今春(2022年)から、高校1年生は必修科目として「情報I」に取り組んでいる。彼女ら彼らが大学受験をむかえる2025年以降は、大学入学共通テストでも「情報I」が原則として課されていく方針だ。その狙いはどこにあるのだろう? また今後は入試会場にもパソコンが導入されるのだろうか?
オンラインで10月17日に開催された民間プログラミング教育カンファレンス「コエテコEXPO2022」において、文部科学省で初等中等教育局の視学委員を務める鹿野利春氏が解説した。
■「情報I」導入の背景
「情報I」は、「情報デザイン」「プログラミング」「データの活用」などを用いて『問題の発見・解決』を目指していく新科目だ。鹿野氏は「情報Iは高校生の全員が学ぶ。やがて国民的素養にしていく、ということです」と話す。なお「情報I」をベースにした発展的な科目「情報II」も設置される。
では「情報」を学ぶことで、何が変わるのだろうか。鹿野氏は「たとえば、お弁当屋さんなら広報、集客、注文がWebやSNSでできるようになります。ラーメン屋さんなら、過去のデータを分析することで”明日は何杯仕込むべきか”を判断して食品ロスをなくす。一般の人もプログラミングを日常のツールとして使うことで、細かなことは全て自動化できるようになります。生産性が向上することで、世の中の形が変わり、社会の常識、暮らしが変わる。人は、よりそれぞれの得意分野で活躍できるようになるでしょう」と解説する。
新しい学習指導要領では、従来通り「知識・技能」「人間性など」を育成するほか、すべての教科において「思考力・判断力・表現力など」を伸ばすことにも注力する。「情報I」でもその流れに沿った教育方針が課される。
前述の通り2025年以降は大学入試に「情報I」が加わることで、受験科目としては従来の5教科7科目から6教科8科目へと変わる。入試ではプログラミングも出題される。ちなみに独立行政法人 大学入試センターでは、すでにWeb上に「情報I」のサンプル問題を公表している。
たくさんの業界関係者も視聴した今回の教育カンファレンス。質疑応答で寄せられた質問に、鹿野氏が回答した。
―――どのくらいの大学で、実際に「情報I」の入試が採用されそうか?
まず、国立大学協会が「情報I」を入試対象にすると表明しています。その背景については公表している大学、していない大学があります。私立なら、早稲田大学が採用を決めました。私立大学では、理事会を経てものごとを決定することが多い。したがって、まだ国立大学ほど方向性がはっきりとはしていない私立も多いようです。
―――小中学校向けの民間プログラミング教室に期待したいことは?
是非、楽しくやっていただきたい。子どもによっては、どんどん伸びていく子もいます。たとえば『国際大会を目指して、レベルの高いことやるよ』みたいなことがあっても良いのではないでしょうか。いわゆる習い事として、英語とかピアノとか楽器とかと同じような形で、プログラミングをやっていくと良いと思います。プログラミングでは、実際にモノを作ったり、動かしたりできますし、将来的には大学での学び、その先の就職にも繋がる。習い事として他のものと同様か、あるいはそれ以上の期待を持って良いのかなと思っています。
―――入試会場のイメージについて。ペーパー試験のほか、デジタルでの回答も発生する?
大学を目指す全員にやっていただきたいということで、まずは他のセンター試験と同様にペーパー試験から始めます。(将来的に)デジタルでやるときには機材が必要になるでしょう。今後、大学入試自体もデジタル化が進み、コンピューターを使って回答していく時代になります。だから入試の「情報I」だけがデジタルになるということではなく、全ての教科がデジタル的な受験に向かっていく。そのなかで「情報I」は、より実践的な形になると考えています。ですが取り敢えず、現在の高校1年生が受験する頃は、マークシート式のペーパー試験となります。