里見香奈女流王座に加藤桃子女流三段が挑戦する第12期リコー杯女流王座戦五番勝負(主催:株式会社リコー)の第1局が10月26日(水)に東京都文京区「ホテル椿山荘東京」で行われました。結果は91手で里見女流王座が勝ち、開幕戦を制しました。
両者によるタイトル戦は前期清麗戦以来で、今期の女流王座戦が11度目となります。清麗戦ではタイトルを奪われた加藤女流三段ですが、早くも借りを返す機会が巡ってきました。開幕の第1局は振り駒の結果、里見女流王座の先手となり、里見女流王座が得意の中飛車に進めます。本局の序盤は2021年の第3期清麗戦第5局で両者が戦った手順通りに進みました。
36手目の△7二飛で前例から離れます。以下銀交換から先手は馬を、後手は竜を作って、急に局面が激しくなりました。さらに加藤女流三段は自陣の角の活用も図ります。△9九角成と角を成り込むことができれば後手が指しやすくなりますが、ここで里見女流王座は▲6六歩と中空に歩を放ち、角道を止めました。△同角と取られる形ですが、それは▲7七銀が竜・角の両取りになるので、後手もうかつにはこの歩を取ることが出来ません。加藤女流三段は△2二玉と玉を安定させてから、△4六歩と先手陣に味を付けました。
対して里見女流王座は▲9二馬と馬を引きます。遠く4七に利かすことで先手陣の安全度が増しました。加藤女流三段はここで△6六角の切り札を出しますが、▲7七銀に△5九竜▲同金△3三角と角を引くようでは変調です。△6六角では▲7四歩と一度、馬筋を止める順がありました。▲同馬には△5九竜▲同金△7九飛が馬取りになるのが大きいのです。
△3三角には▲4五香と歩の裏から打つ手が厳しく入りました。対して△4七歩成▲4三香成△4八とは▲3三成香で先手勝勢です。加藤女流三段は△4四金打の非常手段で頑張りますが、▲同香△同金と金香交換になるのでは先手ペースは明らかです。
以下は攻め合いとなりましたが、69手目▲2五桂が好手です。後手陣を攻めるだけではなく、後手から先手玉頭を攻める筋を緩和する順にもなりました。以下の加藤女流三段は勝負手の連続で迫りますが、里見女流王座が的確に応じて開幕戦を飾りました。第2局は11月16日(水)に福島県郡山市「郡山ビューホテルアネックス」で行われます。
相崎修司(将棋情報局)
防衛に向けて幸先の良いスタートを切った里見女流王座(写真は第2期ヒューリック杯白玲戦七番勝負第7局のもの 提供:日本将棋連盟)