岡山市内で開催されている国際現代美術展「岡山芸術交流 OKAYAMA ART SUMMIT」。前編では、展示の概要やオープニングセレモニーなどの様子をレポートしましたが、今回は展示会場となっている10ケ所の場所や見所についてご紹介します。
メイン会場は「旧内山下小学校」
オープニングセレモニーも行われたメインの会場は「旧内山下小学校」です。理科準備室や音楽室など、もともとは教室だった部屋が主な展示場所として使われており、写真・映像・絵画と、教室ごとに違ったアートの世界が広がっています。
教室だけではなく、中庭や校庭、体育館やプールにも展示がされているので、見逃すことがないよう要注意です。体育館にある作品は、リクリット・ティラヴァーニャさんによる『無題2017 (オイル ドラム ステージ)』や、実際に滑って遊ぶこともできる曽根裕さんの『アミューズメント・ロマーナ』など。ステージでは期間中に100組以上のアーティストによるパフォーマンスも行われる予定です。
校庭では、岡山のご当地グルメ「えびめし」を使ったメニューが提供されています。料理を担当するのは、地元の老舗飲食店である「キッチンかいぞく」。
一見木製かと思われる器は、伝統工芸品である伊勢﨑州さんの備前焼が使われ、蓋はスミス一三省吾さんと木口ディアンドレさんが手がけた作品で、県の特産品である「烏城彫(うじょうぼり)」という工芸品です。アートと岡山の食を同時に楽しむことができますよ。
「天神山文化プラザ」は岡山県民の身近な文化拠点
「天神山文化プラザ」では、全会場の中で最多22組のアーティストの作品を見ることができます。
こちらはアーティスティックディレクターも務めるリクリットさんが手がけたインデックス展。「見出し」の意味を持つインデックスの言葉通り、今回の美術展全体を網羅的に案内するような場所となっています。
まずここで自分の感性にピンとくるアーティストを探してみるのも、楽しみ方のひとつ。ただ、最初に訪れなければいけないというルールはありません。全ての展示会場を巡ったあとにインデックスを見て、総復習のように楽しむという方法もあります。
常設展も同時に楽しめる「岡山市立オリエント美術館」
「岡山市立オリエント美術館」は、オリエント世界の考古・美術・民俗資料を展示している施設です。岡山芸術交流の開催中には、本展のアーティスト5名の作品と資料を一緒に楽しむことができますよ。
梁慧圭(ヤン・ヘギュ)さんの『ソニック コズミック ロープー金色12角形直線織』は、大量の金属製の鈴を連ねてロープのようにしている作品です。触ったり揺らしたりすると、その鈴が美しい音を鳴らす点も注目すべきポイント。とはいえ触ってはいけないため、毎日11時と15時にスタッフによって鳴らされる様子を見にいってみてください。
「シネマ・クレール丸の内」では映像作品を堪能
「シネマ・クレール丸の内」では、タイの映画監督であり美術家のアピチャッポン・ウィーラセタクンさんによる映像作品をみることができます。上映されるプログラムは長編映画2本と、短編集4本の6種類です。日によって上映内容が決まっているので、あらかじめスケジュールをチェックしておきましょう。
「林原美術館」の庭にあるのは野鳥対策グッズ?
「林原美術館」では、2組の作品を見ることができます。
庭に展示されているのは、アート・レーバーさんとジャライ族のアーティストたちによる『JUA サウンドスケープの音』。水田に設置され野鳥を追い払うためのジャライ族の伝統的な楽器から受けたインスピレーションを元に作られたそうで、人間ではなく風や水によって生み出される音も含めての作品となっています。
自然溢れる名園「岡山後楽園」の「観騎亭」
県を代表する観光スポット「後楽園」の中でも展示が行われています。園内北部に位置している「観騎亭(かんきてい)」が、その展示場所。散策するだけでも爽快な後楽園なので、自然を存分に楽しみつつ観騎亭では作品をじっくりと楽しんでみてはいかがでしょうか。
通り過ぎないよう「石山公園」もチェック
岡山城と後楽園を眺められる旭川沿いの「石山公園」にも屋外展示があります。
10ケ所ある全ての展示会場の真ん中付近に位置していて立ち寄りやすい場所ですが、作品が公園の風景に自然と溶け合っているため、知らなければ通り過ぎてしまうかもしれません。あらかじめチェックしておきましょう。
また、同じ公園内では前回の展示作品であるメリッサ・ダビン&アーロン・ダヴィッドソンさんの『遅延線』も見られますよ。
1000年以上の歴史を持つ「岡山神社」にも立ち寄ろう
860年に創建された「岡山神社」も展示会場のひとつ。境内にはダンサーであるマイリン・レイさんの映像作品『良い夢の鬼』や、アブラハム・クルズヴィエイガスさんの『Kami No Michi』などが展示されています。
「岡山天満屋」では商店街の一部がアート空間に
1キロメートル以上のアーケードがある「表町商店街」の一部も展示会場となっています。「天満屋」のショーウィンドウに展示されているのは片山真理さんの作品です。
有名ブランドの広告写真と並ぶ形で展示されていて、この作品も広告用の写真かと思えるほど、この場所にマッチしています。レトロを感じる商店街を歩きながら楽しんでみてください。
「岡山城 中の段」には大型スクリーンが設置
岡山市内で後楽園と同じく観光スポットとして人気の「岡山城」には、池田亮司さんの手がけた『data.flux[LED version]』が展示されています。
中の段と呼ばれるエリアにどんと置かれた全長24メートルの大型LEDスクリーンには、DNAの塩基配列やタンパク質の分子構造などのデータを数学的に表した映像が流れ、音楽と共に楽しむことができます。
アートそのものだけではなく街歩きも楽しもう
展示会場の紹介は以上となりますが、実は注目してほしいのは会場だけではありません。今回の美術展は「地元の人にも楽しんでもらえるものとすること」を目標のひとつとしていますが、さらに「来場者に岡山の街歩きを楽しんでもらうこと」も考えて会場設定がされています。
実際に会場を徒歩で巡っていると、城壁跡や古民家などがあるかと思えば、新しいオシャレなカフェなどもあり、通常の観光とは違った地域の魅力に出会えますよ。
アート作品を楽しみながら、会場となっている岡山市の魅力にも触れられる本展。ぜひ足を運び、自らの体を使って堪能してみてください。