現在放送中のTBS系金曜ドラマ『クロサギ』(毎週金曜22:00~)。『週刊ヤングサンデー』『週刊ビッグコミックスピリッツ』にて10年間連載された人気漫画を実写ドラマ化された本作は、平野紫耀(King & Prince)演じる主人公の黒崎高志郎が、詐欺師を騙す詐欺師=クロサギとして、自らの父を騙した巨大な詐欺師・御木本への復讐を誓う物語だ。「令和のいまだからこそ」と強い思いで本作を企画した武田梓プロデューサーと那須田淳プロデューサーが、平野を取り巻く一癖も二癖もある俳優陣の起用理由を語った。

  • 『クロサギ』御木本役の坂東彌十郎(左)と白石陽一役の山本耕史

■只者ではない御木本役「坂東彌十郎さんはぴったり」

平野演じる黒崎は、15歳のとき詐欺被害にあった父親が起こした事件をきっかけに家族を失ってしまったという暗い過去を持つ。そこで父を騙した巨悪に立ち向かうため、詐欺師を騙す詐欺師、通称クロサギとしての人生を選ぶ。

『クロサギ』は2006年にドラマ化、2008年に映画化されているが、当時と比較しても巧妙な手口で悪質化した詐欺被害が圧倒的に増えているいまの時代だからこそ、より黒崎が立ち向かう姿に感情移入できるのでは……と武田氏は企画意図を語る。

黒崎が立ち向かうという意味で、最大の敵となる大物詐欺師・御木本の存在は、本作の大きな肝になる。実際、2006年に放送されたドラマでは、御木本との決着は描かれていない。そんな大役を担うのが、現在放送中の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で北条時政を演じた坂東彌十郎だ。

武田氏は「この時代に『クロサギ』をやるにあたって、意識したのは黒崎のキャラクターや(黒崎の師匠となる三浦友和演じる)桂木敏夫を、ちゃんと社会に溶け込んでいる人間として描きたかった。今の詐欺師としてはその方が優秀なんじゃないかと」と語ると「逆に御木本というのは、得体のしれない詐欺師として強烈な存在感を放ってほしいと思っていました。その意味で只者ではない御木本を演じていただくには、坂東彌十郎さんはぴったりなのでは……」と候補に挙がったという。

那須田氏も「大河ドラマを観て、彌十郎さんは面白いなと思っていたんです」と笑うと「先ほど武田が言った得体の知れなさのなかに、人間味もあるような……ものすごく懐の深いお芝居をされていたので、とても面白いなと思ったんです」と語る。

彌十郎は「とことん憎まれたい」というコメントを出していたが、那須田氏は「もちろん十分にやっていただけると思いますが、彌十郎さんならどんなに悪い役をやっても、奥底にある“なにか”を感じさせてくださると思うんです」と大いなる期待を寄せていた。

■ざわざわする存在の白石を作り上げる山本耕史

『鎌倉殿の13人』つながりで言えば、一般人を狙う詐欺師=シロサギ、白石陽一を演じている山本耕史も注目のキャスティングだ。『鎌倉殿の13人』では、小栗旬演じる北条義時の幼なじみとして近くにいつつも、なにを考えているか分からない三浦義村を好演しているが、近年山本が画面に登場すると「なにかをするのでは……」と視聴者は期待してしまう。

武田氏は「白石というキャラクターは画面に登場するとざわざわするような存在であってほしいと思っていたんです」と述べると「黒崎自身も白石に出会って『なんだ、この食えない奴は』と思うような存在。その意味で、近年山本さんは本当に視聴者を翻弄するような役を見事に演じてくださっており、画面に登場すると『きっと面白いことが起こる』と自然に思ってもらえる白石を作り上げてくれると思っています」と期待を寄せる。

山本自身、以前から現場ではさまざまなアイデアを提案して、キャラクターを立体的に見せる努力をしていると話していたが、本作でも「台本になかったようなことをいろいろ提案してくださいます。例えば、ご本人が手先が器用なのですが、あるシーンでライターやペンをくるくる回したりして、なにか含みのあるようなお芝居をされていました。そういったアイデアを出していただけるのは、とてもありがたいです」と感謝を述べていた。

■ヒロイン・氷柱役の難しさを表現できる黒島結菜

もう一人、検事を目指す女子大生・吉川氷柱(つらら)も、物語に大きな彩りを与える存在だ。演じるのは黒島結菜。

「脚本の篠﨑(絵里子)先生も言っていたのですが、ダークヒーローが主人公の作品のヒロインというのはとても難しいと思うんです。主人公に感情移入していくなかで、時には正論を突き付けなければいけない立場じゃないですか。そんななか、大学3年生という大人でもあり未熟さもある、迷いながら進んでいくヒロイン像が、黒島さんにはとても似合うと感じたんです」と武田氏は起用理由を語る。

那須田氏も「黒島さんの持っている芯の強さと透明感というのは、ダークヒーローに向かってはっきりとモノを申さなければいけないという立場に、とてもあっていると思います」と語ると「氷柱自身が発言する言葉というのは正論なのですが、黒島さんが迷いながら、心から発している氷柱のお芝居というのは、すごく素敵に映ります」と称賛していた。

武田氏、那須田氏共に「回を増すごとに話がどんどんとダイナミックになっていきます」と期待を口にする。黒崎という主人公の旅路はもちろん、彼が出会う人々の人生を含めて、大きな渦巻のようなうねりのもと、ストーリーは進んでいく。「とにかくついてきてください」という両プロデューサーの言葉が、作品の力強さを物語っている。

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