2022年11月18日、ドイツ・ベルリンで開催されているタクティカルFPSゲーム『VALORANT』の女性限定世界大会「2022 VALORANT Game Changers Championship」(以下、Game Changers 2022)において、東アジア代表の日本チーム「FENNEL HOTELAVA」と、EMEA代表チーム「Guild X」との試合が行われました。

「Guild X」は、EMEAで開催されている女性限定大会「Game Changers EMEA」において、連覇を続けていた「G2 Gozen」をついに破り、EMEA1位通過で本大会への出場権を勝ち取ったチームです。

この日の試合は、お互いに負ければ大会敗退となるロワーブラケットでの対戦でした。「FENNEL HOTELAVA」は、EMEAの強豪チームを相手に食らいつくプレイを見せますが、マップカウント0-2で敗北。これにより、本大会での挑戦を終えることとなりました。

記事では、本試合の模様と、試合直後の「FENNEL HOTELAVA」Curumi選手への単独インタビューの内容をお届けします。

■試合結果

FENNEL HOTELAVA [0-2] Guild X
1マップ:3-13(パール)
2マップ:5-13(ヘイヴン)

  • 「FENNEL HOTELAVA」Len選手、Festival選手、Curumi選手、suzu選手、KOHAL選手

「Guild X」の幅広い戦術や対策に苦しめられ、0-2での敗北へ

1マップ目は、「FENNEL HOTELAVA」がピックしたパール。「FENNEL HOTELAVA」は前半の守りで、幅広い戦術で攻めを展開する「Guild X」への対応に苦戦し、3-9での折り返しを迎えます。

「FENNEL HOTELAVA」にとってパールは、東アジア大会で中国や韓国のチームを相手に勝利を重ねてきた得意マップ。ですが、それだけ戦い方を見せてきたマップでもあります。後半の攻めでは、「FENNEL HOTELAVA」の動きに対する「Guild X」の万全な対策が感じられ、ラウンドを取得できないまま、3-13での敗北となりました。

続く2マップ目は、「Guild X」がピックしたヘイヴン。前半の攻めでは、「Guild X」にペースを奪われるなか、「FENNEL HOTELAVA」KOHAL選手による1vs3クラッチが2度も飛び出します。しかし、なかなかラウンド差を縮めることはできず、4-8での折り返しとなりました。

後半の守りでも、「Guild X」は巧みなアビリティの合わせ技を見せながら、大きく試合をリードします。惜しいラウンドはあるものの、あと一歩のところで阻まる「FENNEL HOTELAVA」。最終的に5-13で敗北し、マップカウント0-2で「Guild X」に敗れる結果となりました。

  • 「Guild X」の幅広い戦略と、万全な対策に苦しめられた1マップ目

  • 2マップ目では、チームを救うKOHAL選手の1vs3クラッチが2度も飛び出した

試合直後の「FENNEL HOTELAVA」Curumi選手にインタビュー

「Guild X」との試合直後に、「FENNEL HOTELAVA」Curumi選手への単独インタビューを行いました。「FENNEL HOTELAVA」にとって大きな経験となった世界大会への出場。今回の経験を通して、そして大躍進を遂げた2022年シーズンを振り返って、今の思いを聞きました。

  • インタビューに応じてくれたCurumi選手

世界の舞台で戦って体感した、海外チームの強気なプレイ

――今日の「Guild X」との試合では、相手のどんなところに強さを感じましたか?

Curumi選手(以下、Curumi):「Guild X」に限らず、海外チームは自分たちのやりたいことを押し付けてくる戦い方で、プレイもすごく派手だし、全員がプッシュしてくる感じでした。それに対して、私たちが上手く対応しきれなかったです。

――プレイだけでなく、インタビューなどでも自信にあふれた強気なコメントをする選手が多かった印象です。

Curumi:そうですね。試合以外に、例えばホテルのロビーとかで選手たちとすれ違うようなときも、みんな立ち振る舞いが堂々としていて、胸を張っている雰囲気がありました。みんなカッコよかったです。

――今回の試合で、特に1マップ目のパールは、東アジア大会で見せたマップということもあり、相手がかなり対策してきていたようにも見えました。戦っていて、そのように感じた部分はありましたか?

Curumi:私たちの配置を読んで、「今はこの形だから、こっちに行こう」と判断されているような印象を受けましたね。対策されているんだろうなと、節々で感じました。

――ロワーブラケットでの試合ということで、もう後がないというプレッシャーも大きかったでしょうか。

Curumi:目の前の1ラウンド1ラウンドを取ることに集中しようと試合前に話していたので、試合中はそこまでプレッシャーを感じていませんでした。でも、確かにプレッシャーはありましたね。全力でがんばったんですけど、世界の壁は高かったです。

  • 試合中のCurumi選手

他リージョンとの間にある、重ねてきた経験の差

――今大会での試合を通して、世界で勝つためにはどんな課題があると感じましたか?

Curumi:海外チームは、私たちがアクションをかけたときに返ってくる反応がものすごく速くて、なかなかそのスピード感に追いつけませんでした。それは、単純に試合の場数がまだ足りていないことも理由の1つだと思います。なので、もっともっと練習を積み重ねていって、もし機会をいただけるなら、オフラインの場にも慣れていきたいです。

――そのなかでも、手応えを感じた部分はどんなところでしたか?

Curumi:チームの雰囲気ですかね。フィジカルや頭脳の部分は、海外チームと比べてまだ少し差があるかなと感じましたが、自分たちのいつもの雰囲気で、試合中のペースを乱さずにプレイできたんじゃないかと思います。

――NAやEMEAでは、昨年から「Game Changers」の国内大会がスタートしていました。やはり他リージョンとの、経験値の差を感じる部分はありましたか?

