マウスコンピューターから、外付け水冷ユニットが付属するゲーミングノートPC「G-Tune H5-LC」が登場。高性能なCPUやディスクリートGPUを搭載しつつ、外付け水冷ユニットを利用することで優れた冷却性能を確保。静音性も高めている点が特徴だ。すでに発売中で、直販価格は349,800円から。
ノートPCでは珍しい、着脱式の外付け水冷ユニットを利用してCPUやGPUを冷却
ゲーミングノートPCは、近年のeスポーツの盛り上がりなどもあって、ノートPCの中でも注目度の高いカテゴリとなっている。そのゲーミングノートPCで求められるのは、やはり性能だ。ノートPCという限られたサイズの中で最大限の性能を発揮できるように、各社ともCPUやGPUをしっかり冷却して性能を引き出すためさまざまな工夫を行っている。
王道なのは、大型の放熱フィンや複数のヒートパイプを組み合わせた空冷システム、複数の内蔵ファンといったものだ。ただし絶対的な本体容積が足りないため、デスクトップPCの空冷システムと比べてどうしても冷却性能が劣る。また、ゲームプレイ中などCPUやGPUに高い負荷がかかると、冷却ファンが勢いよく回転して大きな動作音を発してしまう。こうした冷却性能や動作音という問題を解決するため、G-Tune H5-LC(以下、H5-LC)は外付け水冷ユニットを採用した。
デスクトップ型のハイエンドゲーミングPCでは、冷却性能に優れる水冷システムの採用は珍しくない。対してノートPCの場合は、サイズ的な制約や持ち運びを考慮して、水冷システムを持つ製品はあまり見かけない。そういった意味でも、H5-LCは大きなチャレンジと言えるだろう。
水冷ユニットは簡単に着脱可能
H5-LCの水冷システムの基本的な構造は、デスクトップPC向け水冷システムとほぼ同じだ。本体内部のCPUやGPUには水冷ヘッドが取り付けられており、本体後方の水冷ユニット接続コネクタにつながっている。そのコネクタに外付けの水冷ユニットを接続して冷却水を循環させながらCPUやGPUの熱を奪い、水冷ユニット内のラジエータとファンによって熱を放出する。
使用する冷却水としては、製品に付属する工業用精製水が推奨されている。水冷ユニットを専用ホースによって本体のコネクタに接続した状態で、冷却水を水冷ユニット内のタンクに注ぎ入れる。その後、内部の空気を抜くために冷却水を循環させたのち、規定量になるように冷却水を追加すれば準備完了。続いてH5-LCと水冷ユニットをBluetoothでペアリングして専用ツールで水冷ユニットと接続すれば、CPUやGPUが水冷可能となる。言葉で書くと、一連の準備作業はやや難しいようにも感じるが、分かりやすい解説動画が用意されているので迷わず進められるだろう。
この水冷システムで大きな特徴となるのが、簡単に着脱できる点だ。H5-LCはノートPCということで持ち運んで使うことも考えられるが、本体に接続したホースを抜き取るだけで持ち出せる。ホースを抜いた瞬間、PC側コネクタとホース側コネクタの両方に自動で栓がされるため、冷却水が漏れる心配がほぼない。実際に抜き差ししてみると、冷却水が数滴たれることはあったが、盛大に漏れることはまったくなかった。安心して着脱できる印象だ。
しかもBluetoothでペアリングしているため、一度外しても、再接続するとすぐに水冷ユニットが認識されて水冷が再開する。このあたりもなかなか利便性に優れるところだ。
ゲーミングノートPCとしてハイエンドクラスの基本スペック
水冷システムが特徴のH5-LCだが、ゲーミングノートPCとして重要なスペックも充実している。以下を見ると分かるように、CPUはCore i9-12900H、ディスクリートGPUはGeForce RTX 3070 Ti、メモリは標準で32GB、内蔵ストレージは容量1TBのPCIe 4.0 SSDと、ハイエンドクラスだ。優れた性能を求めるゲーマーにとっても納得の仕様だろう。
- ■G-Tune H5-LCの主なスペック
- CPU:Intel Core i9-12900H
- ディスクリートGPU:NVIDIA GeForce RTX 3070 Ti/GDDR6 8GB
- メモリ:DDR5-4800 32GB(16GB×2)
- ストレージ:1TB PCIe 4.0 SSD
