三菱自動車工業が新型軽自動車「デリカミニ」を発表した。2023年初夏の発売に先駆けて1月には「東京オートサロン2023」に参考出品する予定だ。デリカミニは軽スーパーハイトワゴンの新車だが、同社にはすでに「eKクロススペース」というモデルがある。なぜデリカミニを投入するのだろうか。三菱自動車が開催したオンライン説明会で話を聞いた。
「eKクロススペース」との関係は?
デリカミニの商品企画を担当した藤井康輔さんによると、軽自動車は国内自動車市場の約4割を占める人気商品であり、なかでもスーパーハイトワゴンは軽自動車販売の4割超を占める売れ筋であるとのこと。軽スーパーハイトの売り方として、これまでは「標準タイプ」と目立つ(見ようによってはいかつい)外観の「カスタム」の2本立てが主流だったが、最近では第3の派生モデルとしてアウトドア・レジャー系でSUVテイストな新タイプが増えてきたそうだ。
確かに、スズキ「スペーシア」にはカスタムの「スペーシアカスタム」があり、アウトドア・レジャー系の「スペーシアギア」がある(先日、商用車の利点を加味した新型車「スペーシアベース」も追加となった)。ダイハツ工業「タント」には「タントカスタム」に加え、アウトドア・レジャー系の「タントファンクロス」が追加となったばかりだ。
こんな背景があるので、デリカミニ投入の理由は「アウトドア系の軽スーパーハイトワゴンに需要があるから」という一言に集約できるのかもしれない。この手のクルマを作るにあたり、同社ラインアップの中でミニバンの「デリカ D:5」は参考にすべき格好の先輩だ。デリカミニが発売となる2023年は、デリカ誕生から55周年の節目でもある。軽スーパーハイトワゴンを欲しがる「ヤングファミリー層」にとって、「本格4駆モデルのデリカは遠い存在と見られている」(藤井さん)との調べもついているそうだから、デリカの要素を落とし込んだデリカミニには、彼らの需要を取り込むクルマとしての期待もかけているのだろう。
三菱の軽スーパーハイトワゴンには「eKスペース」と「eKクロススペース」の2車種がある。藤井さんによると、そもそもeKクロススペースも三菱自動車らしいアクティブな外観を持つクルマなのだが、そのあたりが「少しお客様に伝わりにくかった」ので、全く違うスタイリングで、アウトドアレジャーに似合い、デリカ D:5の世界観を詰め込んだデリカミニを新たに追加することを決めたそうだ。
デリカミニの登場でクロススペースは販売中止になるのかという質問に対し、藤井さんは「現時点では回答を差し控えたい」と回答。ということは、クロススペースをデリカミニに置き換えるのだろうか? そう思ったので「スペースとクロススペースの販売割合は?」と訪ねてみると、現状でスペースが4割、クロススペースが6割とのこと。「販売で苦戦するクロススペースをデリカミニに置き換える作戦」かと思いきや、こちらもけっこう人気のクルマであることがわかった。
なので、三菱の軽スーパーハイトが今後、標準タイプのeKスペース、カスタム的な立ち位置のeKクロススペース、アウトドア系のデリカミニという3車種構成となるのか、それともクロススペースとデリカミニが入れ替わるのかは現時点で予想しにくくなってしまったのだが、いずれにせよ、丸目のかわいい顔つきとタフさ、ギア感が共存するデリカミニのデザインに好感を持つ人は結構いそうな気がする。