アップルから、iPhone 14シリーズと同じパワフルなA15 Bionicチップを搭載するメディアストリーミングプレーヤー「Apple TV 4K」が登場します。11月4日の発売に先駆けて試すことができた新しいApple TV 4Kの活用術を紹介します。
iPhone 14と同じチップを内蔵するパワフルなメディアストリーミングプレーヤー
はじめに、Apple TV 4Kをまだ使ったことがない方のために、本機がどんなデバイスなのかを解説したいと思います。
Apple TV 4Kは、HDMI端子を搭載するテレビやモニターに接続して楽しむ、縦横約9cm、高さ約3cmの小さなボックス型メディアストリーミングプレーヤーです。薄型テレビなどのディスプレイ機器にはHDMIケーブルで接続します。ライバルであるアマゾンやグーグルはディスプレイ機器のHDMI端子に直接挿せるスティック型のメディアストリーミングプレーヤーも発売していますが、Apple TV 4Kはテレビサイドなどに設置する据え置き型デバイスです。
テレビ台の上などに置き場所を必要としますが、代わりにA15 Bionicチップの豊かなパフォーマンスを備えているため、多彩なコンテンツが扱えるだけでなく、動作がとても安定しています。筆者は、Apple Arcadeで配信されているゲームを大きな画面のテレビで遊びたい時にApple TV 4Kを活用しています。ゲームコンテンツは、大型のゲームコンソールに引けを取らずサクサクと動きます。筆者が使っているのは、A12 Bionicチップを採用する第2世代のApple TV 4K(2021年発売)ですが、それと比較すると新しいApple TV 4Kの方がゲームの動作は安定度が高いように感じました。
A15 Bionicチップによる恩恵は、CPU/GPUのパフォーマンスが向上するだけでなく、駆動に必要な電力が約30%も抑えられることから静音ファンレス設計になり、本体のサイズがひとまわりほど小さくなったことにも現れています。テレビの画面とテレビ台との間のスキマに置きやすくなりました。
新しい2022年のApple TV 4Kは、Wi-Fi専用モデルと、Wi-Fiに加えてイーサネットによる有線接続にも対応するモデルの2種類に分かれました。内蔵ストレージの容量は、Wi-Fi専用モデルが64GB、イーサネットも搭載するモデルが128GBです。無線通信が最新規格のWi-Fi 6に対応しているので、高速通信がすでに導入できている環境であれば、価格が19,800円とより安価なWi-Fi専用モデルを導入すればお得感があるでしょう。ゲームなど容量の大きなアプリをApple TV 4Kにたくさんダウンロードして楽しみたい人は、ストレージ容量が128GBに倍増し、価格を2021年モデルの64GBモデルと同じ23,800円に据え置いたWi-Fi+イーサネットモデルがおすすめです。
エンターテインメントが満載! Apple TV 4Kが「できること」
Apple TV 4Kが対応するエンターテインメントは多岐に渡ります。メインプラットフォームのtvOSにアプリを追加して、サービスやコンテンツを自由にカスタマイズできる仕様はiPhone、iPadにもよく似ています。
伊達にその名前に「4K」が付いているわけではなく、Apple TV+やNetflix、Amazonプライムビデオなど国内外の高画質4K対応VODサービスに広く対応するほか、YouTubeも見られます。4K動画は最大60fpsのHDRコンテンツに対応。HDRの規格については、最新のtvOS 16以降、今後徐々に対応コンテンツが増えることが期待されているHDR10+が含まれました。従来から対応するHDR10やドルビービジョン、放送コンテンツのスタンダードであるHLGまで広くカバーしています。
音楽再生もApple Musicのほか、Amazon MusicやSpotifyなどさまざまな配信プラットフォームのアプリをダウンロードして利用できます。iPhoneに保存した楽曲をAirPlay経由でApple TV 4Kに飛ばして聴くことも可能です。音声は、HDMIケーブルで接続しているテレビの内蔵スピーカーで聴く方法が最もシンプルですが、同じホームネットワークの中にあるHomePodスピーカーで聴いたり、テレビに接続しているサウンドバーで再生すると迫力がさらに高まります。
反対に、夜間に大きな音を出しづらい時間帯は、Bluetoothヘッドホン・イヤホンをApple TV 4Kにペアリングして「静かに大迫力の音を聴く」ことも可能です。