- OS:Windows 11 Home 64bit
- ディスプレイ:15.6型、2,560×1,440ドット、240Hz
- カメラ:約100万画素
- 無線機能:Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)、Bluetooth 5.2
- 生体認証:顔認証カメラ
- インタフェース:Thunderbolt 4×1、USB 3.0 Type-A×2、USB 3.1 Gen2 Type-A×1、2.5G BASE-T LAN、HDMI、マイク入力、3.5mmヘッドセットジャックなど
- バッテリ駆動時間:約7.5時間
- サイズ・重量:約360.2×243.5×28mm・約2.27kg
ほかのマウスコンピューター製品と同様に、購入時のスペックカスタマイズにも対応する。例えば、メモリを最大64GBにしたり、内蔵ストレージを容量2TBの超高速PCIe 4.0 SSDにしたり、SSD×2基を搭載したりすることも可能だ。
ポート類は、左側面にUSB 3.1 Gen2 Type-A、マイク入力ジャック、ヘッドセットジャックを、背面に水冷ユニット接続コネクタ、Thunderbolt 4、HDMI、2.5G BASE-T LAN、電源コネクタを、右側面にSDカードスロット、USB 3.0 Type-A×2を配置。ゲーミングPCらしく、マウス利用時にケーブルがジャマにならないよう、水冷ユニットや外部ディスプレイ、LANケーブル、電源などは背面に接続するようになっている点はありがたい。
ネットワーク機能は、2.5G BASE-T LANを標準搭載。一般的なギガビットイーサネットではなく、より高速な2.5G BASE-T LANを搭載するのはうれしいところ。無線通信は、IEEE 802.11ax(Wi-Fi 6)準拠の無線LANと、Bluetooth 5.2を標準で備える。
Webカメラは約100万画素のため、フルHD撮影に対応しない点は残念。Windows Hello対応の顔認証カメラも標準搭載しており、手間なくWindowsにログオンできて便利だ。
リフレッシュレート240Hz対応の15.6型WQHD液晶
ディスプレイは、2,560×1,440ドット表示に対応する15.6型液晶だ。最大240Hzの高リフレッシュレート表示に対応しており、ゲームでもちらつきや残像が低減され、快適なプレイが可能だ。
パネルの種類は非公開だが、視点を大きく移動しても明るさや色合いの変化は少なく、十分な広さの視野角が確保されている。表面は非光沢処理(ノングレア)のため、外光の映り込みもほとんど感じられない。ゲームプレイ中の暗いシーンでも、映り込みが気になることはないだろう。
発色性能については特に言及がないものの、十分に鮮やかな発色。また、Dolby Visionをサポートしているため、コントラストの高いメリハリある映像を表示できる。このあたりも快適なゲームプレイにつながるはずだ。
キーボードはフルカラーバックライト内蔵
キーボードは主要キーのピッチが約18.8mmと、わずかにフルサイズに届かないものの、ほぼフルサイズと変わらない感覚だ。約2mmのキーストロークはノートPCとしてはなかなか深く、しっかりタイピングできる印象だった。メカニカルキースイッチを採用しているわけではないのだが、ゲーミングノートPCのキーボードとして打鍵感は悪くない。キーボードの仕様それほど詳細には公開されていないが、ゲーミングノートPCに求められる仕様は十分満たしている。
ゲーミングPCらしく、Per-KeyフルカラーLEDバックライトも搭載。オリジナルツールで発色や発光パターンを設定できるので、鮮やかなゲームプレイ環境を実現できる。このほかにも、本体手前にフルカラーLEDイルミネーションを用意しており、こうしたギミックはゲーミングPCらしい部分だ。
ただ、テンキーが少々気になった。15.6型ノートPCではテンキーを搭載する例が多いのだが、本体の横幅を考えると、テンキーを搭載するとキー配置が窮屈になる。実際、H5-LCも主要キーのキーピッチはフルサイズに届いていない。
