小学館では、全国の小学生を対象にしたプログラミング大会「ゼロワングランドスラム」を展開している。今年(2022年)春に実施した第1回大会では2,000人の子どもたちがエントリーし、大盛況のうちに終了したという。小学館がプログラミング大会を運営する狙いはどこにあるのだろう?

オンラインで10月17日に開催された、未来のプログラミング教育を共創する「コエテコEXPO2022」から、関係者が登壇した当該セッションの模様をお伝えしよう。

■なぜ小学館がプログラミング大会を?

セッションに登壇したのは、小学館 ユニバーサルメディア事業局の永川大祐氏。同社では、小学館集英社プロダクション、テレビ東京、デジタル・アドバタイジング・コンソーシアム(DAC)と共同でゼロワングランドスラムを運営する。大会の主催はジュニアプログラミング教育機構。そもそも、小学館ではなぜ子どもたちのプログラミング大会に関わることになったのだろうか。

  • ゼロワングランドスラムの運営体制について

冒頭、永川氏は全国にGIGAスクール構想が広がる一方で、プログラミング教室に通える子どもは都市部に偏るなど、地域間格差が広がりつつある現状を説明する。またプログラミングを学ぶ小学生の8割は男子であり、男女差も出てきた。こうした問題を指摘したうえで「これまでも小学館は、子どもたちのワクワク感に寄り添ってコンテンツを作ってきました。そこでプログラミングに関しても、地域差、ジェンダーギャップを埋めるような取り組みができるのではないかと考えたんです」と話す。

さらには、子どもたちの『プログラミングは難しそう』といった苦手意識も克服させてあげたい、と永川氏。小学館が持っている同社ならではのコンテンツ力を最大限に活用して、エンタメの側面からもアプローチを試みることで「多くの子どもたちが分け隔てなく、楽しみながら学べる場の提供を目指しました」と話す。

  • さまざまな課題を解決するプログラミング競技大会に

コロナ禍の影響もありリアルの大会からオンライン開催に変更を余儀なくされたものの、2021年12月に予選をスタートした「ゼロワングランドスラム 第1回大会」には2,000人の子どもたちがエントリーし、2022年2月にブロック大会、3月に決勝大会を開催した。初回ということで、地域差、ジェンダーギャップはまだ解消できていないが、このあたりは「今後の課題」(永川氏)としている。

  • ゼロワングランドスラム 第1回大会について

第2回大会は2023年夏に予選をスタートし、秋にリアルの会場で大会を開催したい考え。将来的には「大会からヒーロー、ヒロインが生まれ、ゆくゆくは有名クリエイターになる、テック企業からスカウトを受ける、人気アプリの開発者になる、といったところまで持っていければ」と話す。

大会を運営するにあたり気を付けていることは「一部のスーパーキッズだけの大会にしたくない。全国の子どもに『自分も参加したら活躍できそう』と思ってもらえることを最重要視しています」と永川氏。また、できるだけ保護者を巻き込み、家庭でも子どものチャレンジを後押ししてもらえる環境づくりを意識していくと話していた。

■友だちと参加できる?

このあと永川氏は、セッション視聴者からオンラインで寄せられた質問に回答した。

――第2回大会の参加費用は? 友だちと参加することはできるのか?

費用に関しては第1回と同様、完全無料です。そして友だちとチームを組んでエントリーできるか、というご質問ですが、たとえば都心部であれば可能なのかも知れません。でも地方になると「このレベル感で参加したい」という子どもが3人集まるか、というところで難しさを感じています。それが逆に参加のハードルを上げてしまうことにもなりかねない。そこで第2回大会も、基本的には1人ずつエントリーしていただく形になると思います。運営側としては、第1回大会よりも”チーム感”を高められるよう、工夫して運営していきたいと考えています。