パナソニック エレクトリックワークス(以下、パナソニックEW)は10月14日、広域や多拠点の照明演出を施設運営者自身の手で1台のパソコンから操作できる、B2B向けのクラウドサービス「街演出クラウド YOI-en(以下、YOI-en)」を発表しました。
屋外の建造物と光を組み合わせた演出は、古くはライトアップやイルミネーション、最近ではプロジェクションマッピングなどが広まってきました。夜間に目を引くことで街の活性化やムード作りを図るほか、注意喚起、道先案内といった、さまざまな用途で用いられています。
パナソニックEWが提案するYOI-enは、クラウドを利用することによって、広範囲にわたる照明演出の一括管理を実現するサービス。1つの建物やその周囲だけでなく、ケーブルを敷設できない道路をまたいだ地域、川を挟んだ両岸、地域全体、遠く離れた複数の拠点などの照明を、1台のパソコンからコントロールできます。
YOI-enは「ヨイエン」と読み、「宵(夜の初め)」と「縁(つながる)」を組み合わせた造語。「良い縁」に結びつく願いも込めて名付けたそうです。
街づくり計画を進める自治体やデベロッパー、観光地域づくり法人(DMO)などがおもなターゲット。YOI-enを利用すれば、照明演出のたびに設計やオペレーションを専門業者に依頼する必要がなく、継続的な運用が可能になります。
万が一の不具合でも、施設運営者に通知する機能があるため、問題を早期に見つけられるメリットもあります。一過性の各種イベントだけでなく、長期イベントや公共施設の常設設備としての活用が期待されそうです。パナソニックEWは「地域一帯の賑わい創出」に貢献したいと述べています。
用意しているコンテンツは、四季に合わせた「シーズンカラー」、ピンクリボンデーにピンクの照明を使うといった社会活動に利用する「アウェアネスカラー」、光に動きと変化を与えて人の行動と心理に働きかける「アフォーダンスライティング」、空間のイメージに合わせた映像と重ねて没入感を高める「映像×照明演出」の4種類。
コンテンツはあらかじめ数パターンを用意しており、管理者はパソコンの操作画面から任意のコンテンツを指定するだけで、簡単に演出を切り替えられます。パナソニックEWでは、専門知識がない担当者でも迷わず操作できることを目指してユーザーインタフェースを開発したとのこと。コンテンツのパターンは、操作時にコントローラにダウンロードされ、演出をプログラムした自動オペレーションや、カレンダー機能と組み合わせた長期の演出にも対応します。
YOI-enの導入には専用のコントローラと信号変換機を用い、照明機器はDMX(DMX512)に対応している必要があります(対応している照明機器なら既存のものを使用可能)。DMXは照明機器の調光や調色を制御するための通信規格で、1チャネルあたり256段階の制御が可能となっています。
パナソニックEWは照明機器も含めたワンパッケージでの提案はもちろん、DMX対応の既存の照明も組み合わせた提案も行っていくとのことです。
2023年春以降はコンテンツの拡充を進めていく予定で、顧客の用意したデータからコンテンツを作れるようにもしていく計画です。
今回、メディア向けの発表会では実際に1台のパソコンからコンテンツを制御するデモンストレーションが披露されました。
YOI-enを実際に見てみたいという人もいるのではないでしょうか。そんな人に耳寄りなのが、11月18日から京都市の平安神宮でスタートする、ニュースタイル夜間参拝「NAKEDヨルモウデ 2022 平安神宮」です。このイベントにYOI-enが導入されます。
平安神宮は平安遷都1100年を記念して1895年に創建された神社。イベントはクリエイティブカンパニーのネイキッドが主催となり、ソーシャルディスタンスが自然と保てるNAKEDディスタンス提灯を手に、幻想的な光と音で演出された境内や神苑を歩くという内容です。
YOI-enは鉄塔群やタワー、スタジアム、お城、駅舎、橋、公園、複合商業施設、高層ビル群など、さまざまな建造物での演出が可能とのこと。いつか、スカイツリーや東京タワーを利用したYOI-enの演出が見られるかもしれません。