女優の松本若菜が、フジテレビのドキュメンタリー番組『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)のナレーション収録に初挑戦した。担当したのは、20日に放送される『母と娘のラーメン ~ピンチをチャンスに変える人~』。ラーメン店を経営するフィリピン出身のシングルマザーの奮闘を追った作品だ。

どんなにピンチに陥っても前向きで、「こんなに明るいポジティブなお母さんがいるんだ!」と驚いた松本。飛躍の年になった2022年だが、今後の活動に向けて、その力みなぎる姿から受け取るものがあったようだ――。

  • 『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した松本若菜

    『ザ・ノンフィクション』のナレーションを担当した松本若菜

■出産で一時帰国すると男性との連絡が途絶え…

今回の主人公であるカンラスさん(40)は、13年前に東京・神田小川町で店を開き、故郷の豚肉料理にヒントを得た「とろ肉」で人気店となった。ラーメン激戦区で生き抜き、女手一つで娘を育ててきたが、コロナと物価高騰に襲われ、閉店の危機にさらされる…。

それでも、松本いわく「こんなに明るいポジティブなお母さんがいるんだ!と思って、見ているこちらが笑顔になってきますね」と、ピンチでも前向きなカンラスさん。自身と比較して、「私はしっかり地固めができていないと怖くて進めないタイプなのですが、カンラスさんのピンチに陥っても前向きになる切り替えの早さと行動力は、並大抵の経験をしていないと生まれてこないのではないかと思いました」と感服した。

松本の言う通り、カンラスさんは貧しい家族の生活を支えるため、19歳で来日。しかし、「ホテルで働かないか?」と誘われた先はフィリピンパプでの接客で、それでも懸命に働き、実家に仕送りする日々。そんな中で、客の日本人男性との間に子どもを身ごもったが、出産のために一時帰国すると男性との連絡が途絶えた。悩んだ末に、生まれたばかりの娘と2人、日本で生きていくことを決め、ラーメン店でアルバイトをするも、わずか1年で閉店。職を失うことになったカンラスさんは、自らラーメン店を経営することを決断し、現在に至る――という壮絶な人生を送ってきた。

それだけに、「故郷の国の家族の皆さんのこともそうですが、背負ってるものが多すぎて…。だから、一人娘に過保護になってしまうのも仕方ないのかなと思いました」と同情した。

  • ラーメンを調理するカンラスさん (C)フジテレビ

■照れ屋な娘に共感「懐かしい部分も」

母と娘の絆も描かれており、「お母さんと、愛情をうまく言葉にできない照れ屋な娘という関係性も人間味がありました」と感想。その中でも、娘に共感するポイントが多かったそうで、「私も、学校の行き来などで母が車で送ってくれても、恥ずかしくて『ありがとう』が言えなくて、『“ありがとう”は?』と言われても『んん?』みたいな感じで(笑)。だから、今回の2人のちぐはぐなやり取りを見ていると、懐かしい部分もあり、思わず笑ってしまいました。ドキュメンタリーじゃないと映せない一瞬が見られたと思いました」と振り返った。

番組を通して、大好きだった飲食店がコロナ禍で閉店したり、久しぶりに通った道にあった飲食店がなくなったりしていたことを思い出し、「そういう中でも、こうやって頑張って生き延びている飲食店さんは応援したいですね」と思いを持ったそう。その上で、カンラスさんのお店には、「なかなか見たことのない平打ち麺にスープが絡んで、とろ肉もおいしそうですよね。ラーメン大好きなので、近々、確実に行くと思います(笑)」と、食欲をかき立てられたようだ。

改めて、今回の見どころについて、「コロナ禍でなかなかうまくいかないこともあったりしますが、最後は笑顔で終われる物語だと思います。見られた方の背中を少しでも押してくれるテーマだと思うのですが、私もナレーションとして少しでもお手伝いができたらと思っていますので。お楽しみいただければ」と呼びかけた。

  • 娘の髪にドライヤーをかけるカンラスさん (C)フジテレビ

■“松本劇場”で飛躍の一年「歩幅がすごく大きかった」

『ザ・ノンフィクション』は、「単純に番組のファンで、ずっとナレーションをするのが夢だったので、このたびお話を頂いたときは、もう『やったー!!』でした(笑)。本当にうれしくて、ブースに入って原稿を読ませていただいているときは、感慨深かったです」と、収録が終わっても興奮冷めやらぬ様子。

4月クールのドラマ『やんごとなき一族』(フジテレビ)では、松本演じる美保子が、自らの“汗と涙のサクセスストーリー”を、『ザ・ノンフィクション』のテーマ曲である「サンサーラ」を自分で熱唱したBGMに乗せて紹介するというシーンもあって「勝手にご縁を感じていた」だけに、今回のオファーは喜びもひとしおだったそうだ。

そうした独特の演技が“松本劇場”とも呼ばれ、話題になった2022年。「事務所のスタッフと、『毎年少しずつでもいいから前に進んで行こう』ということを抱負にしているのですが、今年はその一歩の歩幅がすごく大きかったかもしれません」と、飛躍の一年になった。

それを踏まえ、「私という存在を知っていただくことがものすごく増えたという実感もありますし、お仕事の量も確かに変わってきてはいるのですが、今まで1つの仕事に対して10頑張ってきた力を分散するわけにはいかないので、今こそもっと1つ1つの仕事をしっかりやっていくという気持ちを、さらに忘れずに持っていかなければと思います。デビュー15年で培ってきたものは確実にあると思うので、今後もしっかり真面目にコツコツと頑張っていこうと思います」と気を引き締める松本。今回のカンラスさんの奮闘を見て、その思いを一層強くしたようだ。

●松本若菜
1984年生まれ、鳥取県出身。07年に女優デビューし、09年に映画『腐女子彼女。』で初主演、17年に映画『愚行録』で第39回ヨコハマ映画祭助演女優賞を受賞。今年は、ドラマ『やんごとなき一族』(フジテレビ)の深山美保子役で“松本劇場”と話題になり、東京ドラマアウォード助演女優賞を受賞、『復讐の未亡人』(テレビ東京)で連続ドラマ初主演。そのほか、『ミステリと言う勿れ』(フジ)、『ファーストペンギン!』(日本テレビ)、『金魚妻』(Netflix)などのドラマ、ミニ番組『美食ファンファーレ』(フジ)にも出演する。来年1月からはドラマ『探偵ロマンス』(NHK)の放送が控える。