将棋界のトップ棋士12名が参加する選抜棋戦、第43回将棋日本シリーズ JTプロ公式戦(協賛:日本たばこ産業株式会社)、10月15日(土)は準決勝の永瀬拓矢王座―斎藤慎太郎八段戦が行われました。結果は100手で斎藤八段が勝ち、決勝へ進出しました。
本局は永瀬王座の先手から、角換わりとなりました。序盤のポイントをまず挙げると28手目の局面で、ここで永瀬王座は▲3五歩と仕掛けましたが、▲4七銀と桂頭を守る手も有力です。▲4七銀は昨年の日本シリーズ準決勝で、先手を持っていた藤井聡太竜王が永瀬王座に指した手順です(結果は先手勝ち)。
その後の手順で▲5六角△5四角と双方が筋違い角を打ちました。△5四角は7六の銀取りになっていますが、永瀬王座は構わず▲2五歩から攻めます。その後、お互いが銀を取り合い、また桂交換となって、局面が動き始めました。
中盤は60手目の局面が分岐点でしょうか。△8六歩に対し、永瀬王座は▲同歩と応じます。ごく普通の手ですが、ここでは8筋に構わず▲2二銀不成と攻める順もあったようです。永瀬王座は△8七歩成▲3一銀不成の進行に自信が持てなかったようですが、実戦の進行を考えると、▲2二銀不成は有力だったかもしれません。
というのは▲8六同歩に対し、斎藤八段は△2四歩と先手の飛車を追います。▲同飛は△3三銀が飛車角の両取りになるので、永瀬王座は▲7五飛と角取りにかわしました。ここで△8六飛と角にひもを付けつつ飛車を走れるのが絶好で、8筋の突き捨てが入った効果がもろに出ています。永瀬王座は▲8八歩と受けましたが「▲8八歩では悪そうですね。後手を引いているので」と、自身の非勢を認めます。
ここから斎藤八段は先手の攻め駒を攻める展開に持ち込み、駒得を実現しリードを広げました。最後は86手目△7九角のただ捨てが英断の踏み込みで、▲同玉に△6七角成と玉頭を押さえつけて、永瀬玉を寄せ切りました。斎藤八段は初の日本シリーズ決勝進出です。
日本シリーズの次戦は11月6日(日)、藤井聡太竜王―稲葉陽八段戦です。そしてこの対局の勝者と斎藤八段による決勝は11月20日(日)に行われます。いよいよ大詰めを迎えた日本シリーズから目が離せません。
相崎修司(将棋情報局)