渡辺明名人への挑戦権を争う第81期A級順位戦(主催:朝日新聞社・毎日新聞社)は、10月12日(水)に4回戦の佐藤康光九段―菅井竜也八段戦が行われました。結果は136手で菅井八段が勝利し、リーグ成績を3勝1敗としました。

第81期A級順位戦のリーグ表

本局は後手の菅井八段が三間飛車に振ります。先手の銀冠対、後手の穴熊という堅陣対決となりました。ともに囲いへ金銀4枚を引き付け、ちょっとやそっとでは破れないという雰囲気です。逆に言うと、双方ともに攻撃力が乏しくなる懸念はありました。佐藤九段が2筋と4筋の歩を連続で突き出したことで開戦の火蓋が切られましたが、果たしてどうなるか。以下の展開は桂交換となり、先手が香を取りつつ馬も作りました。

これだけを見ると先手が指せそうですが、菅井八段の60手目△4六歩が後手の大きな反撃手となりました。先手はと金作りをうまく阻止する順がありません。以下の手順で菅井八段は角銀交換になるのを百も承知で、先手陣を崩しにかかります。

70手目の局面は駒割りだけを見ると飛車香と銀の交換で先手が大きく得をしているのですが、後手は4枚穴熊が手付かず。対して先手の銀冠は1枚はがされたのも痛く、後手の5七のと金が大きな存在感を見せています。「5三(5七)のと金に負けはなし」という格言もありますが、本局はそれを体現しています。

以下は菅井八段がガンガン攻める展開となりました。後手は攻めが切れなければ勝ちというわかりやすい展開です。佐藤九段も必死の防戦を見せますが、徐々に持ち駒から守備に使える駒がなくなっていきました。

99手目の▲8五桂打は、これ以上受ける手段がないので反撃に出た一着ですが、対する△6二銀が「何もさせません」という実に手堅い一着です。こうなってはいかに佐藤九段と言えども指しようがありません。最後は先手玉を受けなしに追い込んで、菅井八段が大きな3勝目を挙げました。

同じくこの日に行われていた1敗対決の藤井聡太竜王―斎藤慎太郎八段戦は藤井竜王が勝利。現時点では3勝1敗の広瀬章人八段、菅井八段、藤井竜王が挑戦権争いをリードしています。10月21日に行われる豊島将之九段―糸谷哲郎八段戦で、豊島九段が勝って1敗を守り、先頭集団について行くことが出来るか。注目です。

相崎修司(将棋情報局)

3勝目を挙げ、挑戦者争いの先頭集団に加わった菅井八段
3勝目を挙げ、挑戦者争いの先頭集団に加わった菅井八段