S3 API互換かつ利用容量だけの支払いでTCOを削減するLyve Cloud

Seagateがクラウドストレージとデータ分析環境を提供、日本上陸前にキーマンに聞く

米シーゲイト・テクノロジーのラビ・ナイク氏

シーゲイトテクノロジー(Seagate)は近い将来日本でAmazon S3互換のクラウドストレージ「Lyve Cloud」とそのデータを活用した「Lyve Cloud Analytics」サービスを開始する。提供開始前に開発のキーマンである米シーゲイト・テクノロジー ストレージ・サービス担当最高情報責任者およびエグゼクティブ・バイス・プレジデントのラビ・ナイク氏にお話を伺った。

-- まず、日本でも提供を予定しているというLyve Cloudについて教えてください。

ラビ氏: Lyve Cloudは米国で二年ほど前に立ち上げたサービスで、AWS S3(API)互換のオブジェクトストレージです。パブリッククラウド上に展開しており、一年ほど前からAPAC地域でも展開を開始しています。

ご存じだと思いますがシーゲイトテクノロジーは40年にわたるストレージ業界でリーダーシップを築いており、HDDやSSDと同様にストレージサービスでもソリューションを展開して、企業におけるストレージの課題に対応すべく、シンプルで信頼性の高いストレージを提供しています。

  • Amazon S3互換のクラウドストレージ「Lyve Cloud」

-- ストレージ業界でリーダーというのは理解できますが、クラウドストレージ分野に参入するのは意外でした。どのような背景があり、どの辺に強みがあるのでしょうか?

ラビ氏: ストレージ業界においてシーゲイトというブランド価値があります。その上でお客様のストレージの要望に応えるだけでなく、HDDやSSDで培ったエンジニアリング能力やサポートが提供できます。

もう一つ、Lyve Cloudの強みとしてシンプルでわかりやすい料金体系も挙げられます。すでにクラウドを活用されている方はよく理解できると思いますが、クラウドストレージの料金というのはわかりにくいものです。データ量で課金されるのは当然ですが、API呼び出しにかかる料金、データを取り出すための料金、データを削除する料金、データを移動する料金……と様々な課金がされるというのが一般的です。

Lyve Cloudでは月間の平均データ量で課金される非常にシンプル料金体系になっており、顧客企業はクラウドストレージの大幅なTCO削減が期待できます。ただし、最低データ量は1PBです。

  • クラウドストレージの大幅なTCO削減が期待できる

-- 保持データ量だけで料金体系がわかりやすいですが、最低1PBというボリュームはターゲットはエンタープライズですね。日本ではどのように提供される予定でしょうか?

ラビ氏: 現時点で日本市場での展開をまだ行っていませんが、展開時は複数チャネルを利用する予定です。一つは我々自体のエンタープライズセールス部隊がありますので、これを使います。また、すでに販売パートナーとの深い関係がありますのでこれらのチャネル販売も行います。

最後にセルフサービスモデルという形でお客様がダイレクトに申しこんで利用するという形体も想定しています。

分析基盤も日本で提供予定、課題解決の補助を行うプロフェッショナルサービスも

-- 先日、Lyve Cloud Analyticsが発表されました。これはどのようなもので、どのように提供されるのでしょうか?

ラビ氏: Lyve Cloud Analyticsは先のLyve Cloudのデータを活用するための分析環境で、ストレージ、コンピュート、エンジニアリング、機械学習を包含したものです。膨大なデータを活用した分析・解析環境をフルスタックで提供します。

さらに我々のデータサイエンティストが訪問して課題を伺い、それに合った分析環境を実装するプロフェッショナルサービスも提供いたします。このチームには製造やAI、オートメーション等多岐にわたる専門知識を保有したメンバーが在籍しており、実装までにかかる期間を大きく削減するだけでなく、自動化を進めているので作業量を減少させることができます。自社で開発するよりも開発費用も抑えられるでしょう。

  • Lyve Cloudのデータを活用するための分析環境「Lyve Cloud Analytics」を発表

-- 日本でのサービス提供はいつ頃を考えていますか?

ラビ氏: 日本はLyve Cloud Analyticsをご利用されるであろう製造、AI、ゲーム、ハイテク産業などのデータドリブンな業種顧客が多い重要市場です。現在はいくつかの潜在顧客と話し合いをしている段階です。このように現在は調査中の段階ですが、シーゲートには、事業が実行可能と判断してから60日以内にサービスを立ち上げる能力があります。

残念ながら現時点ではまだいつサービス開始すると発表できる段階ではありませんが、状況を見て確固とした計画を確実に進めていきます。

-- 最後に少々毛色が変わりますが「データ爆発が起こる」と言われて数年経ちますが、Lyve Cloudがその解決に役立つと言えますか?

ラビ氏: 現在も近い将来もデータは指数関数的に増える状況にあり、ストレージの需要が増えるのは間違いありません。Lyve CloudはキャッシュとしてSSDも併用しますが、主として実装するのはHDDで、最新のものをいち早く取り入れます。

例えば当社はすでに(高密度記録に対応する)熱アシスト記録HDDを一部クラウドベンダーに提供していますが、それよりも新しい(世の中に出ていない容量の)HDDをLyve Cloudで利用します。

参考までに、持続可能なデータ環境への対応も、いち早く実行に移しており、現時点ですでに脱炭素という観点ではTOP 3%に入っております。資源の有効活用という観点もありHDDの回収とリサイクルも進めており、回収したHDDを再販やアルミ資源としても活用しています(参考記事はこちら)。