価格の上昇など様々な理由から、スマートフォンの買い替えサイクルは以前よりも長期化していると言われています。スマートフォンを選ぶ上で、デザインやスペック、カメラ性能などで納得の行く物を選ぶことももちろん大切ですが、決して安くない買い物である以上、「長期化した買い替えサイクルに耐えうる製品か」という見方も重要です。
ハードウェアとしてのスマートフォンの耐久性は、フォルダブルディスプレイのような特殊な例を除けばさほど問題にならず、実質的に寿命を左右するのはソフトウェアとなるでしょう。今回は、長く使う機種を選ぶために重要なAndroidスマートフォンのアップデート事情について解説します。
スマートフォンの買い替えサイクルは平均3年以上に長期化している
スマートフォンユーザーの平均的な買い替え周期は年々伸びていく傾向にあり、2022年現在は3年以上使うユーザーも少なくないようです。たとえば、7月にOPPO(オウガ・ジャパン)が公開したアンケート調査の結果では、平均39.1カ月という結果が出ています。
理由としては、まずコロナ禍による世界的な混乱の影響を受けた部品調達と物流の両面のコストアップや円安の進行など、世界経済の影響を受けてスマートフォンの高価格化が進んでいることが挙げられます。そして、スマートフォンの進化のスピードが数年前と比べれば鈍化し、少し古くなった機種でも最新機種と比べてさほど不満なく使える状況になってきたことも理由でしょう。
加えて、日本市場特有の事情としてスマートフォンの販売方式や割引を巡る市場環境の変化の影響もあります。数年前までは通信キャリアを通じて分割払いで端末を買うのが当たり前で、その分割回数と同じだけの月額割引が付きました。もっと分かりやすく言えば、「2年使うと分割払いは終わるけど割引も終わるから、そのまま使い続けても次の機種に買い替えても毎月の支払額はほぼ変わらない」という状況でした。
このビジネスモデルが崩れた今となっては、本来の端末価格が直にユーザーの財布に響くようになり、そこに「古いスマホでも全然使える」という状況が重なれば、買い替えが鈍るのも当然の動きといえます。
長く使うつもりなら「アップデートを継続して受けられるか」が重要
「2~3年前の機種でも十分快適に使えているし、値上げも厳しいから長く大切に使おう」という考えは悪くない、いや、むしろ昨今の環境意識の高まりからすれば良いことかもしれません。しかし、「ガラケーの頃は5年、10年と同じ機種を使い続ける人もいたし、スマートフォンでもそう出来るはず」と考えるのは早計です。
インターネットに常時接続される上に個人情報も多々含まれるスマートフォンには様々なセキュリティリスクがあるので、ハードウェアはともかく、ソフトウェアまで古いまま使い続けるのは危険です。
また、安心・安全の話に限らず、より実感しやすい利便性の面でも壁があります。古くなったOSのスマートフォンでは、いつも使っていたアプリがある日突然使えなくなる可能性があります。技術的な問題やサポート上の問題など理由はさまざまですが、「私は古いスマホで十分」と思っていても、スマートフォンの仕組み上、そもそも“現状維持”のまま末永く使っていけるとは限らないのです。
一方で、発売時点のソフトウェアのまま、古びていくのを待つだけではないのもスマートフォンの特徴です。OSアップデートやセキュリティアップデートという仕組みがあり、メーカーや携帯キャリアから不定期に配信される最新版のソフトウェアを受け取ってバージョンアップしていけば、より長く安全に使えますし、時には便利な新機能が追加されることもあります。
これらのアップデートは年単位で行われるものなので、ユーザーからすれば「長くアップデートをしてもらえる機種かどうか」を見極めるのは難しいことです。実際、初期のAndroidスマートフォンでは同時期に同じキャリアから発売された機種を買っても、わずかなスペックの差で半年後や1年後にOSバージョンアップを受けられるかどうかの明暗がはっきりと分かれてしまったケースもありました。
しかし、現在ではそのような不安を払拭するべく、「アップデート保証」を明言するメーカーも増えています。たとえばGoogleのPixelシリーズなら、OSアップデートは発売から3年間、セキュリティアップデートは発売から5年間継続すると宣言されています。
