八芳園が運営するポップアップ型ショールーム「MuSuBu」にて、第42回「蔵元さんと一緒に愉しむ日本酒の会」が11月10日におこなわれました。
今回は徳島県の蔵元が参加し、同県が誇る「阿波十割」ブランドの日本酒と、八芳園の料理長が手掛ける創作料理のペアリングが提供されました。イベントの様子やペアリングの感想を、写真たっぷりでお届けします。
阿波十割の日本酒とは? 各蔵の味わいの特徴やこだわり
「阿波十割」とは、徳島県の地酒ブランドです。徳島県産の酒造好適米、徳島県内の水を100%使用して地元酒蔵が醸造し、酒造組合の審査を受けて味や香りなどが優れていると認定された純米酒だけが阿波十割を名乗れます。
現在、阿波十割に認定されているのは6蔵14銘柄で。今回のイベントでは、そのうち3蔵6銘柄の日本酒が提供されました。各蔵の味わいの特徴やこだわりの製法について紹介します。
「日新酒類」
伝統と格式ある日本酒コンテスト「全国新酒鑑評会」で19回の金賞受賞歴を誇る日新酒類。四国唯一の酒類総合メーカーで、地元特産物の鳴門金時やすだちを使った商品も展開しています。
日新酒類から今回のイベントに提供されたのは「純米吟醸 阿波天水」と「瓢太閣 純米大吟醸」です。
「純米吟醸 阿波天水」は、阿波産山田錦の特性を引き出すために、洗米方法や手作業での麹づくりをおこなっています。少し酸を感じる華やかな香りで、すっきりとした上品な甘さ。後味も爽やかで、バランスのいい味わいです。
「純米大吟醸 瓢太閣」は、徳島産の阿波山田錦を精米し、低温発酵で丁寧に醸造しています。グラスを近づけると、ふわっと華やかな香りが広がり、透明感のあるきれいな味わいながら、最後にほどよいキレを感じます。
「司菊酒造」
明治29年創業した司菊酒造は、平成27年から米と麹のみで造る純米酒のみを醸す純米酒造に。酒づくりの責任者である杜氏が米づくりから携わるなど、原材料に徹底的にこだわっています。
司菊酒造から提供された日本酒は「特別純米酒 貴吹川(アナブキガワ)」と「純米大吟醸 きらい 銀」です。
「特別純米酒 貴吹川」は、水にこだわり抜いた逸品。杜氏自らがトラックを運転し、四国一清らかな穴吹川の源流からタンクで組み上げた水を使用。少し酸を感じるキリッとした爽やかな香りで、みずみずしい甘みを感じます。優しい口当たりで、和食だけでなく洋食などさまざまな料理に寄り添ってくれそうです。
「純米大吟醸 きらい 銀」は、米を全量手洗いするなど丁寧な製法でつくられています。「きらい」は漢字にすると「喜来」と書き、「口にすれば喜びが来る」の意味が込められているそうです。口に含んで初めに感じるのは、やわらかさ。爽やかでフルーティーな香りと、まるみのある甘さが溶け合う上品な味わいです。
「本家松浦酒造場」
本家松浦酒造場は、創業200年あまりの歴史と伝統を大切にしながら、海外市場の開拓にも力を入れている酒造です。これまで12回開催された「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」では、毎年入賞を果たしています。今回のイベントで、提供されたのは「鳴門鯛 純米大吟醸 寿」と「鳴門鯛 LED」。
「鳴門鯛 純米大吟醸 寿」は阿波山田錦を40%まで丹念にみがきあげ、じっくりと低温発酵させるなど、熟練の職人技でつくる上質な日本酒です。濃厚な甘みと旨みを感じる、贅沢な味わい。繊細な酸味と、少し香ばしさを感じる余韻がじんわりと広がります。
「鳴門鯛 LED(レッド)」は、徳島県が開発し、徳島県内での酒蔵でしか使用していない希少な酵母「LED夢酵母」を使用してつくられています。とろけるような濃厚な甘さとフルーティーで華やかな香りは、ラベルのイメージにぴったりの味わいです。
日本酒の可能性を引き出す!創作料理と阿波十割のペアリング
ここからは八芳園の料理長による創作和食と、各蔵の日本酒を合わせたペアリングの感想をお届けします!
