サントリーは11月1日、国産ウイスキーに関するメディア向けのセミナーを実施。サントリーウイスキーの100年の歴史を振り返るとともに、あらためて製造方法、「山崎」の特長などについて説明した。

  • サントリーは11月1日、ウイスキーづくりの歴史などを紹介した

■サントリーウイスキーの歴史

セミナーに登壇したのはバレーボール元日本代表選手である、サントリー スピリッツCo ウイスキー事業部の佐々木太一氏。同氏は選手生活の引退後、同社 営業職に従事しながらウイスキーに関する知識を深め、2011年にはウイスキー文化研究所認定「マスターオブウイスキー」を取得している。ちなみに2022年10月現在、マスターオブウイスキー取得者は全国に11名しかいないという。

  • サントリー スピリッツカンパニー ウイスキー事業部シニアスペシャリストの佐々木太一氏

佐々木氏は冒頭、サントリーウイスキーの歴史について紹介した。サントリー創業者の鳥井信治郎氏が京都郊外で日本初のモルトウイスキー蒸留所「山崎蒸溜所」に着工したのは1923年のこと。山崎の地を選んだ理由について、佐々木氏は「万葉の歌にも詠まれたほど水が良い。また桂川・宇治川・木津川の合流地点にあたり、濃い霧も立ち込める。スコットランドのようなウイスキーづくりに適した環境だった」と解説する。

  • 2023年に100周年のメモリアルイヤーを迎えるサントリー山崎蒸溜所 ※写真は同社ホームページから

山崎蒸溜所の竣工から5年が経ち、鳥井氏が自信を込めて世に送り出したのが「サントリーウイスキー 白札」(1929年発売)だった。スコッチウイスキーの再現を試みた本格的な商品だったが、しかし消費者からは「焦げ臭い」「煙臭い」と散々な評価を受ける。そこで日本人の味覚にあう味わいのウイスキーを新たに開発。これが現代に続くロングセラー商品の「サントリーウイスキー 角瓶」(1937年10月8日発売)となった。

  • 写真は、現在の「サントリーウイスキー 角瓶」 ※写真は同社ホームページから

■使用樽でも味わいが変わる

続いて、ウイスキーの基礎知識について。佐々木氏は「お酒と言われるものは9割9分、糖分からアルコールをつくります。それは果物あるいは穀物に含まれる糖分です。酵母に糖分を与えることで、アルコールと炭酸ガスを発生させています」と説明する。

たとえば、大麦麦芽を原料として仕込み・発酵させればビールに、芋 /麦 /米などを原料として仕込み・発酵させて1回蒸溜すれば焼酎に、大麦麦芽を原料として仕込み・発酵させて2回蒸溜して熟成させればモルトウイスキーになる、と佐々木氏。さらには、ブドウを原料として仕込み・発酵させればワインに、ブドウを原料として仕込み・発酵させて蒸溜して熟成させたらブランデーになる、と続けた。

ところでスコットランドでは蒸溜所の間で原酒を融通しあい、ブレンドすることで個性的なスコッチウイスキーをつくっている。しかし日本にはそうした文化がない。つまり個々の蒸溜所で多彩な原酒をつくり分ける必要がある。そこで山崎蒸溜所では『発酵層×ポットスチル×樽』の組み合わせを変えるなどして、原酒の個性を出しているという。

  • 発酵層は、木桶・ステンレスの2種類がある ※写真は同社ホームページから

  • ポットスチル(蒸溜釜)は8対16基あり、加熱方法も直火型と間接型(スチーム加熱式)がある ※写真は同社ホームページから

  • 樽にもホワイトオーク、ミズナラなど様々な材質があり、大きさもいろいろ。古樽なら前歴も異なる ※写真は同社ホームページから

ここで実際に、熟成の段階で異なる樽を使用したことで個性を引き出した、4種類の原酒を飲み比べる機会を得た。なるほど、色も香りもそれぞれ違う。たとえばホワイトオーク樽の原酒は、柔らかな香ばしさがあった。佐々木氏は「完熟のリンゴや洋ナシのような味わいがあり、穀物系の甘みがあります」と解説する。また、スパニッシュオーク樽はドライフルーツのような味わい。ほろ苦さもあり、余韻が長く続く。ミズナラ樽ではミルクキャラメルのような甘さも感じた。そしてワイン樽はクリーミーな甘さが特徴的だった。

  • (左上から時計回りに)ホワイトオーク樽の原酒、スパニッシュオーク樽の原酒、ミズナラ樽の原酒、山崎、ワイン樽の原酒。色も香りもまったく異なる

「シングルモルトウイスキー山崎」では、伝統のミズナラ樽貯蔵モルトと革新のワイン樽貯蔵モルトを使用している。佐々木氏は「赤みがかった濃い黄金色で、香りは苺とさくらんぼ、味は蜂蜜のようで滑らかな広がりがある。ほのかな酸味も感じます。甘いバニラ、シナモンのような、綺麗で心地良い余韻を残します」と説明した。

  • シングルモルトウイスキー山崎

最後は、フードペアリングについて。佐々木氏は「シングルモルトウイスキー山崎」には煮物、焼き鳥(タレ)、醤油や味噌など濃い味付けのもの、「シングルモルトウイスキー白州」には焼き魚、焼き鳥(塩)、ソーセージ、燻製など香りのあるものがオススメだとしながら「皆さんのご自宅でも、様々なマリアージュを試していただけたら」と話した。

  • シングルモルトウイスキー白州

  • チーズの味噌漬けは「山崎」とのペアリングに

  • 鰹のバジルソースは「白州」とのペアリングに

■ウイスキーの飲みかた

最後に、メディアからの質問に佐々木氏が回答した。

ウイスキーの味わいを純粋に楽しむためには、という質問には「ストレートで飲むか、水をちょっとだけ足すのが良いですね」と佐々木氏。その一方で、ウイスキーと水を1:1の割合で割るとウイスキーが香るようになる、とも説明する。

そもそも”水割り”という飲みかたは、アルコール耐性が弱い日本人が発明したものだそう。「スコットランド人は、食事中にはワインやビールを飲み、ウイスキーはウイスキーだけで楽しみます。でも日本人には、食中酒を楽しむ文化がありますね。そこで料理を引き立てる飲みかた、ハイボールや水割りが一般的になりました」(佐々木氏)。たとえば、唐揚げにはハイボールが合うと言われる。その理由は、油が通ったのどをハイボールがリセットしてくれるので次の料理にいきやすいから、と解説した。

美味しいハイボールのつくりかたについても紹介した。まずはグラスを氷で満たして冷やすこと。次にウイスキーを適量注ぎ、よくかき混ぜた後で減った氷を足す。冷えたソーダは氷に触れないように横からそっと注ぐと良い。ウイスキーとソーダは1:3~4を適量とする。そして炭酸ガスが逃げないようにマドラーでタテに1回混ぜたら完成。「アルコールのほうが軽いので、かき混ぜなくてもウイスキーが上がってきて、自然と混ざった状態になります」とのことだった。

  • フォトセッションにて