いわゆる“無印iPad”と呼ばれるスタンダードなiPadがモデルチェンジしました。デザイン変更など大幅な改良が施された一方で、最安モデルでも68,800円からという価格は「無印iPadとしては高くなったな…」とも感じます。ただ、上位モデルのiPad ProやiPad Airにはない新しいポイントもあり、新世代のスタンダードiPadとして意欲的な仕上がりだと感じました。
デザインは“ほぼiPad Air”、端子のUSB-C化で拡張性は大幅アップ
第10世代となるiPadは、丸いホームボタンを備える伝統のデザインをやめ、iPad ProやiPad Airと似たフラットなオールスクリーンデザインに一新したのがデザイン面での特徴です。外観は、現行のiPad Airと“うり二つ”といった印象で、両者を並べてみても違いが分からないほど。デザインが上位モデルと同等になって画面が少し大きくなったことは素直に喜ばしいと感じます。
デザインを変更したことで、無印iPadで初めてスピーカーが横置きでもステレオ対応になったのも見逃せません。音楽や映画はAirPodsなどのイヤホンで楽しむ人が増えたものの、カジュアルなYouTube動画やゲームは本体スピーカーで流す人も多く、ワイド感あふれるサウンドが楽しめるのはうれしいポイントといえます。
接続端子がUSB Type-Cになったことで、拡張性が高まったのも見逃せません。USB Type-C接続の機器が使えるようになるほか、市販のUSB Type-Cハブを使えばSDカードやUSBメモリーのデータを参照したり、HDMI接続の外部ディスプレイに接続できるので、グッとパソコンに近い活用ができるようになります。
注意したいのが、背面カメラがiPad Airと同等の性能に引き上げられたことで、カメラ部が出っ張っていること。出っ張りの部分は角があるので、ケースを装着しないと触れた部分にキズを付ける原因となりかねません。
iPadで初めて前面カメラが“横置き使用前提”に
iPad史上初の改良として、前面の超広角12MPカメラがこれまでの短辺側ではなく長辺側に搭載されたことが挙げられます。これまでのiPadでは、Web会議でiPadを横置きで使うとカメラが画面中央ではなくなり左端に寄ってしまうため、画面を見ながら会話すると視線がわずかに横を向いて不自然になりました。しかし、新しいiPadは横置き時にカメラが画面の中央に位置するため、視線が中央を向いた自然な印象になります。前面カメラは、自分の姿を常に中心に配置するセンターフレームにも対応しているので、Web会議で相手に与える印象もよくなるでしょう。
Apple Pencil、ペアリングは確かに面倒でお金もかかるが…
新しいiPadの発表時に議論を呼んだのが、Apple Pencilの仕様です。本体側面に磁力でくっつけるだけでペアリングやバッテリーの充電ができる第2世代のApple Pencilを採用したiPad Airとは異なり、背面のLightning端子経由でペアリングや充電を行う第1世代のApple Pencilが採用されました。新しいiPadでは、第2世代のApple Pencilは使えません。
新しいiPadの端子はiPad Airと同じくUSB Type-Cになったので、Apple Pencilを直接接続できなくなりました。そこで、iPadに付属するUSB Type-CケーブルとApple Pencilを接続する「USB-C - Apple Pencilアダプタ」(1,380円)が用意され、それを使って接続します。わざわざケーブルを接続するのは面倒ですが、ペアリングは数秒で終わります。
ちなみに、いったんペアリングを済ませたら、手持ちのiPhoneのLightning端子にApple Pencilを差し込めば、Apple Pencilが充電できます。iPhoneを持っていれば、わざわざUSB Type-Cケーブルやアダプタを取り出して充電する必要はありません。この点は覚えておきましょう。
「すでに第1世代のApple Pencilを持っている人は多く、その資産を新しいiPadでも使えるように」とのことでこの仕組みを採用したようですが、確かにアップルらしいスマートさには欠けます。ただ、この状況は将来改善される可能性があると感じました。
前面カメラがある側の側面には2つの磁石がこっそり埋め込まれており、何らかのデバイスを磁力で固定できるようになっていました。後述するカバー兼キーボード「Magic Keyboard Folio」の装着には関係ないようで、今後「USB Type-C接続の第3世代Apple Pencil」が登場し、ここに装着できるようになるのかもしれません。
Magic Keyboard Folioはキーボードが脱着できるのがポイント
先ほど少し触れましたが、純正のカバー兼キーボードとして用意している「Magic Keyboard Folio」、お値段は38,800円とかなり値が張るのですが、これがなかなかよくできていると感じました。
これまでのMagic KeyboardやSmart Keyboard Folioとは構造を一新し、「前面カバー&キーボード部」と「背面カバー&スタンド部」に分離できる2ピース構造にしています。これにより、「背面カバー&スタンド部だけを装着してiPadの手前にスペースを確保する」という使い方が可能になりました。iPadを使いながら書類や本を開いたり、Bluetoothキーボードを置いて使えるようになり、利便性が高まりました。これまでの純正キーボードは、キーボードを使わない時でも手前のスペースを占有してしまうのが気になったので、2ピース構造化は好ましい改良だと感じます。
ただ、背面スタンドは面ではなく線でiPadを支える構造なので、テーブルの後端を超えると後方にひっくり返ってしまいます。後方に壁のないデスクや、奥行きが短い新幹線のテーブルなどで使う際は注意が必要でしょう。
第10世代iPad、7万円近いプライスタグが悩ましいところですが、「iPad Airで好評のボディを採用しつつ、位置を変えた前面カメラやMagic Keyboard Folioなど、iPad AirやiPad Proにもない要素を盛り込んだ」点が評価できます。現状はスマートではないApple Pencilも、今後大化けする可能性を秘めています。新たなiPadのスタンダードとして、「ちょっと奮発してでも欲しい」と感じさせるモデルになりそうです。
M2搭載iPad Pro、ますますプロ御用達の内容に進化
新しいiPadと同時に、iPad Proも新型が登場します。最大の特徴が、MacBook Airなどと同じく最新のM2チップを搭載したこと。SafariでのWebブラウジングやゲームを楽しむ程度では無印iPadとの違いは分からないかもしれませんが、動画編集アプリで4K動画を何本も読み込んで編集したり、写真編集アプリで高度な編集をしたりと、プロの業務で使われる作業だと格段にパフォーマンスが変わってくるはずです。
M2チップを搭載したiPad Proだけに追加されたのが、「Apple Pencilによるポイント体験」。これは、Apple Pencilを画面に近づけると、最大12mmの高さからペン先の位置を検知し、プレビューが利用できる機能です。パソコンでマウスポインターを近づけた際の動作がiPadでも得られ、さまざまな作業がはかどると感じます。残念ながら、ポイント体験はM1チップ搭載のiPad Proでは非対応となるので、M2搭載iPad Pro限定のプレミアムな機能となります。