今回の研究では、輝石の結晶軸に対し、どの方向からガンマ線が入射しているのかを正確に定めることが最も重要だったという。同じ結晶でも、薄片の向きによって吸収ピークの値が大きく変化するからだ。そのため研究チームはまず、輝石のX線回折実験を数多く行うことにし、結晶方位を正確に確認した輝石の薄片を多数製作することにしたという。

そして製作された薄片結晶のFeイオンの状態が、メスバウアー分光法を用いて分析されたところ、Ca含有量が50%程度の単斜輝石の結晶において、M1席にあるFeイオンのメスバウアーピーク比を決めるテンソル値が、Feの含有量とは無関係に一定であること、Ca固溶量によって変化することが明らかにされた。

地球科学の分野では、輝石の物性解明は大きな課題であり、今回の研究により、その1つが明らかにされたこととなると研究チームでは説明するほか、鉱物薄片を用いたメスバウアー分光法で、Feの詳しい分析を行っている研究者にとっては、実用的なデータとなるとする。ただし、今回の研究ではCaに富む単斜輝石のM1席については明らかにできたが、M2席の同様のテンソル量については、明快な答えには至らなかったとしており、今後、M2席の強度テンソルを明らかにするべく、継続的にこの課題に取り組んでいくとしている。