Enterキーとテンキーが間を開けずに配置されており、Enterキー付近がかなり窮屈に感じられ、キーの押し間違えも発生しやすい。テンキーの有無は賛否が分かれるところだが、個人的にはテンキーレス仕様のキーボードを搭載してもらいたかったようにも思う。
ポインティングデバイスは大型のクリックボタン一体型タッチパッド。ゲーミングノートPCでは基本的に外付けマウスを利用するため、それほど使われないと思うが、操作性は良好だ。
水冷ユニットを使うと性能が向上し静音性も高まる
では、ベンチマークテストを通して水冷ユニットの効果をチェックしていこう。水冷ユニットはファンの回転数を40%、50%、60%から選べるが、今回は最大の60%に設定してテストを行った。
最初に3DmarkのTime Spyの結果。まずは内蔵空冷システムを利用した場合だが、十分に優れたスコアが得られた。このあたりはさすがCPUにCore i9-12900H、ディスクリートGPUにGeForce RTX 3070 Tiを搭載しているだけのことはある。
とはいえ、やはりベンチマークテストを通して非常に大きなファンの動作音や風切り音が聞こえ、かなりうるさく感じる。ベンチマークテスト実行時のCPUとGPUの温度推移を見ると、CPUは60度から90度の間を、GPUは大多数の部分で70度以上となっていた。
対して水冷ユニットを使ってみると、空冷システム時のスコアを上回った。そこまで大きな上昇ではないため、空冷システムもかなり優秀なのだが、それでも冷却性能は水冷システムのほうが上だ。CPUやGPUの性能をより高いレベルで引き出せているのだろう。
それは温度推移を見てもよく分かる。水冷システム利用時は、CPUの温度は40度から70度の間を、GPUは40度から55度ほどの間で推移と、空冷システム利用時よりもだいぶ低い。この結果からも、水冷システムの冷却性能の高さが見て取れる。
3DMarkではPort RoyalとSpeedWayもテストしたが、Time Spyと同様に水冷ユニット利用時のほうがスコアが上回った。
続いて、ゲームベンチマーク「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION Benchmark」の結果だ。こちらも空冷システムと水冷ユニットでテストしたが、やはり水冷ユニット利用時のほうが高スコアだった。H5-LCで快適にゲームをプレイしたいなら、積極的に水冷ユニットを利用するべきだろう。
そのほか、PCMark 10やCINEBENCH R23.0も、同じように水冷ユニット利用時のほうがスコアは高かった。
ところで、高負荷時の動作音だが、もちろん水冷ユニット利用時のほうが圧倒的に静かだ。空冷システムだと、いわゆる「爆音」という表現がぴったり。水冷ユニットを使うとそれほどうるさく感じず、これならゲーム中も冷却システムの音が気になることはなさそうだ。
残念ながら「静か」というほどではなく、水冷ユニットが本体のすぐそばにあるため、冷却液の循環ポンプや空冷ファンの動作音は耳に届く。冷却ファンは設定した回転数で常に動作し、温度状況に応じた回転数制御の仕組みがないので、低負荷でも高負荷でも同じような動作音となる。
空冷ユニットは低負荷時に無音に近いほど静かになる場合もあるため、低負荷時では水冷ユニットのほうがうるさいのだ。この点は惜しまれるところで、できれば水冷ユニットのファンも温度状況に応じて空冷ファンの回転数を制御できるようにして、さらなる静音化を追求してほしかった。
性能重視のゲーミングノートPCとして魅力的な製品
ここまで見てきたように、H5-LCはノートPCとしては珍しい外付け水冷ユニットでCPUやGPUを冷却することによって、CPUやGPUのパフォーマンスを最大限に引き出せることが確認できた。水冷ユニットを利用すれば、ゲームプレイなどの高負荷時でも冷却システムの動作音が小さくなり、プレイ環境も改善できる。
しかも、ハイエンドクラスのCPUやGPUを搭載するとともに、メモリや内蔵ストレージの容量、リフレッシュレート240Hz対応のWQHDディスプレイといったように、スペックも充実。価格はやや高いものの、それもスペックや水冷ユニットが付属することを考えれば不満は感じない。性能重視のゲーミングノートPCを探している人にとって非常に魅力的な製品であり、おすすめだ。