Curumi:ありました。どのチームも冷静で切り替えが早くて、あまり同じことをしてこないから、その場その場での対応がすごく難しかったです。私たちは初のオフラインで、みんなテンションもハイになっているし、ずっと状況を整理しながら相手に対応しようとしていたんですが追いつけなくて。そこがまだ私たちの足りないところですね。

――緊張だけでなく、本番ならではのテンションになる感覚もあったんですね。

Curumi:そうですね。目の前には観客席がずらっと並んでいる状況なので。正直、緊張もしていましたが、「緊張してない!」って思い込んでいました(笑)。

オフライン大会ならではの見せ場、注目の入場シーン

――2日にわたって印象的だった、入場シーンについてお聞きしたいと思います。初戦でCurumiさんは、セーラームーンのポーズで登場されていましたね。

Curumi:昔からセーラームーンがすごく好きで、「なにか入場のいいポーズないかな?」と考えていたときに、セーラームーンが浮かんだんです。それで、単純にあのポーズがしたかっただけなんですけど、Twitterで「戦う女の子5人はセーラームーン」と書かれているのを見て、「確かに!」と思いました。

――ちなみに、髪型もセーラームーンを意識したものですか?

Curumi:髪型も意識しました! お団子までしたら、ちょっとやりすぎかなと思って、ツインテールにしました。

  • 強く可憐に戦う、その姿はまるでセーラームーンのよう

――続いて今日は、全員が「Guild X」のメンバーと一緒にポーズを取りながら入場していました。どんなきっかけから、2チームで合わせることになったのでしょうか?

Curumi:入場する直前、2チームが列に並ぶんですけど、そのときお互いの距離が結構近いんです。それで、「Guild X」の方々から「一緒にポーズしない?」という提案をもらって、その場でパパッと決めていきました。もう本当に始まる2分前とか、それくらいの出来事です。

  • 「Guild X」の選手たちと一緒に、仲良くポーズを決めながら登場

8月の国内大会から始まり、大躍進を遂げた4カ月

――今シーズンは、8月に行われた国内大会から、東アジア大会、そして世界大会と、大躍進を遂げた4カ月だったと思います。振り返っていかがですか?

Curumi:いやぁ、激流でしたね。もう流れが速すぎて……。国内大会で優勝したときには、全然考えられなかったポジションに今自分がいるから、正直まだ信じられないですね。今日負けたこともあまり実感がわかないというか、気持ちがまだ全然追いついてないです。

――戦う舞台が日本から東アジア、そして世界へと移っていくなかで、気持ちの面での変化はありましたか?

Curumi:東アジア大会の期間に入る前くらいから、「うちらって日本一なんだな、しっかりしなきゃ」と思うようになりました。東アジア大会で優勝してからは、とにかく世界の選手と戦えることにワクワクして、すごく楽しみだったし、実際に楽しかったです。

――大会配信でも、皆さんが楽しんでいることが伝わってきました。カメラへのアピールも積極的にされていましたね。

Curumi:たぶんFestivalが一番楽しんでいたと思います。隣の席で、カメラに向かって何度も笑顔でアピールしていたから、かわいくて仕方がなかったです(笑)。

――Curumiさんは以前インタビューで、「もっと女性大会を盛り上げていきたい」と話されていました。自らの活躍でますます「Game Changers」の注目度を高めていったと思いますが、ご自身の実感としてはいかがですか?

Curumi:盛り上げにはたくさん貢献できたんじゃないかと思います。初戦で戦った「Team Liquid」は、これまでに大会で80試合以上を戦ってきていて、オフラインも経験してきているチーム。そのチームを相手に1マップ獲得することできて、私たちにとってすごく大きな自信につながったし、観ていた人たちも沸かせられたんじゃないかな。

  • ベルリンでも、おなじみの“勝利の舞”を見せてくれた

――それでは最後に、応援してくださったファンの方々へのメッセージをお願いします。

Curumi:ここまで応援していただいて、本当にありがとうございました。今シーズンの長い旅はここで終わってしまいましたが、来シーズンもがんばっていくので、引き続き手厚い応援をよろしくお願いします!

  • 国内大会、東アジア大会、そして世界大会を戦い抜いた「FENNEL HOTELAVA」

初代世界女王に輝いたのは、EMEA代表チーム「G2 Gozen」

「Game Changers 2022」のグランドファイナルで戦ったのは、EMEA代表チーム「G2 Gozen」とNA代表チーム「Shopify Rebellion」。この試合で「G2 Gozen」は、マップカウント0-2の状況から3マップ連取するというリバーススイープを決め、3-2で勝利した「G2 Gozen」が『VALORANT』の初代世界女王に輝きました。

なお、「FENNEL HOTELAVA」が初戦で1マップを奪った「Team Liquid」は、アッパーブラケットファイナルまで進出し、ロワーブラケットファイナルで「Shopify Rebellion」に敗れ、3位となりました。世界3位のチームと激戦を繰り広げた「FENNEL HOTELAVA」の経験は、非常に大きなものになったといえます。

NAやEMEAに比べ、「Game Changers」の開催は後発となっていた日本ですが、今回の「FENNEL HOTELAVA」の活躍は、国内でも女性限定大会への大きな注目を集めるきっかけになりました。来シーズンの「FENNEL HOTELAVA」のさらなる活躍、そして国内シーンのより一層の盛り上がりに期待が寄せられます。

  • 『VALORANT』初代世界女王に輝いた「G2 Gozen」

  • 「Game Changers 2022」トーナメント最終結果