第31回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『さよならの制限 ~末期がん患者 コロナ禍の面会~』(福井テレビ制作)が、11月2日(27:25~)にフジテレビで放送される。
新型コロナウイルスの流行で、全国に比べ感染状況が落ち着き医療提供体制も安定していた福井県の病院ですら、ほとんどが入院患者と家族の面会制限の措置をとっており、余命が限られている患者は家族とさえ十分に会えないまま亡くなっている。
番組では、末期がんの患者とその家族に密着。余命約1カ月と宣告され、「コロナさえなければ付き添ってあげられるのに」とつぶやく家族や、面会の制限時間が近づくと寂しくて涙を流す患者がいた。また、病院の制限のため全く会えない家族も…。人生最期にどうしても会いたいと願い続けた先に予想もしない展開が待っていた。
また、オンラインで面会する家族も。家族は画面越しで表情がわかっただけでもよかったと話す一方、病で苦しんでいるときに直接会って看病できない寂しさ、孤独を打ち明ける。
一方、病院に密着すると、面会を熱望する患者家族と感染防御の間で苦悩しながら院内の会議で意見をぶつけ合う医師や看護師がいた。面会に関する国や県の基準がなく、院内感染時の責任を病院が負うため、厳しい対応を取らざるを得ない現状が明らかになった。
この状況は福井県だけなのか。疑問に思い全国の病院を独自調査すると、病院が感染防御以外にも面会を厳しく制限している要因が浮かび上がった。
海外ではマスクの規制撤廃など社会の動きとともに、病院の面会制限を緩和している国もある。日本でも日常が戻りつつある中、患者と家族との最期の時間をどう確保するのか。コロナ禍での看取りの在り方を考える。
福井テレビの高橋祐太ディレクターは「感染が落ち着いているのに余命が短い患者と家族の面会すら制限されるのはなぜなのか。私の家族が末期がんを患ったことをきっかけに始めた取材でしたが、その理由は複雑なものでした。国や県など行政は、地域ごと、病院ごとに事情が違うため責任を追えないとし基準は作れないという見解です。面会によって感染が拡大した場合の責任は病院が負うため、厳しい対応を取らざるを得ないということが分かりました。今回、末期がんの患者と家族の限られた面会を取材しました。面会の別れ際、寂しいと涙する患者、なぜもっと会えないのかと医師に号泣しながら懇願する家族の姿を目の当たりにし、国内外の病院の状況やあらゆる専門家の見解を調べました。面会制限は小さい問題と捉えられがちで、病院任せとなり社会的な議論が不足しているのが現状です。もう後回しにはできない。社会全体で議論を始めるきっかけとなる番組を目指し制作しました」とコメントしている。