東京商工リサーチは11月1日、2022年(1~9月)の上場企業「早期・希望退職」実施状況を発表した。それによると、2022年1~9月に早期・希望退職者を募集した上場企業は33社、募集人数は5,000人で、コロナ禍の2020年以降では社数、募集人数ともに最小となった。

黒字企業の実施が54.5%

  • 主な上場企業(1~9月)希望・早期退職者募集状況(出典:東京商工リサーチWebサイト)

業種別にみた場合、アパレル・繊維製品と機械が各4社で最多。次いで電気機器、医薬品、情報通信が各3社と続いた。

直近の通期損益をみると、半数以上の18社(54.5%)が黒字であることが判明。黒字企業の実施が赤字企業を上回るのは、2019年以来3年ぶりという。増益企業では将来を見据えた人員構成の是正などが見られた一方、赤字企業ではアパレルや製造業が人件費削減に取り組んでおり、「実施企業の"二極化"が進んでいる」(同調査)。

上場企業の市場区分別にみると、大企業で構成されるプライム市場が18社(54.5%)と5割にとどまったのに対し、中堅企業で構成されるスタンダードが13社(39.3%)と約4割を占めた。

また、募集人数が判明した24社では100人未満の募集が16社(66.6%)に上り、従業員数が数100人規模の中堅企業による実施が多いことがわかった。

2022年の募集人数は、コロナ前の2019年(通年35社、1万1,351人)を下回る可能性も出てきたが、同調査では「春以降の急激な円安、資源高、ウクライナ情勢など、経済活動に大きな影響を及ぼす事態も生じている。このため、内需型産業を中心とした製造業や卸売業などでは、今後も希望退職を実施する可能性も残しており、まだ予断を許さない状況が続いている」と分析している。

調査対象は、希望・早期退職者募集の実施を情報開示し、具体的な内容を確認できた上場企業。実施が翌年以降の企業は除いており、原則、「会社情報に関する適時開示資料」(2022年9月30日公表分まで)に基づいている。