2022年11月11日から11月13日までの3日間、東京都・多摩市の宿泊研修施設「LINK FOREST」にて、Acerが主催する「The Asia Pacific Predator League 2022 Grand Finals」が、無観客オフラインで開催されました。
「Predator League」は、2018年よりアジア・パシフィック地域において開催されているeスポーツの国際大会。『Dota 2』と『PUBG:BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)の2タイトルが採用されています。2022年は、15の国や地域から総勢6,600チームが参加し、それぞれの予選を勝ち抜いたチームが、日本で開催されたGrand Finalsに集結しました。
「Predator League」として、オフライン大会が行われるのは3年ぶり。新型コロナウイルス感染拡大による影響を大きく受けてきたなか、待望の日本開催となった本大会のレポートをお届けします。
2020年に発表されるはずだった、日本でのオフライン開催
「Predator League」では、年ごとにオフラインのGrand Finalsを開催する都市が選ばれており、前回は2020年2月にフィリピン・マニラで開催される予定でした。ところが、新型コロナウイルス感染拡大により、直前になって2020年6~7月に延期することが発表されます。
しかし、新型コロナウイルス収束の見通しが立たない状況から、2021年春への再延期が決定。オフラインでの開催が模索されていましたが、最終的にはオンラインでの開催となるなど、苦難が続きました。
実は、本来ならば2020年2月、マニラでの大会の最後に「来年のGrand Finalsは日本で開催」と発表されるはずでした。発表の前に内容が固まっていたと考えれば、今からおよそ3年前には日本開催が決まっていたことになります。ですが、2020年のGrand Finalsは、前述の通り延期に次ぐ延期で、日本開催を発表することができない状況が続いていました。
ようやく次の開催地が日本であることが発表されたのは、2021年4月にオンラインで開催されたGrand Finalsの最終日。そして、決定からおよそ3年越しの思いを込めた日本開催が、今回やっと実現することになったのです。
そうして念願のオフライン開催に至った「Predator League 2022」では、初日のオープニングセレモニーから日本らしさを大いにアピール。和太鼓による大迫力のパフォーマンスで、3日間にわたるGrand Finalsの開幕を華やかに飾りました。
『Dota 2』と『PUBG』ともに初の日本での国際大会
待ちに待った日本でのオフライン開催でしたが、国内のファンにとって残念だったのは、無観客での開催だったことでしょう。最近では、有観客での大規模なeスポーツイベントが復活しつつあり、多くのファンがオフライン会場での観戦を期待していたはずです。
これについて、Acer Japanの“ドレッド隊長”こと谷康司さんにお話をうかがったところ、開催国である日本としては有観客で開催したいという強い思いがあり、さまざまな可能性を検討していたそうです。
しかしながら、「Predator League」はアジア・パシフィックから多くのチームが参加する国際大会で、それぞれの国や地域で予選を行う必要があることから、1年前の2021年11月には大会の実施形式を決定しなければなりませんでした。その時点で、日本の意向だけでなく、参加地域全体の意見を踏まえ、無観客オフラインでの開催という決断が下されたとのことです。
そうした背景を聞くと、情勢を踏まえて短期間で準備される最近の国内eスポーツイベントとは、大きく性質が異なることがわかります。配信では伝わりづらい部分ですが、会場で試合を映すモニターにはすべてグローバル配信が流れ、メディア向けの会見もすべて英語で行われるなど、日本で国際大会が行われていることを実感する空間になっていました。
なお、『Dota 2』と『PUBG』ともに、日本で国際大会が開催されたのは今回が初めて。『PUBG』ではこれまで、海外チームをゲストとして招待する国内大会は行われていましたが、国際大会の開催地になったことはありませんでした。会場には、2タイトルそれぞれグローバル配信と日本語配信のキャスター席が設けられ、日本語配信はAcer JapanのYouTubeチャンネルにて行われました。
【Dota 2】復活を遂げた日本代表「REJECT May」が出場
本大会では、『Dota 2』と『PUBG』で別々のステージが設けられ、並行して試合が行われました。初日にまずスタートしたのは『Dota 2』の第1試合、日本代表「REJECT May」とオーストラリア代表「Boonz+Goonz」の対戦です。
「REJECT May」は、本大会のために日本代表として復活を遂げたドリームチームで、もとは「Team May」として活動していました。この「Team May」の挑戦をサポートしたいとプロチーム「REJECT」が名乗りを上げ、ネーミングライツを取得。「REJECT」が大会に向けた練習環境などの全面的なサポートを行い、今回「REJECT May」として出場しました。
