どのご家庭にも必ずひとつは常備されている日用品、ハサミ。
必需品として当たり前のように生活に溶け込んでいるせいか、特にハサミに何か強いこだわりを持っているという人はあまり多くないと思います。
しかし、現在ツイッターにはこんな素晴らしいハサミが登場し、多くのツイッターユーザーを次々に魅了しています。
#私の個性はきっと誰かにささる
— ハサミ作家✂佐藤聖也 (@f9u6yq) October 10, 2022
装飾的で実用的な文具ハサミ✂
一部の人にはぶっっっ刺さると願って🙏 pic.twitter.com/FzTARtI8dN
投稿主はハサミ作家の佐藤聖也(@f9u6yq)さんで、ファンタジーな世界観に溢れた芸術的なハサミを投稿されています。
いずれも驚くほど精巧で美しい装飾が施されているので、やはり観賞用に飾っておきたいところですが、動画を見てわかるとおり、切れ味も鋭くとても実用的。こんなにワクワクさせてくれるハサミ、正直初めて見ました。ほ、欲しい……!!
この美しすぎるハサミは多くの人を魅了し、ツイートは4.1万件ものいいねを獲得(10月24日時点)。たくさんのコメントも寄せられました。
「え、すご! すご!! めっちゃ切れるしかっこいい!」
「ファンタジーの武器の様なハサミで、日常のありふれたものを切る…このギャップもよいですね」
「ぶっ刺さるどころか貫通しました…。感動です」
「ファイナルファンタジーとコラボしたら面白い」
「す、素敵すぎる……何よりこれだけの装飾がされていてかつ実用性が高いというのが素晴らしい どんな芸術品でも、道具なら使いたい」
ツイ主さんに聞いてみた
多くの人のハートにぶっっっ刺さったこの素敵なハサミ。完成に至るまでの制作過程などについて、ツイ主の佐藤聖也さんに話をお聞きしました。
ーーこのような装飾的なハサミは珍しいと思うのですが、作ろうと思った理由やきっかけなどありましたらお聞かせください。
芸術系の専門学校に入学し、木工・ジュエリー・金属工芸を学ぶ中で特にジュエリーに没頭しました。着用のことなど考えずに大胆な装飾やサイズ、石留めなどをしているうちにファッションアイテムであることが自分に合っていないことに気づき、金属造形美を追及する表現媒体としてハサミを作ったことがきっかけです。
ーーハサミそれぞれのテーマなどありましたら教えていただけますか?
1枚目「ハートの女王のハサミ」。
不思議の国のアリスより、ハートの女王を題材に製作しました。
有りのままに振舞い悪役として嫌われるはずだった女王が愛されたその魅力を考えたときに、自分の欲求を通すためのワガママさや一貫したハートや赤への執着に対して、観客は自己を貫くその様に共感と憧れを感じるのだろうと思いました。
ハサミの持ち手の中央に「ハートの女王の強い自我」を表現するため、心の剣としてスペードを施し製作しました。ハートを逆さまにした形状に剣の意味があることにも運命性のようなものを感じながらデザインしました。
2枚目「ホルンの断面のハサミ」。
世界で一番美しい楽器、ホルンから着想を経て初めて製作したハサミになります。親指を入れる部分が回転するため開閉時に追従します。工芸を学びながら、人生で初めて製作したハサミになります。
3枚目「鮮やかな毒のハサミ」。
鮮やかで見るからに毒々しく、それでいて何故か美しいと思ってしまう危険な物質をイメージして制作しました。
ーーどのようにして作られているのでしょう? また、制作期間はどのくらいかかるのでしょうか?
独学で学んだ3DCADと3Dプリンターの技術を使って、試作を10~100程度作り、使用感やデザインのテストをします。 デザインが決まったら専門学校で学んだジュエリー製作の技術を生かし、型の製作から金属の流し込み磨きまでを行います。
デザイン、試作の過程で200~500時間かかっています。 デザインが決まってからの製作は1丁あたりおおよそ50時間前後だと思います。
ーー作る上で気をつけていることや、作っていて楽しいところなどをお聞かせいただけますか?
気を付けているのは実用性、装飾性、耐久性を極限まで高めるために試作や研究を繰り返している所です。
・3Dプリンターでの数十回の試作
・材料や工具を勉強して成分表や用途から使用感を予測して活用しているところ(ハサミ製作用の道具や材料は一般流通でほぼありません)
・美容師向けのハサミ研ぎ師の型から研ぎ方を教わったり、撮影させてもらった研ぎの動画を何回もコマ送りで再生したりなど。
学生のころはすべてが未経験だったのですべてに発見があり、作っているときもずっと楽しかったです。今はデザインを思いついた瞬間と完成した瞬間が当時の比にならない喜びを感じる反面、脳内イメージの100点から減点的に作業を俯瞰して眺めているので楽しさだけで作っていることはありません。
作り続けていると技術が成熟してくる部分もありますが、理想がより遠くて届きづらいことを明確に実感するようになりました。寿命までには満足できれば楽しいですね!
これだけの素晴らしい作品を生み出しながらも、まだまだ満足できていないという佐藤さん。作品は実際に販売されており、展示会なども予定されているということなので、気に入った方は引き続き動向をチェックしましょう!