足が不自由な方にとっては、脱ぎ履きがしにくいというブーツ。

「福祉業界のオシャレ番長」こと、日本障がい者ファッション協会 代表理事の平林景さん(@KeiHirabayashi)が手がけた“バナナのようなブーツ”が「車いすユーザーじゃなくても欲しくなる」と注目を集めています。

以前に車椅子ユーザの方が、 「足に麻痺があるとブーツってすごく履きにくいんですよね。スリッポンみたいに簡単に脱ぎ履きできたら良いのに…」って言ってた。
簡単に脱ぎ履きか、、うん だったらブーツを、スリッポンの様にしちゃえばイイ♪ ジッパーを2~3本おろすだけでも、かなり楽に履ける(@KeiHirabayashiより引用)

  • (@KeiHirabayashiより引用)

車いすユーザーの方の声を受けて作ったという、このスリッポンのように履けて、バナナの皮のように広がったブーツは、その名も「banana」。ファスナーを全開にした状態を見れば、名前の由来が一目瞭然ですね。

  • (@KeiHirabayashiより引用)

一方で、履いたときのデザインはめちゃくちゃ斬新でおしゃれ!

足に麻痺があっても着脱がしやすい機能性を備えつつ、ファスナーがデザインのアクセントにもなっていますよね。

リプライや引用リツイートでは、「天才的発想ですね」「脱ぎ履きしやすいだけじゃなくデザインとして素敵すぎる」「車椅子ユーザーでないですが欲しくなります」「むしろ普通のブーツよりかっこええええ、機能美とはこの事か」と称賛の声が続出。この投稿は、10月27日時点で4.5万件もの「いいね」を集めました。

この画期的なブーツはどのようにして生まれたのでしょうか。「banana」を手がけた、投稿者の平林景さんにうかがいました。

「スリッポンのようなブーツ」投稿者に聞いてみた

――今回投稿されたブーツは、車いすユーザーの方に向けて開発されたデザインですが、そうでない方からも「かっこいい」「実用的」と多くの反響が寄せられていますね。

私たち日本障がい者ファッション協会は、障害があってもなくても、誰もがオシャレを楽しめる「NextUD(ネクストユニバーサルデザイン)」の発信を行なっています。今回の「banana」に寄せられたお声から、私たち日本障がい者ファッション協会が目指している世界そのものを感じました。大変ありがたいです。

――6ヵ所にジッパーを付けて、スリッポンのように履けるというアイデア、考案のきっかけを教えてください。

2022年9月27日、パリファッションウィーク期間中にパリ日本文化会館にて「WFR(Wheelchair Fashion Row)」というファッションショーを開催しました。

――今年9月に開催された、パリコレでのファッションショー動画がこちらですね。

今回のブーツ「banana」はWFR車椅子モデルが着脱しやすく、かつ脱げにくいもの、を目指してデザインし、「CENTRAL FOOTWEAR SERVICE」さんに製作していただきました。

――製作にあたり、デザインや履きやすさなど特にこだわったポイントをお聞かせください。

機能性としては、着脱しやすいことと脱げにくいことを同時に可能にすることを大切にしています。しかし機能性ばかりを優先させすぎると、オシャレとは言い難いものになってしまう恐れがあるので……。機能性とデザイン性のバランスについてはいつも気をつけています。

とはいえ、私たちだけでは分からないことが多いので、頼れる靴づくりのプロにいつも助けていただいています!

――平林さんは、日本障がい者ファッション協会の代表理事を務めていらっしゃいます。協会ではどのようなお取り組みをされているのでしょうか。

私たち日本障がい者ファッション協会は、障害の有無や性別、年齢に関係なく、誰もがオシャレを楽しめる「NextUD(ネクストユニバーサルデザイン)」の発信を行なっています。

「NextUD」の第1弾プロジェクトが、パリで開催したファッションショー、WFRでした。


男性向けのスカートや、防弾チョッキの素材を使った車いすユーザー向けのスーツなど、従来の概念にとらわれない洋服の数々を生み出している平林さん。

誰かの「不満」や「不便」を解消するファッションを提案することで、性別や障がいの有無にかかわらず、昨日よりも誰もが生きやすい社会を創る ― 平林さんの活動にはそんな願いが込められているような気がします。

なお、今回話題を集めたジッパーブーツの「banana」が販売開始の際は、WebまたはSNSでお知らせがあるそう。発売後の反響にも改めて注目ですね。