女優の川口春奈、アイドルグループ・Snow Manの目黒蓮らが出演するフジテレビ系ドラマ『silent』(毎週木曜22:00~)。本気で愛した人と、音のない世界で“出会い直す”、切なくも温かいオリジナルラブストーリーで、Twitterでは放送されるたびに「#silent」が世界トレンド1位にランクインし、見逃し配信ではフジテレビの全番組で歴代最高を記録するなど、今最も話題を集めているドラマだ。

脚本を務めるのは、『第33回フジテレビヤングシナリオ大賞』を受賞した生方美久氏。このコンクールは、坂元裕二氏(第1回)や野島伸司氏(第2回)、野木亜紀子氏(第22回)といったヒットメーカーに、今クールの月9『PICU 小児集中治療室』を担当する倉光泰子氏(第26回)を輩出するなど、脚本家の登竜門的存在だが、生方氏は今作が連続ドラマデビューとなる。そんな生方氏に、初めての連ドラに対する思い、作品の作り方について聞いた――。

  • 生方美久氏(左)と村瀬健プロデューサー (C)フジテレビ

    生方美久氏(左)と村瀬健プロデューサー (C)フジテレビ

■「違和感は、全部いい意味のものでした」

脚本家の中には、自分が書いていたときの想像と、実際に仕上がった映像を比較して、違和感を覚える作家もいるそうだが、生方氏は、初連ドラの第1話の仕上がりをどう見たのだろうか。

「違和感は、全部いい意味のものでしたね。キャストの皆さんが、すごく脚本を理解して演技をしてくださっていますし、もちろん自分で書いたものと違うなと思うこともあるんですが、作品全体として見たときに、むしろ正しくしてもらっているなという印象が大きいです」

中でも川口には、「セリフのお芝居はもちろんなんですけど、特に“受け”のお芝居がお上手だなと思いました。私はト書きに『涙を流す』と書くだけですが、状況と心情を理解していつも台本以上のものにしてくださっています」と、役者の技量を実感している。

  • 『silent』主演の川口春奈 (C)フジテレビ

■視聴者の考察に「私が一番びっくり」

視聴者の間で大きな話題となっているのが、セリフのつながりなどから読み取れる“伏線”だ。例えば、第1話での「うるさい」。序盤、想(目黒)が声にした「うるさい」を、紬(川口)は笑顔で受け止めるのだが、ラストでは、想が「うるさい」を手話で示し、紬はそれを理解することができずに2人が涙する……という、全く印象の異なる「うるさい」を表現していた。

また、第2話のラストで紬が突然発した「コンポタ(コーンポタージュ)」についてもそうだろう。第3話の冒頭で、なぜ「コンポタ」なのかを回想とともに視聴者にさりげなく伝える構成となっており、そのことで、紬の現在の恋人・湊斗(鈴鹿央士)の知られざる優しさを表現することに成功していた。

このように視聴者は、セリフの端々を “伏線”とし、“考察”しながら楽しんでいる。この現象について、生方氏は「私自身、そんなに伏線を作ろうとは考えてなくて(笑)。単純に登場人物たちの“何が変わって、何が変わっていないのか”を描く要素の1つとしてセリフがそうなっているだけです。まさかこんなに“考察”されるとは思ってもいなくて、私が一番びっくりしています」と驚いた様子だった。