女優の福原遥がヒロインを務める連続テレビ小説『舞いあがれ!』(NHK総合 毎週月~土曜8:00~ほか)。ヒロイン・舞の父・岩倉浩太役を演じる高橋克典がコメントを寄せた。
1990年代から現在までを描く本作は、福原遥演じるヒロイン・岩倉舞が大空に舞いあがる夢に向かっていく挫折と再生のドラマ。
高橋演じる舞の父・浩太は、東大阪の町工場を経営する二代目社長。元は重工メーカーに勤めて飛行機を製作する夢を抱いていたが、父親が病死したため退職し、ネジを作る工場を継いだ。娘の舞とは、互いに飛行機好きで、同志のような間柄になっていく。
――『舞いあがれ!』に出演することが決まったときのお気持ちは?
役者として「“朝ドラ”の表現」をできる機会は一生に一回だと思っているので、毎日すごくうれしく撮影に通わせていただいています。僕は粋がっているような役をずいぶんやってきましたけど、自分が実生活で父となって見つけた「心」があり、自らも驚きの連続の中で育ってきた「感情」がある。このタイミングで、そして家族を見つめ直すような時代の流れの中で、ヒロインの父親を演じることがすごくうれしいです。偶然ですが、僕が子どもの頃に初めて全部見た“朝ドラ”『雲のじゅうたん』も、飛行機にまつわる作品だったんですよ。『舞いあがれ!』も、飛びたい!という人たちの物語。ご縁を感じています。
――ご自身の役柄についての印象や、 演じるうえで楽しみにしていること、役のここに注目してほしいという点などを教えて下さい。
僕の役・浩太は、大学を卒業し、飛行機を作りたくて就職したものの、父親の残したネジ工場を継いだ人物です。僕は実年齢の割に若く見えすぎるから、浩太を演じるために少しふっくらして作品に入りました。でも、貫禄が出過ぎてしまって。浩太が若いうちは周囲の東大阪の皆さんと違う雰囲気の、少し線の細いノーブルな感じがいいかなと、体重を絞ることにしたんです。食事制限中で大阪のおいしいものがあまり食べられないので、劇中で食べた「うめづ」のお好み焼きが本当においしかったです。
浩太は、どこにでもいるような優しいお父さん。子を持つ親だったら大概分かち合えるような気持ちが描かれています。撮影していて印象的だったのは、舞(福原遥さん)の初めての反抗期のシーンですね。過干渉気味の親に今まで反抗してこなかった娘が、閉じ込めていた自分を出してくる場面です。僕は反抗されている側だけど、涙が出そうになるほど娘の成長がうれしくなってしまって。でも、監督からは違う演出がきました(笑)。何より、ヒロインの福原遥さんが本当にすばらしくて、とてもいいシーンになったと思います。息子の悠人(横山裕)とは、まあ…あんなもんでしょう(笑)。父と息子はあれでいいんじゃないかな。僕、刃向かわれるのが嫌いじゃないんですよ。自分の若い時だってそうだったし。親に反抗して後に引けなくなるのも悪いことじゃないし、親が飲み込んだ言葉や思いはそのうち自分も知ることになる、と脚本で巧妙に描かれています。
――収録に参加されてみて、共演者の印象や現場の雰囲気はいかがですか?
実生活で僕は男の子の父なんですが、娘さんを持つパパ友達の気持ちをこの現場で疑似体験しましたね。娘ってこんな感じか!とわかったので、娘さんのかわいさに気苦労が絶えないパパ友と東京で飲みました(笑)。
そんな娘・舞を演じるヒロインの福原遥さんは、すごく透明感がある方。常に水や空気のように自然で柔らかくてみずみずしくて、共演が楽しいです。2022 年 4 月期に NHK で放送した『正直不動産』でも共演しているのですが、実はその撮影中に『舞いあがれ!』の台本をいただいていたんですよ。だから、『正直不動産』では敵対関係にありながらもすでにかわいい娘のようで…面白い体験をさせていただきました(笑)。妻・めぐみ役の永作博美さんとは、20年ぶりくらいの共演です。ご結婚されてお子さんも産んでいて、親として経験しているものが共通するから非常にやりやすいですね。大阪ことばはただの記号じゃなく、大阪の人の優しさや人懐っこさ、人との距離感などを含んで成立しているものだと気づきました。すごくチャーミングだし、正直で、救ってくれる感じもある。東京にはない温かさに、心打たれています。
――放送を楽しみにしている視聴者の方々へのメッセージをお願いします。
全編通してすべて見どころです!と言うと困るかもしれませんけど(笑)、うつむくことや、足元を見たり、ガッカリすることばかりの時代に『舞いあがれ!』というタイトルがいいですよね。空を仰ぐことをちょっと忘れていたからこそのタイトルだと思います。うまくいくこともいかないこともあるけど、すごくいいドラマに仕上がっていると思うので、隅から隅までご覧ください。登場人物の若者たちもさわやかで、とても気持ちのいい時間が流れるんじゃないかなと思います。
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