世界的な人気を誇る『Dota 2』は、公式世界大会「The International」の賞金総額が高額であることで知られ、2021年に行われた「The International」の賞金総額は約4,000万ドル(約56億円)にものぼります。しかし、日本での知名度はまだ低い現状があり、「REJECT May」のメンバーは、大会前に公開されたドキュメンタリー動画で、日本の『Dota 2』最後の希望、“LAST HOPE”としての覚悟を語っていました。
ただ、初戦の相手になった「Boonz+Goonz」は、オーストラリア予選を無敗で勝ち上がってきたチーム。「REJECT May」はファーストブラッドを獲得し、序盤は好調な滑り出しを見せましたが、その後は「Boonz+Goonz」が圧倒する試合展開で、初戦敗北となりました。
『Dota 2』のトーナメントはBo1(決勝のみBo3)、ダブルエリミネーション形式で行われ、一部の試合が配信されました。初戦の敗北によりロワーブラケットに移った「REJECT May」は、DAY2にモンゴル代表「Lilgun」との対戦へ。この試合は配信されておらず、結果は敗北。「REJECT May」は、0勝2敗で本大会での挑戦を終えることとなりました。
3日間の戦いを経て、優勝に輝いたのはフィリピン代表の「Polaris Esports」。優勝チームだけでなく、準優勝の「Execration」も3位の「GrindSky Esports」もフィリピン代表チームで、今回のGrand Finalsに出場したフィリピン代表3チームすべてがトップ3にランクインする結果になりました。
【PUBG】日本代表3チーム、ドン勝獲得ならず苦戦
『PUBG』のステージには、16チームが戦うブースがずらりと並びました。試合は3日間にわたって1日5マッチずつ行われ、SUPERルールでの合計獲得ポイントにて総合ランキングを決定します。
日本からは、国内大会「PUBG JAPAN CHAMPIONSHIP 2022 Phase2」の上位チームである「V3 FOX」「Rascal Jester」「ENTER FORCE.36」の3チームが出場。なお、現在開催中の世界大会「PUBG Global Championship 2022」に1位の「Donuts USG」が出場しているため、「Donuts USG」をのぞく、2位から4位の3チームが日本代表となりました。
国内で開催される『PUBG』のオフライン大会は、2019年12月に行われた「PUBG JAPAN SERIES Winter Invitational 2019」ぶり。16チーム64名の選手が一堂に会するオフラインの迫力は、『PUBG』観戦の大きな魅力の1つですが、コロナ禍でのオフライン開催は難易度が高く、国内では長らくオンラインのみでの開催が続いてきました。
試合が始まると、会場中に選手たちの声が響き、次第に生き残ったチームの声だけが聞こえてくる、『PUBG』のオフライン大会ならではの緊迫感に包まれます。舞台裏には、かつての「PUBG JAPAN SERIES」を支えてきたスタッフの方々が集結し、大会をつくり上げていました。
しかし、久々のオフライン開催で高まる期待とは裏腹に、試合内容としては日本代表3チームともに苦戦が続きました。あと一歩という惜しいマッチはあったものの、3日間を通して日本代表3チームは一度もドン勝を獲得できず。総合ランキングも、3チームすべてが下位に沈み、非常に厳しい結果に終わりました。
一方、驚異的な強さを見せつけたのは、ベトナム代表の「Genius Esports」です。19キルでの大量キルドン勝を2回も獲得したうえ、続けざまに21キルでのドン勝を獲得し、トップを独走。最終日もさらに2回のドン勝を重ねるなど勢いは止まらず、2位の韓国代表「DWG KIA」に65ポイントもの差をつけて、圧倒的な優勝を手にしました。
2024年フィリピンで開催、次こそは日本代表チームの活躍を
DAY3の最後には、『Dota 2』と『PUBG』でトップ3にランクインしたチームの表彰を行うエンディングセレモニーが行われました。それぞれの優勝チームには、賞金75,000ドル(約1050万円)と、10,000ドル(約140万)相当のPredatorブランドゲーミングデバイスが贈呈されました。
残念ながら、2タイトルともに日本代表チームは、思うような結果を残すことができませんでした。実を言うと、DAY1の開幕直前に行われたメディア向け会見の質疑応答で、海外メディアから「日本では『Dota 2』も『PUBG』も存在感が薄いように思うが、なぜ日本でGrand Finalsが開催されたのか?」という厳しい質問が飛び出していました。
これに対するAcerの回答は、「開催地の候補として手を挙げた国の代表者がピッチを行い、投票によって決定した」というものでした。たしかに、海外チームをもてなす環境や設備、スムーズな大会の進行や配信など、日本ならではの質の高さもあったでしょう。しかし、大会の結果としては、悔しいことに日本の印象を覆すには至らなかったといえます。
次回のGrand Finalsは2024年、フィリピンで開催されることが発表されました。開催地以外の情報はまだ公開されていませんが、次こそは躍進する東南アジア地域のチームに負けない、日本代表チームの活躍が見られることを期待しています。