コロナ禍で一気に広まったリモートワークという働き方。ところが、最近は出社が大事だと言う意見もよく聞きます。さらには、リモートワーク+出勤のハイブリッドワークという形態もあるのです。

正解は何だろう? と悩む筆者のもとに、コクヨより「新しい働き方」に最適なオフィス家具、新しい技術の検証を行う「THE CAMPUS」での取り組みを発表する「2023 KOKUYO FAIR」の招待状が届きました。

自らさまざまな働き方を実践している同社でこれからの働き方の方向性を探ってみましょう。

社員のアクティビティがオフィスを決める

ファニチャー事業本部 ものづくり本部 商品戦略部 部長 赤松広道さんは「リモートワークの普及により、そのメリット・デメリットが分かりつつあります。そして各企業は『どうやったらオフィスを行きたい場所にできるか。自社に最適なハイブリッドワークをどう実現するか』という課題に直面し悩んでいるのです」と現在の働き方の現状を解説します。

その上で「変化を受け入れる」「変化を前提として今後のオフィスを作る」のが鍵であり、社員の人数ではなく「ワーカー(社員)」のアクティビティ(行動要素)に応じて場を作ることが大切だと話します。それが「オフィスに必要な7つのアクティビティ」。

  • オフィスに必要な7つのアクティビティ 提供:コクヨ

各企業のアクティビティ比率を算出し、その比率に合わせてオフィスをレイアウトするそうです。

ここで面白いのが、サステナブルオフィスコンセプトという考え方で、従来のオフィスでは、必要なアクティビティが変わるごとに家具や空間を入れ替え、多大なコストが発生していました。しかし、赤松さんは「可変性の高いオフィス作りの手法『ドットプラン』」、可変性の高いオフィス家具を使うことで働き方の変化に応じて自由に、サステナブルに転用した運用が可能なのだと提案します。

  • オフィスの変化をサステナブルに楽しむ「ドットプラン」 提供:コクヨ

オフィスをタテ・ヨコのグリッド(格子)で区画し、空間ユニットの配置を進めるレイアウト手法「グリッドプラン」より自由度がある「点(ドット)」でレイアウトするのが特徴のようですね。

確かに、筆者のいる編集部は「従来オフィス」のため、組織変更など「人数の増減」のたびに大掛かりなレイアウト変更工事を行うので、引っ越しに関わる総務担当や、引っ越しする本人も大きな負担がかかります。

また、テレカンファレンス専用スペース、フリーアドレス座席なども導入されていますが、基本は所属する組織の「島の机」に集まって仕事をするスタイル。リモートワークの導入などもあり、「毎日オフィスで働きたい!」と思う場所ではありません。仕事の内容でオフィスが変化できるなら、ちょっと心が惹かれますね。

可変性の高いオフィス家具

可変性の高いオフィス家具の新製品では、汚れやすい背クッションを交換可能なカジュアルチェア「Liite(リーテ)」、背もたれを取り外せて、導入後も部材の買い足し・交換が可能なソファー「OSFA(オスファ)」などが登場しています。

  • 背クッションを交換可能なカジュアルチェア「Liite(リーテ)」

  • 可変型ソファー「OSFA(オスファ)」

  • 背もたれを外したり、部材を追加したりできる

オフィスサービスにも取り組む

発表内容はそれだけではありません。実は今回、サービス領域にも進出するというのです。

ファニチャー事業本部 マーケティング本部 ソリューション企画部 部長 酒井希望さんは「空間だけでなく、ワークシーンのトータルパートナーになりたい」とその理由を説明。そして、「HR/ヘルス」「ICT」「SPACE」を通して働く人の「Well-being(ウェルビーイング)」を実現したいと抱負を語りました。

近日中に詳細が分かるそうですが、例えばプロのトレーナーによる社員の腰痛や肩こりを解消し、コンディションUPを目指す「Wellness Program(ウェルネスプログラム)]、オフィスアートに注目し、ホワイトボードの様に描くことができる新製品「ARTBOARD(アートボード)」で発想やコミュニケーションを刺激する「xp. ART(エクスペリエンスアート)」などがあると言います。

こうした新しい取り組みは、コクヨ東京品川オフィスにある「THE CAMPUS」で実証実験&検証。社員が実際に体験しながら開発を進めているみたいです。

コクヨ社員自ら試して検証する

自社の事業でも必要なため、先進的な働き方を実践している印象のコクヨですが、どんなオフィス環境で働いているのでしょう。素朴な疑問に対して、同じファニチャー事業部、提案マーケティング部の幸森史さんがその実態を教えてくれました。

その話によると、ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)スタイルのセンターオフィス、社員用のサテライトオフィス、地方のサテライトオフィス、各事業者が提供するサードプレイスがオフィスとして用意され、社員は「自分らしい働き方」に応じて選択しているそうです。

また、上司と面談して「オフィス中心、在宅中心、半々くらい」など伝え、クオーター単位でそのパフォーマンスを判断。次の働き方を検討するルールになっていると幸森さんは言います。

自分あての郵便物などはスキャンデータで送られるなど、「事務作業のために出社する」ということもないそうですよ。そこまで徹底してもらえるとありがたいですよね。

そしてABW環境を構築しても、肝心の社員の意識に浸透していないと宝の持ち腐れ。マインドセットはどうしているのでしょう。

入社6年目という社員の方に尋ねると、「私自身は入社した時からフリーアドレスで、それが普通なのですね。でも例えば中途入社の人などもいるので、オフィスのリニューアル時など節目に社員向けの『使い方』『導入した意図』などの説明会が1週間毎日開催され、都合のよいタイミングでそれを聴講したり、説明動画を視聴したりしてマインドセットしています」と回答してくれました。

さらには、「リモートワークのデメリット」の一つである、コミュニケーション不足を解消するため、2次元のバーチャル空間でアバターを通して交流するデジタルオフィス「oVice(オヴィス)」の実証実験の開始など、とにかく社員間のコミュニケーションに関して常に改善方法を模索している状況だと明かしてくれます。

  • アバターで社員同士のコミュニケーションを検証する「oVice(オヴィス)」の画面

ちなみに出社する社員との「距離間」をテレワークする社員に抱かせない試みとして、「temi」という遠隔操作されるロボットもありました。顔を映すモニターの高さが変わるなど、ミーテイング、プレゼンテーションなど、シチュエーションに応じてやり取りできるそうです。

  • リモートで働く社員が「オフィスにいる社員との距離」を感じないようにする検証

  • 「temi」というオフィス専用ロボットがテレワーク社員の代わりに存在感を出す

さまざまな取り組みを進めるコクヨですが、すべては「社員のため」という点は共通しているでしょう。

発表会の中で、「コクヨの定義する自分らしさ」を聞かれた赤松さんは、「社員も会社の中でイキイキと働ける状態、それはエンゲージメントという言い方もできるのでしょう。働く行為を通して自分が会社に認められる、また社員同士もお互いを認められること」と言っています。

これが正解、とはいきませんが、「職場で取り組むべき内容の」ヒントに気付けた発表会でした。