駒の動かし方と基本的な戦法は分かったけど、ネット対局などで人と対戦するとなかなか勝てない‥‥なんとことありませんか? この記事では、マイナビ出版刊行の将棋に関する書籍より、対局に活かせる戦法や考え方に関する内容を抜粋して、お伝えします。

勝つために大事なのは、本質的なロジックを理解することです。 前編に続き、後編では「形勢判断」の考え方についてご紹介します。

脳内に「形勢判断」のチェックリストを

前編に続き、再び、第4図をご覧ください。

  • 【再掲第4図は△8九馬まで】

さてこの局面、上級者以上の方なら、はっきり先手が有利と思えるでしょう。しかし、初級者、初心者の方は、有利と言われてもいまいちピンとこないかも知れません。上級者以上の方の中にも、「なぜ有利か?」と問われると、具体的に言葉に表すのは難しい、という方もいらっしゃるでしょう。

どちらが有利なのか。

それを判断するには、主に以下の4点に注目するのが良いでしょう。

【手番】【囲いの強度】【離れ駒の存在】【戦力の多さ】

この4つを見極める「チェックシート」を脳内に持っていれば、形勢判断の精度がぐっと上がり、より正確に将棋の「ロジック」を実践し、「自分が持っていきたい局面、理想の局面」をイメージしやすくなります。

具体的には、こんなメモ。これが脳内にあると、とても便利です。

例えば、第4図。筆者ならこんな評価を下します。

【戦力の多さ】は二重丸にしましたが、竜の力と、香を後手より味良く取れる点を過大評価しているかもしれません。【囲いの強度】は小丸にしました。弱気な評価なのは、常日頃エルモ囲いに痛い目に遭っているからでしょうか。しかし冷静に見れば美濃囲いのほうが強いですね。4つの項目で負けているところはない。よって、二重丸や小丸は精度を上げればもっと正しい評価ができるかもしれませんが、とにかく、先手有利、いや、かなり有利と見ます。

以下は、練習問題です。皆様は4つの項目、脳内のチェックシートを用いて、どちらにマルをつけ、どちらが有利と見るでしょうか。

  • 【練習図1】

  • 【練習図2】

ロジックと正しい形勢判断を身につける

本記事に使用した局面図および表は、9月22日に発売された『イチから学ぶ将棋のロジック 三間飛車編』に掲載されているものです。(書籍紹介ページはこちら

著者は、『将棋・ひと目の詰み ~実戦形で終盤力アップ~』、『将棋・ひと目の歩の手筋~将棋上達の入り口~』など、これまでに初心向けの書籍を上梓している遠山雄亮六段。本書でも、1局の将棋を勝つまでのロジックを、1手ずつ丁寧に解説してくださっています。

  • 『イチから学ぶ将棋のロジック 三間飛車編』(著者)遠山雄亮、(販売元)マイナビ出版

著者の遠山六段は「まえがき」でこう記しています。

「本書はあくまで上達書であり、三間飛車の定跡書ではありません」

三間飛車はあくまで題材であり、1局の将棋を勝ちに導くための基本的な考え方を学べる書籍です。

続く言葉、

「本書に書いたロジックは全ての振り飛車に通じるのみならず、居飛車党も含めた上達を願う全ての方の参考になるはずです」

の通りの内容となっていて、初級者~上級者の方には振り飛車党、居飛車党に関わらず読んでいただきたい一冊です。

執筆:富士波草佑(将棋ライター)