ゲームアプリの成果はユーザーのApple IDにリンクするので、屋外ではiPhoneでプレイしたゲームの続きを、帰宅後にApple TV 4Kで楽しむこともできます。Apple TV 4Kでは、PlayStationシリーズの「DualSense ワイヤレスコントローラー」など、さまざまなBluetooth対応のゲームコントローラーが使えます。
Apple TV 4Kは、HomeKitに対応する多種多様なスマートホームデバイスのハブ/コントローラーとしても機能します。アップルのほかにグーグルやアマゾンなども参加して仕様を決めたスマートホーム機器の新しい共通規格「Matter」も、今秋から本格的に認証プログラムを開始しています。今後は、Apple TV 4KをハブとしてMatter対応のスマートホームデバイスが遠隔操作可能になります。また、Wi-Fi+イーサネットモデルのApple TV 4Kは、Threadのメッシュネットワークの中でハブとして機能する点が、Wi-Fi専用モデルとの違いになります。
そして2021年秋には、アップルのデバイスを使って友だちや家族とFaceTimeアプリでビデオ通話をしながら、映像や音楽コンテンツを同時に楽しめる新機能「SharePlay」が始まり、Apple TV 4Kでも楽しめるようになりました。離れた場所にいる家族や友だちと、インターネットを介して同じ映画や音楽を賑やかに鑑賞する楽しみ方に最適です。その利用方法について、詳しくは「iPhone/iPadの新機能『SharePlay』、何ができる? どう使う?」を合わせて参照して下さい。
新しいApple TV 4KとtvOS 16は「何が変わった」?
新しいApple TV 4KはWi-Fi専用モデル、Wi-Fi+イーサネットモデルともに機能が進化したポイントは共通です。先述した通り、本体がコンパクトになったこと、HDR10+のコンテンツ再生に対応したことのほかに、もうひとつtvOS 16から「SiriのUIデザインと体験が進化」しています。
本体に付属するSiri Remote(リモコン)の側面にあるSiriボタンを押すと、テレビの画面にSiriへのコマンド入力が表示されます。検索を行うと、従来は画面の下1/3ぐらいのスペースを検索結果表示が占有してしまいましたが、新しいユーザーインターフェースでは画面右側のより少ないスペースに検索結果がタテに並び、表示がコンパクトになりました。
さらに、年末までに実施を予定するソフトウェアアップデートにより、Siri Remoteに対応するApple TV 4Kは、最大6人まで家族の声をSiriが聞き分けられるようになります。先にHomePodで実現している「声の識別設定」のような使い勝手になるものと思われます。ユーザープロフィールを変更しなくても、声を認識して「私へのおすすめ」をSiriが検索してくれるというから楽しみです。
ほかにも細かなところでは、HDMI 2.1aの規格以降からサポートされる「Quick Media Switching」という機能に、年末までに実施されるソフトウェアアップデート以後からApple TV 4Kが対応します。この機能により、異なるフレームレートで収録されている映像を続けて再生した際にも、合間に音声と映像の途切れやノイズが発生しなくなります。例えば、映画本編とは異なるフレームレートで収録されている予告編からの映像の切り替わりがスムーズになります。
21年モデルのオーナーもうらやむほど「お買い得」
そのほか、Apple TVの最新tvOS 16のアップデートの内容については、Appleのホームページでも発表されている通りです。
筆者は、特に「パーソナライズされた空間オーディオ」にApple TV 4Kが対応することに注目しました。iOS 16以降を搭載するiPhoneから設定した、ユーザー個人の空間オーディオプロファイルが、ユーザーのApple IDを介してApple TV 4Kにも共有されます。AirPodsシリーズをペアリングして空間オーディオ対応のコンテンツを再生する際に、サウンドの立体感が一段と増してくるのでおすすめです。
Apple TVの「設定」から「リモコンとデバイス」を選択し、「Bluetooth」デバイスを選んでから「AirPods」のメニューに入り、「パーソナライズされた空間オーディオ」を「オン」にします。
A15 Bionicの搭載により基本パフォーマンスが向上、ストレージ容量も増やしながら価格は据え置き、本体サイズもコンパクトになったApple TV 4Kは、まさしく今が絶好の買い時です。筆者は、所有しているApple TV 4Kの2021年モデルを1年間存分に使い込んできたし、とても愛着を持っているのですが、正直これから新しいモデルを買う人がうらやましいです。買い替えるべきか悩みます。