところ、耳になじんでくると確かにそこまで違和感はなく、一般的な丸い粒のような(インイヤーモニターのような)デザインの完全ワイヤレスイヤホンと同じように使えそうだ。

装着感をさらに快適にする5サイズの専用イヤーピースも同梱しており、耳穴に入れる部分とイヤホン側(音道管)に固定する部位を一体化した専用品となっている。

  • ZE8000を装着したところ

ハンズフリー通話機能も搭載。左右イヤホンに備わっているバー状のパーツ上下に別々のマイクを内蔵し、その距離の差を利用しつつシーイヤーの協力を得たビームフォーミング技術を搭載。口元の狙ったところだけを集音して送話できるようにした。

ZE8000用に、新たな専用アプリ「final CONNECT」も無料で提供。上述のNCと外音取り込みの計4モードの切り替えに加え、最適な音量に細かく調整できる「ボリュームステップ最適化」、プロのエンジニアのエッセンスを活かした音調整が行える「PROイコライザー」、ZE8000の目玉機能である8K SOUNDの力を引き出し、デジタル信号処理における演算能力を限界値まで高める「8K SOUND+」の各機能を設定できる。

  • 専用アプリ「final CONNECT」

連続再生時間は5時間で、ケース込みで最大15時間。イヤホン本体はIPX4防水対応。Bluetooth 5.2に準拠し、コーデックはaptX adaptiveのほか、SBCとAAC、aptXもサポートする。なお実機で確認したところ、複数のスマホなどとのマルチペアリングには対応しているが、同時に2台の機器と接続するマルチポイント機能には対応していない模様だ。

  • 充電ケースはUSB-C充電対応で、ワイヤレス充電には非対応

なお、finalはZE8000の発表に合わせて、東京五輪男子スケートボードで金メダルに輝いたプロスケートボーダー・堀米雄斗選手と公式パートナー契約を締結したことを発表。堀米選手が出演するスペシャルムービー「BE A GAME CHANGER」を発表会の中で披露した。

  • finalは、プロスケートボーダー・堀米雄斗選手と公式パートナー契約を締結

パートナー契約の背景として、地道な基礎研究を突き詰め、技術開発に多く投資しているfinalと、人々を魅了する競技という派手なシーンの裏側で膨大な失敗と練習を繰り返して鍛錬しているスケートボーダーには重なる部分が多いということで、「我々(final)としても共感する部分が多く、ぜひ堀米選手と組みたい」ということで、今回のパートナー契約に至ったとのこと。

動画の中でZE8000を身につけた堀米選手はいっさい複雑なトリップを見せず、ロサンゼルス郊外の長い長い一本道をただプッシュしていくだけ。「自然体で気持ち良さそうに自分の道を貫いていくことが、大きな結果に結びついていくというドラマのように仕上げた」とのことだ。発表会の会場では、そこに本人の声で今回のパートナー契約に関する思いをモノローグとして重ねたロングバージョンも流されていた。

  • スペシャルムービー撮影のひとコマ。ムービー制作には、東京を拠点とするクリエイティブチーム・PERIMETRON(ペリメトロン)が関わっている

  • 製品発表会の会場に飾られていた、堀米選手関連の展示