コロナ禍になり、以前と比べ働き方に対する考え方が多様化している中、FIREという言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

FIREとは経済的に独立を果たし、早期リタイアをして自由を手に入れることを意味する言葉です。2010年頃に米国で生まれた言葉ですが、日本でもこの考え方が広がり、50代でFIREを目指す動きが増えてきました。

今回は、50代でFIREするためにいくら資産が必要なのかを紹介します。

「FIRE」とは

FIREとは上述した通り、「経済的独立を果たした後に早期退職して自由な人生を謳歌」するという意味です。

その語源は英語の「Financial(経済的)、 Independence(独立)、Retire(退職・引退)、 Early(早期に)」の4つの頭文字を取ったものとなります。

日本でも既に馴染みのある早期リタイアに似た考え方ですが、経済的独立の観点で次のような違いがあります。

・早期リタイア

リタイア後の生活費は貯金や年金、退職金などから切り崩して捻出する。

・FIRE

生活費は投資から得た運用益で行い、元手を減らすことなくリタイアを実現する。

このように、元手の資金を切り崩して生活する早期リタイアとは違い、投資の運用益で経済的独立を果たすことがFIREの特徴です。

また、FIREには次の4つの考え方があり、どの方法を選択するかで実現するスピードや生活スタイルが変わってくるので確認しておきましょう。

(1)FAT FIRE

生活費を節約することなく、自由な生活を送れる資金を投資から得てリタイアする方法。

(2)Lean FIRE

ある程度、生活費を節約しつつ、不便の無い生活を送れる資金を投資から得てリタイアする方法。

(3)Barista FIRE

生活費を本業収入と投資の運用から得ることで、通常より働く時間を減らしたり調整する方法。半リタイア状態のサイドFIREと呼ばれる。

(4)Coast FIRE

贅沢に生活できるほどの資金を投資で得つつも、あえて好きな仕ことを行う方法。

「FIRE」をするために必要なもの

FIREを達成するためには、1年間に必要な生活費と同等かそれ以上の資金を、毎年投資から得るだけの資産を持つことが条件となります。

そのため、資産運用を始める前に以下の2つの考え方を参考にしてください。

(1)必要な生活費

FIRE達成後は資産運用で得た利益から生活をする必要があるため、毎月の支出を正確に把握しておくことが重要です。まずは、毎月いくら支出しているのかを家計簿等で、見える化するようにしましょう。それを踏まえて、ライフプランで必要になってくる資金を算出します。

50代になるとお子様の教育費はある程度、目途もたっていることが想定されるので住居費を中心に考えることが大切です。「FIRE」をすると住宅ローンは組めなくなります。賃貸か持ち家、持ち家の場合も住宅ローンの有無などしっかりとシミュレーションしなければなりません。

人生には突発的にお金が必要になることもあるので、将来の生活の変化も想定しつつ必要な生活費を算出してください。

(2)必要な資産額

FIREでは1年間の生活費に対して、25倍の資金があれば達成できると言われています。これは、年間支出額の25倍の資金を年利4%で投資を行えば運用益だけで生活費を賄えるという考えに基づいています。仮に年間支出額が300万円の場合、7,500万円の元手資金を年利4%で運用できれば年間支出額と同等の資金を、投資運用益のみで得られるということです。

このようにまず必要な生活費を把握できれば、必要な資産額を導き出すことができます。反対に準備できる資産額を想定して、生活費を節約することも可能です。

必要な資産額が分かったら、投資運用しながら資産を積み上げていく行動をしていきましょう。

後章でそのための、資産運用についても触れていきますので、ご確認ください。

50代で「FIRE」をするにはいくら資産が必要?

この章では、具体的に50代でFIREするためにいくら資産が必要になるかを紹介します。 FIREに必要な資産額は人によって違うため、ここでは令和3年の50代平均賃金である370万円を基準として算出します。

(参照) 令和3年賃金構造基本統計調査 結果の概況|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

370万円を投資の運用から毎年得ると考え、上述した4%ルールを適用すると必要な資産額は次の通りです。

◆50代でFIREするために必要な資産額

  • 年間支出額:370万円
  • 必要資産額:9,250万円(370万円×25)

この計算はFIRE後の人生を全て、投資から得た運用益で賄う場合の資産額ですが、65歳から貰える年金を勘定に含めると、次の通りとなります。 ※受け取れる年金を年間120万円として計算

◆65歳以降に必要な資産額

  • 年間支出額:370万円
  • 年金収入額:120万円
  • 年金を差し引いた必要資産額:6,250万円((370万円-120万円)×25)

50歳台でもいつFIREをするかで変わりますがFIRE後、年金を貰うまでの生活費を貯金から賄うことができれば、投資運用で生活するためには6,000万円程度でFIREすることが可能です。

このように投資額の4%の運用益を得られることをベースとして考えることで、大体の必要な資産額が算出できるので、自分自身の状況を踏まえて考えてみてください。

「FIRE」をするために必要な資産運用

それでは、最後にFIREを実現するための資産運用の考え方を紹介します。資産運用と一口で言っても、株式投資・投資信託・不動産投資・FX・NISAなど様々な種類があります。

FIREでは確実に積立を行い複利の力で運用益を増やしていく必要があるため、リスクが高い短期的な運用よりも、少額から始められ長期的に資金を増やしていける低リスクな資産運用の方を重視する必要があります

それを踏まえて、おすすめの資産運用方法2つを紹介します。

(1)投資信託(インデックスファンド)

投資信託では一つの銘柄だけでなく運用会社が様々な銘柄を合わせて運用を行うため、低リスクの分散投資を行うことができます。自分自身で銘柄の選定を行う手間を省きながら、少額から投資できるため低リスクの投資信託を選定すれば資産を増やしていくことが可能性が高まります。

(2)不動産投資

賃貸業を中心とした不動産投資では経営の手間を管理会社に委託することができるため、サラリーマンでも運営を行いやすい投資と言えます。マンションや戸建てを現金で購入することは難しいですが、サラリーマンの属性を使い、銀行の不動産ローンを利用できれば着実に物件数を増やしていくことも可能です。元手が少ない人でも銀行融資というレバレッジを利かすことで、長期的に資産を増やしていけるおすすめの運用方法と言えます。

このように少額から始められ、長期的に運用を行える商品を選定するようにしましょう。 また、FIREする年齢を逆算すると毎月どれだけの積立を行う必要があるのかを算出することができます。

長期的かつ安全な運用をベースとして考えるFIREでは、なるべく早くから投資を開始することが大切です。

まとめ

これまでご紹介した通り、FIREを実現するためには、まず必要な生活費を把握することが大切です。それをベースとして目標資産額を設定し、投資を長期的に行うことで確実にFIRE実現に繋がっていくでしょう。一方で投資で資産を増やしていくためには、ある程度の知識が必要です。自分自身で資産運用を行う自信が無い方はぜひ、投資とお金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーに相談してみてください。

この記事ことを執筆したファイナンシャルプランナー

倉知洋平(くらちようへい)
所属:株式会社マネープランナーズ