1品目:上品で味わい深い揚げ物
1品目は蓮根饅頭と鮎のコロッケ。合わせる日本酒は、司菊酒造の「特別純米酒 貴吹(アナブキガワ)」と「純米大吟醸 きらい 銀」です。
料理には、金蓮花のハスのような可愛らしい葉が添えられていました。黒い板状のものは徳島産のお米に竹炭を混ぜてチップにしたもので、パリッと香ばしい味わいです。
右のニンニクとハーブが効いた鮎のコロッケには、すっきりとした味わいの「貴吹川」を合わせていただきました。料理の味をしっかり引き立ててくれるのですが、後味はとても爽やかです。
左の蓮根饅頭には海老が練り込まれていて、旨みがたっぷり。そこに「きらい 銀」のやわらかな甘さとコクが重なる、風味豊かなペアリングでした。
2品目:あっさり上品な白身魚
2品目は湯引きした鯛のひしほ味噌添えと、魳(カマス)と法蓮(ほうれん)草のルーローに柚子胡椒の餡をかけたもの。合わせる日本酒は本家松浦酒造場の「鳴門鯛 純米大吟醸 寿」と日新酒類の「純米吟醸 阿波天水」です。
まずは徳島産の鯛に徳島産のすだちをかけて、「鳴門鯛 純米大吟醸 寿」と一緒にいただきます。濃厚な甘さの日本酒があっさりした繊細な白身魚の味わいにまろやかな深みをプラスし、奥行きのある味わいに変化させています。ひしほ味噌は、八角のようなアジアンテイストを感じます。これだけでおつまみになりそうな味です。
カマスとほうれん草のルーローはあっさりした味わいながら、少しピリッとした柚子胡椒の餡がアクセントに。「純米吟醸 阿波天水」のすっきり上品な甘さがカマスの旨みをより引き出し、料理を格上げしてくれています。
3品目:ジューシーで繊細な鶏料理
3品目は2種の阿波尾鶏です。「瓢太閣 純米大吟醸」の透明感のある味わいは、ジューシーな鶏料理とも、あっさりした鶏料理とも相性抜群。
写真左下の白と黒の楕円は、カリフラワーのペーストに鳴門昆布をペーストにしたものです。そのほか、岩のりのペーストなども添えられていて、何をつけるかでさまざまな味わいが楽しめるのですが、そのすべてに「瓢太閣 純米大吟醸」はしっかり寄り添ってくれます。
4品目:3つの味が楽しめるお茶漬け
4品目は鹿のつみれがのった出汁ご飯、阿波番茶をかけたお茶漬け、そこに再仕込み醤油をたらして。3つの味が楽しめるお茶漬けには「鳴門鯛 LED」が、一緒に提供されます。
「鳴門鯛 LED」の濃厚な甘さで、シンプルで滋味深い料理のコクと旨みが格段にアップ。もはや「お茶漬け」と呼んでいいのか躊躇うほど上品な味わいです。
ちなみに、再仕込み醤油とは一度絞った醤油に再度麹を加えてじっくり熟成させた醤油で、丹念に仕上げた芳醇な香りと味が特徴です。
デザート:素材の甘さを生かしたスイートポテト
デザートには、スイートポテトが登場。素材である徳島県産の鳴門金時が甘いので、味付けは甘さ控えめにしているそう。合わせる日本酒はお好みで。どの阿波十割のお酒にも合う優しい味わいで、しっとりと上質な甘さがペアリングを締めくくります。
阿波十割の日本酒で、徳島を味わう
阿波十割の日本酒はどれも、やわらかさが印象的。徳島の水や気候の特性なのか、それぞれの蔵の個性はありつつも優しい味わいです。香りが華やかなので、ワイングラスで楽しむのがおすすめ。
徳島県の米と水を使い、徳島県で磨き抜かれた阿波十割の日本酒。幅広い味わいの料理に寄り添う、懐の深いお酒だと感じました。クリスマスや年末年始など、お酒を飲む機会が増える季節を阿波十割の日本酒と一緒に過ごしてみませんか?