NVIDIA A100よりも性能が上とされる中国製GPU
TSMCがBiren Technologyから受託していたBiren GPUチップの1つは、7nmプロセスを用いた「BR100」で、各チップセットに770億トランジスタを搭載している。この製品がNVIDIAのA100より性能が優れているとの情報が世界規模で出回りはじめたことが、TSMCが製造停止に至った背景だと、業界関係者はみている。
著名なAIベンチマークであるMLPerfの最新結果(MLPerf Inference v2.1)によると、BR104が自然言語理解(BERT モデル)と画像分類の2つのベンチマークでシングルカードではトップクラスの性能と認定されたという。具体的には、BERTモデルでNVIDIA A100のシングルカード性能の1.58倍を達成し、その他のベンチマークでもA100の性能を超えたという。Biren Technologyは、この結果を大々的にWebサイトなどで宣伝したが、それが裏目に出て、TSMCが自主規制に踏み切ったとみられる。
米国商務省は、米国製スーパーコンピュータやAI向けの特定先端チップの対中輸出を事実上禁止(許可を必要とするが原則的には許可しない)するとしており、この中にA100が含まれており、この輸出制限は域外適用(米国以外の国々からの出荷に関しても適用)されることになっている。
中国顧客からの売り上げ減少が進むTSMC
それにしても、中国では、Huaweiの子会社であるHiSiliconといい、2019年に創設されたばかりのBiren Technologyといい、米国のトップレベルの最先端半導体チップと性能を競う企業が続々登場してきているのには驚かされる。米国は、これらの半導体が実際に台湾や中国で製造されぬように様々な規制をかけようとしている。
こうした規制の結果、TSMCの売り上げに占める中国からの売上比率は、Huawei/HiSiliconのKirinチップを受託生産していたころには20%台であったものが、2022年第3四半期には8%へと落ち込んでおり、今後も規制が続けば、さらに落ち込む可能性がある。