アドビは米国・ロサンゼルスと日本で、クリエイター向けの年次イベント「Adobo MAX 2022」を約3年ぶりにリアル開催。19日(日本時間20日)には、恒例の「Sneaks(スニークス)」も行われた。
スニークスは「アドビのエンジニアの“オスカー”」
スニークスは将来、アドビの製品に実装される……かもしれない、ちょっと驚きの新機能を、超先出しでチラ見せするイベント。
米国会場でのプレス向けラウンドテーブルの席で、アドビ リサーチ所長のギャビン・ミラー氏がスニークスについて語ったところによると、アドビではインターンなど若いエンジニアを中心に、常に600を超えるプロジェクトが進行しているという。
その中から論文になったり、特許の取得につながったりするものがあり、さらに社内の投票によって選ばれたほんのひと握りだけが、スニークスで発表できるとのこと。
「スニークスはエンジニアに脚光を当てるためのもので、エンジニアにとってはアドビのオスカー」とミラー氏。スニークスでの観客の反応がエンジニアのモチベーションとなって探求が続けられ、さらにプロダクトチームの厳しい審査を経たものだけが、製品に採用される。
「Adobo MAX 2022」のスニークスでは、俳優でコメディアンのケヴィン・ハート氏がホストを務め、以下の10の新機能が発表された。
写真の合成部分を一瞬でなじませる「Clever Composites」
その名の通り、賢い合成ができる技術。ベースとなる写真の状況を理解し、合成する切り抜き写真をその状況に適合させられる。
道幅にあわせてクルマの大きさを調整したり、明るさにあわせて人物に当たっている光を調整したり、といったことを簡単に、短時間で実現する。
動画に文字やイラストを自在に足せる「Instant Add」
動画に画像や文字、イラストなどを簡単に追加できる機能。踊っている人物のパーカーにロゴを追加すると、人物の動きにあわせてロゴが伸び縮みして自然に見せている。
また、カメラワークにかかわらず動かない文字やイラストを、人物の背景に置くといった使い方もできる。手間のかかる作業を簡略化する技術といえる。
フォントにオブジェクトが“くっつく”「Project Magnetic Type」
フォントにイラストなどのオブジェクトをくっつけて、簡単にロゴやタイトルを作成できる。マグネットのようにフォントにくっつけるだけで、オブジェクトにあわせて色や装飾が自動的に調整されるため、そのままテキストの編集も行える。
3D面に2Dの画像を簡単に足せる「Project Vector Edge」
Illustrator上で立体的なオブジェクトの形状を自動認識して、まるでシールを貼り付けるようにロゴなどを簡単に配置できる機能。たとえば箱の角の部分にロゴを貼ると、箱の形にあわせて自動的に折り曲げられる。平面のオブジェクトを手作業で立体面に合わせる手間を減らせる。
人物写真1枚でダンス動画を生成「Project Motion Mix」
モーション(動き)を設定することで、写真の人物を踊らせるというユニークな機能。人物を切り抜きして複数配置し、シンクロさせることができる。ビデオから動きを読み込んで写真に反映させることも可能。
動画の内容をキーワード検索する「Project Blink」
動画を検索できる機能。動画内の会話を自動的にテキスト化し、キーワード検索ができる。デモでは「Adobe MAX 2022」のキーノートを例に、登壇者の名前や話した内容、さらに映っているものキーワード検索し、該当の箇所をピックアップしたり、動画を編集したりする様子が紹介された。
なおこの機能は先端技術の一部を披露するサイト「Adobe Labs」で試すことができる。
写真を3D変換できる「Artistic Scenes」
2Dの写真を3Dに変換。1枚の写真から3Dのシーンを作り、そのシーンにスケッチ風、点描風などといったフィルタを適応できる。たとえば城の写真があれば、そこから立体モデルを作り出し、360度動かして眺めることもできる。
写真に写っていない部分を作り出せる「Project All of Me」
写真に写っていない部分を自動生成する機能。ウエストアップの写真から全身写真を作り出せるだけでなく、コンテンツにあわせた塗りつぶしが可能。
また、持っているバッグを消して背景で塗りつぶしたり、服装の色や柄も変えたりできる。
360°のVRデータを写真から生み出す「Project Beyond the Seen」
写真から360度のVRデータをワンボタンで作成。オフィスの写真からオフィス空間を作り出せる。空間を作ることで、配置したミラー素材のオブジェクトの反射にもそれが反映された。
写真の中の影をあやつる「Project Made In The Shade」
オブジェクトの影を生成し、それを自由に動かせる。クルマのような複雑な構造のモノにも、後から足した3Dの標識の影をリアルに反映。まるで太陽を動かすかのように、影の向き、大きさを自由に配置することができる。