今回の検出においては、複数の赤外線望遠鏡を用いて非常に高い解像力を実現する必要があり、かつそれら複数の望遠鏡が天体に対して適切な向きに並べられている必要があったとする。現在、この2つの条件を満たす装置は、世界でも米国・カリフォルニア州にあるCHARA干渉計しかない。

同干渉計は6つの望遠鏡で構成され、その適切な並びによって、さまざまな角度から天体を観測できるように最適化されている。それぞれの望遠鏡の口径は1mだが、望遠鏡間の距離は数百mあり、その距離を口径とする望遠鏡に相当する解像力を実現できる。赤外線観測において現在世界で最もシャープな「眼」を持つ観測装置だという。

今回、この同干渉計を用いてNGC4151の中心核を観測。その結果、噴出するジェットと垂直な方向に現れるダストリングを実際に検出することに成功したとする。

今回の観測を成功させるためには、同干渉計の各望遠鏡に「補償光学」装置を新たに装備する必要があったという。同装置によって、集められる光の量が格段に増え、それぞれの望遠鏡の口径自体は決して大きいわけではないが、恒星よりもずっと暗い、系外銀河をターゲットとした観測が実現したとする。

  • NGC4151の中心部数千光年の領域

    (左)NGC4151の中心部数千光年の領域。(中央)推測されている中心部約1光年の構造。ブラックホールを中心にジェット(白色)が前後(右手前向きと左奥向き)に噴出し、その周囲をダストリング(赤色)が取り巻いている様子。(右)CHARA干渉計およびKeck干渉計の測定結果 (出所:京産大Webサイト)

質量降着中の大質量ブラックホール系には、観測的性質が明らかに異なる2種類が存在、1型および2型と分類されてきた。しかし、それらは同一のものであり、ダストリングを垂直方向からか見ているので明るく見えているか、横方向から見ているのでダストリングに阻まれて暗く見えているかの違いであるとする「統一モデル」が約40年前に提唱された。今回、そのダストリングの存在がついに観測的に確認されたことになるという。

また最近になって、今回観測に用いられた赤外線よりもう少し長い波長の赤外線(中間赤外線)の干渉計観測により、ダストリングより少し外側の領域はジェットに垂直ではなく、ジェットに「沿った」方向に広がっていることがわかってきたという。これは、ジェットの進行方向に向かう大きなガスの流れ(アウトフロー)であると考えられている。

つまり、今回検出された、より中心部のジェットに垂直な構造は、このアウトフローがどのように形成され、さらには、この大質量ブラックホール系を宿す母銀河とどのように相互作用をしているのかを理解する鍵となることが期待できるとしている。