三井住友信託銀行は11月15日、「相続に伴う家計金融資産の地域間移動」に関する調査結果を発表した。それによると、今後30年程度の間に125兆円の金融資産が地域間を移動する見込みで、うち4割が東京圏に集中するという。
現在の年間死亡数は144万人。ピーク時の2040年には168万人まで増加すると予測されている。とりわけ、「高齢者の死亡数」は、長寿化の進展や団塊世代の死亡時期が近づくことと相まって、死亡総数を上回るスピードで増加すると見込まれる。
高齢者の死亡数の増加は「相続」という形で、日本の家計資産の世代間移動を加速させる。また、親と子が別の地域に住むケースが多いことから、世代間のみならず地域間の資産移動も多発している。そこで、いくつかの統計をもとに試算したところ、今後30年程度の間に相続される金融資産総額は650兆円弱で、うち2割、125兆円が地域をまたいで移動するとみられる。
相続の発生に伴い家計資産の地域間移動が膨らむ最大の要因は、「地方に住む親と三大都市圏に住む子」という組み合わせが多いことにあり、日本では、1960年代~70年代前半にかけ、高度経済成長期の集団就職者を中心に、15年間で合計1,700万人以上が転入。中でも東京圏1都3県は、980万人という現在の東京23区の人口にも匹敵する大量の転入者を迎え入れている。
では、実際にどの程度の家計資産が地域をまたいで移動することになるのか。
相続の発生に伴い地域外に流出する家計資産の比率(以下「地域外流出率」)を、親子の同居/別居世帯比率や別居地域の内訳データをもとに算出したところ、13県で資産の1/4以上が地域外に流出する可能性があることが明らかに。地域外流出率が高い県は、東北地方や中部・北陸地域に比較的多いが、奈良県や愛媛県、大分県など分布は全国にわたる。
また、今後30年程度の間に発生する相続に伴い、どの地域からどの地域へ、どれぐらいの金額が移動するのかを試算したところ、資産の移動先として突出しているのは東京圏で、中部・北陸地域からの10兆円、大阪圏と北関東からそれぞれ8兆円前後、東北と九州・沖縄からも同じく7兆円前後と、全国から58兆円が流入。他地域への流出額を差し引いても、相続の発生に伴い38兆円の資産増加となる。この結果、家計金融資産の4割超が東京圏に集中することに。
一方、東京圏1都3県では、親子が同居する世帯の比率は低いが、親子別居世帯のうち「親子ともに東京圏内」の比率がおよそ9割と非常に高いため、地域外への資産の流出率は6~7%台と飛びぬけて低く、地域外に流出する資産は1割に満たない。