不動産価格が上昇を続ける昨今、マイホーム検討中の皆さんの中には住宅ローン借入額が膨らみ悩ましく思っている方も多いのではないでしょうか? そこで今回は住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFS取締役COOの塩澤崇さんに、銀行はいくらまで貸してくれるのか、そして、余裕ある返済を目指すならいくらまで借りていいのかをお聞きしました。
■不動産価格指数は6年前の1.5倍に
――現在、不動産価格が上がっていますが、どういった状況ですか?
国土交通省が発表する不動産価格指数は2016年と比較して1.5倍に上昇しています。東京都心部では、ファミリー向け3LDKの中古マンションが1億円以上もし、以前は珍しかった億ションが当たり前の時代です。
日銀の黒田総裁は「低金利を続ける」と宣言しており、お金を借りやすい状態は今後も続くことから、不動産価格も高止まりすると考えています。
――実際、皆さんどれくらいの額を借り入れているのでしょうか?
東京カンテイが発表する2021年新築マンション価格の年収倍率(住宅ローン借入額/税引前年収)は8.93倍、中古マンションは6.54倍でした。特に東京都心部では夫婦共働きでないと買えないような高額マンションも多く、年収倍率10倍もざらにあります。
「年収倍率は5倍まで」とよく言われていた10~15年前の時代では想像もつかなかった高水準です。
――金融機関の審査に通る目安はあるのでしょうか?
目安は年収倍率7倍です。金融機関の審査基準の一つに返済比率(ローンの毎月返済額/月収)があります。この値が35%以下であれば審査に通りやすく、40%を超えると厳しいです。年収倍率7倍がちょうど返済比率35%となります。
返済比率40%は年収倍率8倍のラインです。なお、1,000万円を超える高年収では返済比率45%(年収倍率9~10倍)まで許容する銀行もあります。
■適正額を算出するには『簡易診断』をしてみよう
――銀行が貸してくれる金額と、余裕を持って返済できる金額は異なると考えていますが、どうでしょうか?
その通りだと思います。ですので、家計シミュレーションの実施をオススメします。と言っても、複雑な計算をする必要はありません。まずは簡易診断をやってみましょう。
――具体的にどう簡易診断をすればいいのでしょうか?
まずは、収入から税金を除いた『手取り額』を計算します。この金額はお手元の給与明細を見ればすぐにわかると思います。
そして、そこから住宅関連の費用を除きます。中古マンションを例に取ると、住宅関連の費用とは住宅ローン・管理修繕積立費・固定資産税・火災保険の4つです。
そして、その手残りから家計をやりくりできるかがポイントです。
例えば、東京都の年収400万円の方が住宅ローンを2,800万円借り入れた場合を考えます。手取りは26万円程度です。その手取りから住宅ローン(7.2万円。金利0.45%で計算)+管理修繕積立費(3万円)+固定資産税(1万円)+火災保険料(0.1万円)を差し引くと、手残りは約15万円となります。
この15万円で食費・教育費・車代・交際費・保険・投資・貯金・旅行代などを捻出できるかをまず確認しましょう。なお、上記の計算を年収500万円で行うと手残りは19万円、年収600万円だと24万円となります。
※税金の計算や管理修繕積立費はあくまでも目安です。
――住宅ローンの借入額を考えるうえで、収入や生活費以外に気をつけるべきポイントはありますか?
自営業や歩合制の仕事をされている場合は、収入減でも返済できるかを確認したほうが賢明です。夫婦お二人での返済を考えている場合は、育児や介護による仕事中断リスクもあり得ることを念頭に置いておいたほうがいいでしょう。
また、簡易診断の結果、希望の借入額では家計が苦しいと感じる場合の打ち手としては、やはり収入を増やすか支出を減らすかしかないと思います。それでも厳しいのであれば、最後はマイホームの予算を減らすことも検討しましょう。