山形大学は10月6日、脱脂米ぬかから代替肉を製造することに成功したと発表した。代替肉原料の選択肢が広がり、持続可能な稲作の可能性を示すものとなる。米ぬかタンパク質ならびに、脱脂米ぬかから製造された代替肉は世界初だそう。
食肉を製造する際、家畜の糞などによって大量の温室効果ガスが発生したり、飼料を育てる土地を確保するための森林伐採を行なったりするなど環境への負荷が危惧されている。また、米ぬかから米油を製造する際に、米ぬかに対して、重量ベースで80%を超える脱脂米ぬかが副産物として発生し、これまで廃棄されていることが問題となっていた。
そこで、山形大学の渡辺昌規教授らの研究チームは、精米機メーカー・サタケと共同開発した脱脂米ぬかから、高濃度な米ぬかタンパク質を抽出する技術・IP-EWT法で抽出できる高濃度な米ぬかタンパク質が高濃度・固形状態で回収・精製されることに着目。抽出された米ぬかタンパク質を原料とした代替肉の開発を進めてきた。
本研究では、3種類の多糖類を副原料として米ぬかタンパク質に添加する調製試験を行った。結果として、米ぬかタンパク質の代替肉は、大豆タンパク質の代替肉と同じような微細構造と、弾力性を有することが明らかとなった。具体的には、全ての代替肉サンプルにおいて、動物肉(牛、豚、鳥)の水分保持率を超える値を示し、大豆タンパク質よりも吸油性が高く、水分と油分の調和のとれた素材になることを確認できたとのことだ。また、多糖類の種類によっても特性が異なり、多孔質構造を有するサンプルでは、より柔らかく、弾力を有する特徴があることがわかったそうだ。
同研究チームは今後、本技術の確立・事業展開を行なって、従来の白米を生産する農業から、「白米+タンパク質」を生産する農業への転換で、収益性が高く、持続可能な稲作への転換が期待できるとしている。また、IP-EWT法によって、抽出される米ぬかタンパク質は、高濃度かつ高栄養価で、アレルゲンフリー、GMO(遺伝子組み換え農作物)フリーなので、国内産原料で安心・安全な代替肉生産が期待できるという。
ちなみに、同研究チームは、脱脂米ぬかに含まれるタンパク質の利活用を目的に、脱脂米ぬかから効率的にタンパク質を回収・精製する技術である「米副産物のリン及びタンパク質の連続回収方法」を開発。2015年には、パイロットプラント(実用化を前提とした試験施設)の設置し、2018年に「米副産物のリン及びタンパク質の連続回収方法」に電解水洗浄を組み合わせたIP-EWT法を開発した。IP-EWT法の開発後は、米ぬかタンパク質の有効活用方法の一環として、代替肉や、栄養補助食品(サプリメント)、食品添加物原材料としての有用性について研究を進めていた。
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