ハプスブルク家の都として栄えた、オーストリアの首都ウィーン。旧市街は「ウィーン歴史地区」として世界遺産にも登録されており、壮麗な建築物の数々が旅人の目を楽しませてくれます。
「音楽の都」として知られるウィーンですが、伝統あるカフェ文化も有名。ウィーンではじめてのカフェの開業は1685年にさかのぼり、2011年にはウィーンのカフェ文化がユネスコの無形文化遺産にも登録されています。
ウィーンを訪れたなら、そんな華麗なるカフェ文化を体感してみたいもの。1度は行ってみたい、個性あふれるウィーンのカフェ4軒をご紹介しましょう。
DEMEL(デメル)
ウィーンを代表するカフェのひとつとして知られるのが「DEMEL(デメル)」。その歴史は、1786年に前身となる菓子店がオープンしたことにはじまります。
卓越された技術によって生み出されるデメルのお菓子はハプスブルク家の皇帝や王侯貴族の舌を喜ばせ、1799年にはウィーン王宮御用達菓子司に指定されました。ハプスブルク家の紋章をあしらったブランドマークは、宮廷御用達の証なのです。
今では一種の「観光スポット」にもなっているデメルの本店。日中訪れると観光客が列を作っているので、近くまで来ればすぐわかるはずです。
洗練された雰囲気漂う店内に入ると、一瞬にしてタイムスリップしたようなムードに。エリアによってはやや薄暗く、大人の秘密の社交場のような空気も漂います。
ザッハトルテも有名ですが、デメルならではの名物として知られているのが「Anna Torte(アンナトルテ)」。しっとりとしたチョコレートケーキで、王侯貴族のドレスを思わせる波状のヌガーコーティングが印象的です。
チョコレートのバタークリームが挟まったスポンジ部分は、口の中でとろけるなめらかさ。オレンジリキュールがさわやかな苦味を醸し出しているので、見た目ほど甘くありません。
「ビタースイートな大人の味」のスポンジ部分とは対照的に、ヌガーコーティングはずっしりとした質感と濃厚な甘みが特徴。ヌガーコーティング部分は日本人には少々甘すぎるかもしれませんが、いかにも「伝統あるヨーロッパのケーキ」といった趣です。
奥には物販コーナーもあり、「猫の舌」をモチーフにしたチョコレートや、美貌の皇妃エリザベートも愛したというスミレの砂糖漬けなどはお土産にもぴったりです。
DEMEL(デメル)
Kohlmarkt 14, 1010 Wien
公式サイト:https://www.demel.com/en/home/
Cafe Central(カフェ ツェントラル)
ウィーンに数あるカフェの中でも、抜群の環境と雰囲気を誇っているのが「Cafe Central(カフェ ツェントラル)」。なんと、宮殿を改装して1876年にオープンしたカフェなんです。
元宮殿というだけあって、外観からして重厚感たっぷり。初めて訪れると「えっ、本当にここでいいの?」と思ってしまうかもしれません。
内装も外観に負けず劣らずの豪華さ。アーチが連なる、ゴシック様式の天井の美しさに目を奪われます。
人の少ない開店直後は、暖色の照明に彩られた店内がひときわ幻想的なムードに。この空間を見るだけでも訪れる価値があるというものでしょう。
オーストリアに行ったら1度は食べてほしいのが、Apfelstrudel(アプフェルシュトゥルーデル)。たっぷりのリンゴを使ったフィリングを薄い生地で巻いたアップルパイのようなお菓子で、オーストリアとドイツを中心に愛されています。
アップルパイより薄く、柔らかいシュトゥルーデル生地の中にはリンゴがぎっしり。素材本来の風味を生かした素朴な味わいで、甘さ控えめなので、朝からでも食べられるほど。リンゴ本来のザクッとした食感とシナモンが良いアクセントになっています。
このほかにもオーストリアの伝統菓子やフレンチテイストのケーキが揃っているので、好みや気分に合わせて選んでみてください。
また、ウィーンで絶対に飲むべきドリンクといえば「Melange(メランジェ)」。コーヒーと泡立てたミルクを合わせたもので、驚くほど柔らかく繊細な泡が特徴です。
ツェントラルのメランジェは、マイルドで酸味や苦味を抑えた、朝からでも飲みやすいコーヒーです。朝食メニューもあるので、ここで1日のスタートを切ってはいかがでしょうか。
Cafe Central(カフェ ツェントラル)
Herrengasse 14, 1010 Wien
Cafe Landtmann(カフェ ラントマン)
1873年創業、ウィーンを代表する老舗カフェのひとつが「Cafe Landtmann(カフェ ラントマン)」です。「ウィーンで最もエレガント」とも称されるカフェで、国会議事堂や市庁舎、劇場が近いことから、多くの政治家や俳優たちに愛されてきました。
天井が高く、落ち着いた店内は、木をふんだんに使ったクラシカルなしつらえ。文化人の社交サロンといった趣で、映画のワンシーンを彷彿とさせます。
植物文様の入ったソファやチェア、天井から吊るされたシャンデリアからは、「これぞウィーンのカフェ」といった正統派の雰囲気がにじみ出ています。
写真は「Sacher Kirsch-Maroni」。チェリーとマロンの風味のチョコレートケーキです。
しっとりとしたチョコレートスポンジと、甘酸っぱいチェリーの風味が相性抜群。リッチな風味のマロンクリームがアクセントになっています。全体的に甘すぎないテイストに仕上がっているので、オーストリアのチョコレート系のケーキは甘すぎるという人でも食べやすいのではないでしょうか。
ウィーンのカフェでは定番のメランジェですが、お店によって風味はさまざま。ラントマンのメランジェは苦味がやや強めで、甘いケーキによく合います。
Cafe Landtmann(カフェ ラントマン)
Universitätsring 4, 1010 Wien
公式サイト:https://www.landtmann.at/en/cafe-landtmann.html
Cafe Kunsthistorisches Museum Wien(Cafe KHM)
ウィーンのカフェの中でも、ひときわ写真映えする1軒が「Cafe Kunsthistorisches Museum Wien(Cafe KHM)」。
ブリューゲルの作品群で有名な美術史美術館の中にあるカフェで、あまりの豪華さゆえ「世界で最も美しいカフェ」のひとつとも称されています
ミュージアム内の吹き抜け空間を利用したカフェは、美術館の入場料を払った人だけが入れる特別な場所。豪華な彫刻に彩られたドーム型天井に真紅のソファ、モザイクの床からなる空間は、これまでの「ミュージアムカフェ」の概念を覆すといってもいいほどです。
甘いケーキが多いオーストリアにあって、後味すっきりのアプリコットとヨーグルトのタルトはライトに楽しめる一品。お茶やスイーツとともに、圧倒的な空間美を堪能しましょう。
Cafe Kunsthistorisches Museum Wien
Burgring 5,1010 Wien(美術史美術館内)
公式サイト:https://www.khm.at/en/explore/offers/cafe-restaurant/
歴史と文化に裏打ちされたウィーンのカフェは芸術の域に達しているといっても過言ではありません。ぜひ、あまたのカフェの中から、お気に入りの1軒を見つけてください。
※本記事中の日本円表記は、1ユーロ=144.6円(2022年11月4日のレート)で計算しています。