アイロボットジャパンは11月1日、ロボット掃除機の新モデル「ルンバ コンボ j7+」(以下、コンボ J7+)を発表しました。最大の特徴は、ゴミを吸引する掃除機能にプラスして水拭き機能を搭載したこと。しかも床材をセンシングして本体が変形することで、水拭き時にもカーペットやラグを濡らしません。

ロボット掃除機の説明ではあまり聞かない「変形」とはどういった機能? プレス向けの新製品発表会で実機をチェックしてきました。発売は11月11日、公式オンラインストアでの価格は159,800円です。

  • ルンバもとうとう水拭き可能に。「ルンバ コンボ j7+」という製品名に「+」が付いているのは、ゴミ自動収集機能を備えた「クリーンベース」付属モデルであることを意味します(2022年11月時点)。今後は水拭き対応モデルに「コンボ」と付いていくかも

  • コンボ j7+の本体サイズは33.9×8.7cm、重さは3.4kg。水拭き機能を搭載しない既存モデルのj7+と同じサイズと重さ。デザインもほぼ同じ。クリーンベースも、コンボ j7+とj7+は共通です

ロボット掃除機の水拭き機能は部屋が汚れる可能性も……?

ここ数年、各社のロボット掃除機は上位モデルの多くが床の水拭き機能を搭載した2in1タイプです。水拭きできるロボット掃除機は、基本的には本体裏面に水拭き用モップパーツを配置し、本体内の水タンクから水を供給しながら、常にモップを「ちょうど良い湿り具合」にして掃除します。この状態でロボット掃除機が床を走行すると、吸引掃除と同時に床拭きも行えるのです。

  • コンボ j7+の裏面(水拭き掃除モード時)。本体が床を移動するとき、グレーのモップ部分が床に接地して水拭き掃除

  • コンボ j7+の水タンクは容量210ml。56畳ほどのエリアを水拭きできる量とのこと

  • 水タンクは吸引したゴミを溜めるダスト容器と一体化した構造です。タンク上部の青いキャップ部分から水を補給します

意外とシンプルな構造の2in1ロボット掃除機ですが、もちろんデメリットもあります。大きいのは、「汚れたモップのままラグ(あるいはカーペット)を掃除すると、ラグが濡れたり汚れたり」する点です。

他社の2in1ロボット掃除機は、水拭き時はラグを掃除しないといった設定によってこれを回避しています。ただ、掃除できないエリアが生まれて「自動で部屋全体を清掃する」というロボット掃除機のコンセプトに反します。そこでアイロボットのコンボ j7+は、床をセンシングして、ラグ(あるいはカーペット)を掃除するときはモップを持ち上げて床に接地しないように変形する機構を採り入れました。

【動画】カーペット掃除の前に、床に接地していたモップ部分を持ち上げる(天面に移動)「パッドリフティングシステム」。動画の前半は、フローリングからカーペット掃除に移行するためにモップを天面にリフト。後半では、カーペットからフローリングに移動し、モップを天面から本体裏に降ろしています

  • 変形途中の状態を上下から見たところ。本体両側のアームを動かして、モップを本体下面から天面に移動させます

パッドリフティングシステムのもうひとつのメリットは、モップを装着・脱着しやすいところ。多くの2in1ロボット掃除機は、モップの付け外しに本体をひっくり返す必要があります。

一方でコンボ j7+は、掃除以外のときはモップ装着面が本体の天板に格納されているため、本体を裏返さずにモップを付けたり外したりできます。最近の高機能ロボット掃除機は重さが3kg以上あるものが多いので、水拭きのたびに裏返す必要がないのは魅力的。ちなみに、コンボ j7+でのモップを使った掃除は水拭きのみ。いまのところモップを使ったカラ拭きには対応していません。

  • モップの装着面を手で持ち上げて、簡単に付け外しできる専用モップ。モップは洗って繰り返し使えます(約30回)。残念ながら、使い捨てタイプのモップは用意されていませんが、将来的には追加される可能性もあります

新たな「iRobot OS」って?

コンボ j7+は、2022年2月に発売したロボット掃除機「ルンバ j7+」をベースにした製品です。j7+の大きなポイントはカメラ機能の強化。本体前面に搭載されたカメラで周囲の状況をセンシングし、床に落ちている靴下やコード、ペットの排泄物といった物体を個別に認識して回避しながら掃除します。ロボット掃除機によくある「床が散らかっているからロボット掃除機を動かせない」という問題が起きにくくなりました。

  • コンボ j7+に搭載されたカメラ。暗い場所ではライトも点灯します

j7+やコンボ j7+は、障害物の画像をアイロボットのクラウド上にアップロードし(ユーザーの任意)、障害物に対する挙動をAIが学習する仕組みを導入しています。フィードバックを蓄積することによって、世界中のルンバがより賢くなっていくわけです。

この操作は専用アプリ「iRobot Home」で行いますが、今回のコンボ j7+発表にあわせて、iRobot Homeアプリやルンバ自体(ハードウェア)のプラットフォームOSとなっていた「iRobot Genius」が、「iRobot OS」へと変わりました。iRobot OSはiRobot Geniusと同じく、ルンバや拭き掃除ロボット「ブラーバ」シリーズで共通のOSとなります。

  • iRobot OSに対応したアイロボットの製品ラインナップ。ただし、床の障害物を認識・回避して動く機能はj7シリーズにのみ適用されます

最新のiRobot Homeアプリでコンボ j7+を使うときは、「清掃時に拭き掃除もするか」「拭き掃除時の水分量」「走行回数(1あるいは2回走行)」など、エリアごとに細かな設定ができるようになっています。

  • iRobot Homeアプリの画面。今回のバージョンアップによって「進入禁止エリア」だけでなく、コンボ j7+を使うときに「拭き掃除禁止エリア(吸い込み掃除のみする)」も設定できるようになりました

新製品発表会では、アイロボットの会長兼最高経営責任者であるコリン・アングル氏がビデオ出演。iRobot OSについて「一昔前はハードウェアが重要でしたが、現在はソフトウェアが製品を決定づけています。アイロボットは将来的に掃除ロボットだけでなく、さまざまな製品に共通化したiRobot OSを適用したいと考えています。現在は具体的な製品や機能は未定ですが、新しいiRobot OSはその決意の表れです」と語りました。

  • 米国からオンラインビデオでリアルタイム出演した、アイロボット会長兼最高経営責任者のコリン・アングル氏

さまざまなメーカーが2in1タイプ(吸引掃除・拭き掃除)のロボット掃除機を発売するなか、アイロボットはずっと床拭きロボット「ブラーバ」シリーズとロボット掃除機「ルンバ」シリーズを利用するスタイルを貫いていました。今回、アイロボットからも2in1タイプのコンボ j7+が登場しましたが、ブラーバシリーズはこれからも販売を継続する予定です。

アイロボットはこの理由について、「ブラーバは床拭き専用機にならではの圧倒的な清掃力の高さ」を挙げます。今後は清掃力を重視するなら「ルンバ+ブラーバ」、省スペース性やコストパフォーマンスなどの効率重視なら「コンボ j7+」がよさそう。「ロボット掃除機といえばルンバ」というユーザーが多いなか、選択肢が広がったのは歓迎です。