ダイキン工業は10月12日、ルームエアコン最上位「うるさらX(Rシリーズ)」の新モデルを発表しました。うるさらXといえば、換気ができて、水の補給なしで加湿も可能なエアコンの元祖ともいえるシリーズです。
新モデルは除湿機能がパワーアップしたほか、換気時の運転音を減らして加湿と換気能力の向上につなげました。Rシリーズはおもに6畳用のAN223ARS-Wから、おもに29畳用のAN903ARP-Wまで全11モデルをラインナップ。価格はオープンで、推定市場価格は14畳用で340,000円前後。発売は11月1日を予定しています。
除湿機能がますますパワーアップ
エアコンの除湿機能とは、エアコン内の熱交換器をキンキンに冷やして空気中の水分を結露させ、結露水をドレンホースから屋外に排出するという仕組み。つまりエアコンの除湿機能とは、弱冷房機能とほぼ同義です。このため、室温が低いときに除湿をすると寒くなりすぎるというデメリットがありました。
そこで、ダイキンは2022年モデルのうるさらXから、除湿運転に「リニアハイブリッド方式(さらら除湿)」を取り入れています。部屋の温度と湿度、両方が高いときは「弱冷房」運転で除湿(除湿力:高、電気代:中)し、湿度が下がってきたら湿度の割合にあわせて熱交換器の一部のみ冷やす「可変ドライ」(除湿力:低~中、電気代:低~中)へと自動的に切り替えます。
室温が低いのに湿度が高い場合は、熱交換器の一部を冷たくして除湿。熱交換器の別エリアを温めて、冷えた空気を暖め直して送風する「再熱除湿」(除湿力:低~中、電気代:高)方式に切り替わります。
これまでのモデルは、「除湿時に風量を上げると部屋が寒くなりすぎる」ため、除湿時は風量を制限していました。しかし、新モデルは「除湿しても温度が下がらない」という利点を生かし、除湿時の風量をアップさせる「パワフル」モードを搭載。これにより、2022年モデルまでは1,500ml/hだった除湿量が、最大1,800ml/hまで向上しました。
静音化に成功、加湿と換気の性能アップにもつながった
うるさらXのような「換気ができるエアコン」、問題点のひとつが運転音です。換気エアコンは室外機から空気を取り入れて室内に送り込むため(※)、風がマフラーを通過する音が発生します。外から取り込む空気の量が多いほど風の通過音は大きくなり、室内と室外で空気のやりとりが必要な「換気」と「加湿」運転は、通風量の制御が必要でした。そこで、新モデルのうるさらXは、富士フイルムが開発した吸音材を使った吸音マフラーを採用しています。
※:外の空気を部屋に取り込む「吸気」換気のほか、部屋の空気を外に出す「排気」換気に対応したエアコンや、吸気と排気の両方に対応したエアコンもあります。
吸音マフラーは加湿運転と換気運転で活躍しますが、従来と同じ加湿・換気量ならば、運転音は体感で10%ほど低減できるそうです。また、通風時の静音化が成功したことによって、運転音は従来と同レベルながら、加湿・換気の風量がアップしています。この風量アップのおかげで、加湿量と給気換気量が従来モデルよりも大きくなったそうです。
近年はエアコン内部の清潔性も大切な要素です。うるさらXは以前から、ダイキン独自のストリーマ技術と、結露水を使った熱交換器の洗浄機能「ストリーマ内部クリーン」、抗ウイルスフィルターによる菌繁殖の抑制、防カビ加工されたファン――など、複数の内部清潔機能を搭載していました。新モデルでは、結露水が流れるドレンパン部に銀イオン抗菌剤を採用することで、エアコン内部の清潔性が一層高くなっています。
イマドキ住宅のトレンド(高気密・高断熱住宅)の弱点に対応
今回の新モデルで一番注目されたのは除湿性能の強化。ダイキンは、除湿性能の強化に取り組んだ理由として、昨今急激に増えている高気密・高断熱住宅の存在を挙げています。
この数年、脱炭素の動きとして省エネ住宅の普及が目立っており、今後もこの動きは加速する見込み。省エネ住宅の特徴のひとつが、高気密かつ高断熱であること。
高気密・高断熱の住宅は外気温に室内温度が左右されにくいため、年間を通じて空調の消費電力量を抑えられる(冷房・暖房がききやすい)というメリットがあります。ただし、高気密住宅は24時間換気システムで常に外気を室内に取り入れるため、室内の湿度が上昇しやすいというデメリットもあるのです。
このため、夏場などは「エアコンですぐに室温は下がったけれど、湿度が高いまま」という状況が発生しやすいんだとか。こういった状況において、うるさらXのリニアハイブリッド方式除湿と、新モデルのパワーアップした除湿能力は大きな力を発揮するはずです。