同位体分子計測を用いて、さまざまな天然ガス中のエタンや、発酵でできる生物由来のエタノールなどの分析を行ったところ、生物由来の分子はどれも同じような13C-13C二重置換度を持っていることが判明。それに対し、無機的に合成されたエタンは生物由来の分子よりも13C2H6の存在度が低いことが確認された。

また、天然ガスの中でも周囲に堆積性有機物がない場所で作られた、非生物起源の特殊なエタンを分析すると、実験室で合成されたエタンと同じように低い13C2H6の存在度を示すことも明らかにされた。

解析の結果、このような違いは、C-C結合の作られ方に由来することがわかったという。CH4を無機的に重合し炭化水素を合成する際には、13C-13C結合は作られにくい。その一方で、微生物の細胞の中で段階的な酵素反応によってC-C結合が作られる場合は可逆的な反応となり、その場合は13C-13C結合がより多く形成されることが確かめられたとする。

  • 天然ガス中エタンの13C-13C二重置換度の結果

    天然ガス中エタンの13C-13C二重置換度の結果。縦軸はエタンの13C-13C二重置換度、横軸はエタンの炭素の同位体比が示されている。実験室で無機的に合成されたエタンと、非生物起源といわれる天然ガス中エタンは、生物由来のエタノールや天然ガス中エタンに比べて13C2H6の存在度が明瞭に低い傾向が確認された (出所:東工大プレスリリースPDF)

また、天然ガスの中には特殊な微生物によりエタンが分解される場合がある。このとき、13C2H6は分解されにくく、エタンの中の13C2H6の存在度がさらに高まることも観察事実から推定されたという。これらの分析結果に基づくと、炭化水素の13C-13C結合度を精密に決定することによって、生物由来の分子を特定することができると考えられるとしており、今回の研究成果を用いれば、地球外で発見された有機分子が、生命活動の痕跡であるか否かを判別できるようになると研究チームでは説明する。

なお、今回開発された分析法は、エタンやエタノールなどの簡単な分子のみならずC-C結合を含むあらゆる有機分子へ適用することが可能だとのことで、この分析法を天然に存在するほかの有機分子にも適用範囲を広げてゆくことで、これまでに得られなかったさまざまな環境情報が得られることが期待されるとしている。

そのため、研究チームは今後、これからの惑星探査で採取される試料を実際に分析するため、さらに少ない試料量で今回と同じような分析精度が得られるよう、計測法を微量化していくとしており、それにより地球外環境で発見されている有機分子から生命の痕跡を探すことを目指すとしている。