「メトロノーム付きの腕時計をレビューしません?」と編集部から依頼が。「は? メトロノーム付き?」 一瞬耳を疑いました。腕時計にメトロノームを入れる必要があるんでしょうか? ニッチすぎる。でも現物は見てみたい。

そこでさっそく機材を送ってもらうことに。編集部から届いた時計「SEIKOメトロノームウオッチ」(セイコーインスツル製)は、Standard LineとCasual Lineの2シリーズで展開しており、カラバリは全部で10種類。装着してみると、なんだ、普通の腕時計じゃないですか。

  • セイコー、メトロノームウオッチ

    装着してみたところ。見た目は普通の腕時計

でも文字板をよく見ると「NOTE(A・B♭)」、「PITCH(440・442・443)」、そして「40~304」の細かな数字と、なにやら小さな単語がたくさん並んでいます。えーと、時計回りにLargo、Lento、Adagio、Andante――? これは本気ですね。ちなみに、このメトロノームウオッチは、2022年度グッドデザイン賞の「グッドデザイン・ベスト100」に選ばれています。

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    文字板にこだわりの表記!

筆者はアマチュアのチェロ奏者として社会人オーケストラで20年間、チェロを弾いてきました。そこで弦楽器プレイヤーにとって、SEIKOメトロノームウオッチはどんな製品か、そんなニッチな視点も織り交ぜていきましょう。

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    Standard Lineのダークブラウン(SMW001A)は落ち着いた大人の雰囲気

外観は洒落たアナログ時計です。パッと見て、これにメトロノームが付いていると見抜く人はいないでしょう。ホワイト、ネイビー、ターコイズ、ピンクといったカラバリも上品です。男性のフォーマルにはもちろん、女性の本番衣装(カラードレス)にもマッチしそう。価格はいずれもオープンで、販売サイト(みらい奏楽舎)での価格は20,900円です。なお2022年10月22日現在、モノトーンの「SMW006A」が品切れ中で、次回入荷は未定となっています。

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    左がStandard Lineのキャメル(SMW003A)、右がCasual Lineのピンク(SMW002B)

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    左がStandard Lineのホワイト(SMW002A)、右がCasual Lineのブラック(SMW001B)

Standard Lineは、ダークブラウン(SMW001A)、ホワイト(SMW002A)、キャメル(SMW003A)、ネイビー(SMW004A)、ターコイズ(SMW005A)、モノトーン(SMW006A)の6色。

Casual Lineは、ブラック(SMW001B)、ピンク(SMW002B)、パープル(SMW003B)、ブルー(SMW004B)の4色です。

両シリーズとも、ケース径は10(厚さ)×36.5(横)×39.6(縦)mm、重さは45g。ケース素材はステンレス、風防はデュアルカーブハードレックス(強化ガラス)バンド素材はカーフ、日常生活用防水に対応しています。電池駆動(CR2016)となり、電池寿命は約2年です(メトロノーム機能テンポ120にて120秒間/日、基準音モード20秒/日で使用の場合)。

  • セイコー、メトロノームウオッチ
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    どれも良いデザイン。大人の男性がピンクを巻いても違和感はありません

音楽のおもな機能には、メトロノームと基準音の発音があります。基準音発音とは、チューニングの音を出す機能。吹奏楽用にはB♭(シのフラット)、オーケストラ用にはA(ラ)が出ます。基準ピッチ(周波数)は440Hz、442Hz、443Hzから選べるので、「うちの団体は少し高めのA=443Hzで活動してます」なんてケースにも対応できます。

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    あらためて文字板を確認

時計の左下のボタンを押すごとに、時計、メトロノーム、基準音発音――と、モードが切り替わります。メトロノームにしてみると、なるほど、分針が左右に往復運動を始めました。右上のボタンでテンポアップ、右下のボタンでテンポダウンです。

左上のボタンでサウンドをオンにしてみると、大きすぎず小さすぎず、ちょうど良いボリュームで電子音が鳴ります。音量の調節はできません。

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    442HzのAでチューニングしてみます

【動画】メトロノームウオッチの動きと各モード
(音声が流れます。ご注意ください)

メトロノームウオッチを腕に着けたまま、少し楽器を弾いてみました。弦楽器奏者は、音にビブラートをかけるときに左腕を揺らします。ビッグフェイスで重い腕時計だと、動きが妨げられるように感じることもありますが、このメトロノームウオッチは軽いため、装着したままでも快適に演奏できました。

そしてテンポを刻む電子音ですが、楽器を演奏していてもよく聞こえてきます。あえて言えば、拍の頭(1拍目)を知らせるベルの音を鳴らせると、もっと良かったです。

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    常に左耳の近くでメトロノームが聞こえる状態に

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    練習にも熱が入ります

さて、日常ではどんな使い方が考えられるでしょうか。筆者の場合、電車で移動中にポケットスコアを眺めながら、便利に使えました。メトロノームを無音にして、振り子の振動を見ながらテンポを確認します。言ってみれば1日中、メトロノームを身に着けるわけですから、普段の生活のちょっとしたスキ間も音楽の練習になりそうです。

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    どこでもテンポ確認

メトロノームでさらう(練習する)大切さについては、音楽をやっている人、やったことがある人なら、言うまでもないでしょう。速度は304bpm(beats per minute)まで設定できるので、付点や複付点などのややこしいリズムがある箇所はテンポを調整して、細かい音符で音価(楽譜上の長さ)をカウントしながら練習できます。

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    本番でも活用できる?

演奏の本番ではどうでしょう。例えばコンサートで、モーツァルトの『ディヴェルティメント ニ長調 K.136』を演奏するようなとき。チェロは冒頭からリハーサル通りのテンポを保って、平常心で(ここ大事)伴奏を刻む必要がありますが、とはいえ緊張からテンポアップしてしまう危険性もあります。

舞台袖で本番を待っている間、左右に揺れるメトロノームウオッチの針を見れば「第1楽章 Allegro」の速さをあらためて確認できます。なんなら無音にしておけば、舞台上の椅子に座ってからでも正しいテンポを確認できます。音が出てからはコンマス(コンサートマスター)を見ましょう。

ほかには、チェロのパートソロから始まるオーケストラ曲でも活用できそう。例えば、ドヴォルザークの交響曲第9番 ホ短調 作品95『新世界より』の冒頭は、速すぎず遅すぎず、ちょうど良いテンポで出たいもの。そんなときにもメトロノームウオッチのありがたさを実感します。

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    今回、アナログ時計の良さも再認識しました

チェロ奏者の目線で感じたことを紹介してきましたが、ほかの楽器奏者の参考にもなっていたら幸いです。この時代にスマートウオッチではなく、あえてアナログ時計の良さを残したまま機能を盛り込んだSEIKOメトロノームウオッチに、無二の魅力を感じました。音楽好きの家族、友人への贈り物にも良さそうです。