米ハーバード大学らの研究グループが、マスク着用が学校での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発症率に影響するかの調査を実施。マスクを着用することで、COVID-19への感染を抑えられることがわかったという結果を発表した。国際的な医学雑誌「New England Journal of Medicine」に11月9日付で掲載された。
米国では、2022年2月に、米マサチューセッツ州が公立学校におけるマスク着用義務を撤廃。その後、数週間のうちにマサチューセッツ州の大半の学校がマスク着用の義務化を取りやめたという出来事があった。一方で当時、同州内のボストン地区と、近隣のチェルシー地区のみ6月までマスク着用義務を継続したことから比較が可能になり、本研究を実施することにしたのだという。
本研究では、マスク着用を解除した学区と、マスク着用を継続した学区の合計72学区で、29万人以上の生徒と、4万6,000人以上の職員を対象に、感染の状況を追跡調査した。ちなみに、州全体のマスク着用義務が解除される前は、COVID-19の感染率の傾向は全ての学区で同様であったそうだ。
結果としては、マスク着用を継続した学区は、そうでない学区と比較して、COVID-19感染者が少ないことが明らかとなった。具体的には、マスク着用を解除した学区では、マスク着用を継続した学区と比べて、COVID-19感染者数が、生徒・職員1,000人あたりで44.9人、全体では推定で11,901人も増えたという。この増加した人数は、当時の全学区のCOVID-19感染者数の約30%にも相当する大きなものだった。また、職員のCOVID-19感染者だけを見ると、マスク着用の影響はより顕著だったという。具体的には、マスク着用を解除した学区では、COVID-19感染者が職員1,000人あたり81.7人増え、これはマスク着用を継続した学区のほぼ2倍の症例率だったそう。
当時のマサチューセッツ州ではCOVID-19が陽性だった場合、少なくとも5日間の隔離が義務づけられていた。研究チームによると、マスク着用をしなかったために発生した感染者全体で生じた損失は、調査した15週間だけでも、学校を休んだ期間が累計で生徒は約1万7,500日、職員は6,500日にも相当する。
当時のマサチューセッツ州ではCOVID-19が陽性だった場合、少なくとも5日間の隔離が義務づけられていた。研究チームによると、調査した15週間だけでも、マスク着用をしなかったために発生した感染者が、学校を休むことになってしまった期間は、累計で生徒は約1万7,500日、職員は6,500日にも相当。こう見ると、全体ではかなりの損失を生んでしまったことがわかる。
同研究グループは、「我々の研究は、マスク着用が、学校環境におけるCOVID-19の感染を減らすための効果的な戦略であることを示唆するものです」と述べている。このほか調査では、マスク着用を継続した学区には、校舎が古く、換気が悪く、1教室あたりの生徒数が多い、一般に低所得のコミュニティが対象という特徴があったとしている。結果的には、マスク着用の継続という選択が、貧しい生徒が直面していたかもしれない学業面での不平等を、ある程度埋め合わせることに役立ったとも指摘している。調査で判明した話ではあるが、これでは、さながら寓話かなにかの話のようでもある。
ネット上では「有効と実証されて何より」「マスクの有効性が実証された一例ですね」「このような研究、日本ではなぜ行われないのか」などの声が寄せられた。