長く大切に使うつもりであれば、このようなアップデート保証のあるメーカーの機種を選ぶと安心でしょう。
わかりやすい判断基準としては「メーカーのアップデート保証」に注目
スマートフォンメーカーのビジネスモデルを考えると、通信契約のような継続課金ではなく売り切りの物販である以上、発売後も開発コストをかけて無償でサービスを提供し続けることになる長期的なソフトウェアアップデートとは相性が悪い面もあり、かつては消極的なメーカーも多かったように思います。
また、ハード・ソフトともに1社で完結するAppleのiPhoneとは事情が異なり、OSはGoogle、SoCはQualcommというように端末メーカー内だけですべてをコントロールできるわけではないAndroidでは、将来的なアップデートの約束をすること自体の難しさもあります。メーカーにアップデートの意思があっても、その端末に搭載しているSoCがAndroid OSの新バージョンに対応できないというような事態も起こり得るのです。
しかし、GoogleのAndroid Oneブランド(海外では2014年、日本では2016年に開始)のようなアップデート保証という取り組みがユーザーに歓迎され、求められていった結果、同ブランド内の買い替えに限らず広くユーザーを獲得できるような価値を付けられる先行投資として、アップデート保証制度の導入に踏み切るメーカーが年々増えています。
アップデート保証を設けている代表的な例としては、まず先にも触れたGoogleのPixelシリーズがあります。Pixel 5a (5G)までは発売から3年間の保証でしたが、Pixel 6以降はOSアップデートが3年間、セキュリティアップデートは5年間に延長されました。
自らがOSベンダーであり、Pixel 6以降の機種ではSoCも独自品(Google Tensor)となったため、一般のAndroidスマートフォンメーカーとは違いAppleのような垂直統合を実現できており、アップデート保証という不確かな将来の約束を手堅く実行しやすいメーカーといえます。
国内メーカーではシャープが比較的早く、2017年のAQUOS Rを皮切りにアップデート保証を取り入れました。発売から2年間、最大2回のOSアップデートを確約しており、現行機種で言えばフラグシップモデルのAQUOS R7に限らず、ミドルレンジのAQUOS sense7/sense7 plusやエントリーモデルのAQUOS wish2も対象。性能的に余裕があり長期間サポートしやすいハイエンド機に限らず、手頃な価格帯の機種でも同じように対応している点は魅力です。
海外メーカーでは、サムスン電子のGalaxyシリーズは特筆すべき例です。なんと4世代のOSアップデートと5年間のセキュリティアップデートを保証しており、メジャーアップデートに関しては本家GoogleのPixelシリーズよりも長く面倒を見てくれるということになります。
全機種ではなくハイエンド機を中心とした一部機種が対象ではありますが、約25万円のGalaxy Z Fold4のような高価な折りたたみ端末も提供しているメーカーですから、思い切ってそのような機種を買っても1~2年でアップデートを打ち切られてしまう心配がないという安心感は大きいでしょう。
また、長期間のアップデートを宣言していないメーカーでも、「Android Enterprise Recommended」(AER)を参照するとある程度の目安になります。
AERは元々、ビジネス利用に適したAndroid端末をGoogleが一定の基準で審査・認定する制度です。セキュリティや企業向けの管理機能などと並んで、OSバージョンアップ(最低1回)とセキュリティアップデートの継続が条件に含まれており、実質的なアップデート保証とも言えます。
ポイントをおさらいすると、Androidの機種選びの際はOSアップデートの対応がどうなっているのかもぜひチェックしておきましょう。メーカーのアップデート保証やAERのほか、同じメーカー(できれば同じシリーズや価格帯)の過去機種のアップデート状況を見てみるのも参考になります。
また、一般論としてはスペックに余裕がある機種の方が将来的に新バージョンのOSに対応しやすいです。長く使うことを考えるなら、予算内で少し性能が高めの機種を選んだり、安売りされていても発売から1年以上経っているような機種を避けたりといった工夫でも、長く使える可能性を上げられます。