大切な愛車も走っていれば当然汚れていきます。クルマならガソリンスタンドの自動洗車機でサッと洗えますが、バイクの場合はそうもいきませんね。バイク専門の洗車サービスもありますが、自宅やコイン洗車場で行っている人も多いのではないでしょうか。

そんなバイク洗車に関するコツやNG行為などを前編、中編、後編の全3回に渡って紹介します。今回は、水洗いから始める「基本編」です。

■洗車に最適な日とバイクの状態

洗車に最適なのは、薄曇りの日や直射日光が当たらない場所で、真夏の場合は夕方や夜がよいでしょう。その理由は、拭き上げ前に車体の水滴が乾いてしまうと、ボディに水垢やイオンデポジット、ウォータースポットを作ってしまうことがあるからです。寒い日の洗車は大変ですが、有料でお湯を使えるコイン洗車場などもあります。

洗車はエンジンやマフラーが冷えた状態で行うのも鉄則です。その理由は、走行直後の高温状態で水がかかると汚れが焼き付いてしまったり、沸き上がった蒸気が車体の細部に入り込み、電装部品や端子の腐食やボルトやナットがサビて固着する原因になるからです。

  • すぐに水滴が乾く暑い日は、塗装にシミなどができてしまう恐れも!

■いきなり洗ってはダメ! まずは水で下洗い

クルマもバイクも同じ公道を走っている乗物なので、汚れの元はほとんど同じです。大気中のホコリや泥、排ガスやブレーキパッドのダスト、場所によっては虫や鳥のフン、樹液など。これらが付着したまま放っておくと、塗装を痛めたり腐食の原因になります。

付着した汚れの中には硬いものもあるので、いきなりガシガシ洗ってしまうとボディにスクラッチ傷を作ってしまいます。まずは水で下洗いして落とせるものは落とし、水だけでは落ちない汚れをカーシャンプーや薄めた中性洗剤を使い、スポンジやブラシで優しく落としていきます。これはクルマの洗車も同じで、ドライブスルー型の洗車機に入ってみると、その行程がよくわかると思います。

  • 洗車前のボディには硬い砂などのホコリもついているため、そのまま擦ると小傷を作ってしまう

■クルマとバイクの構造上の違い

コイン洗車場の高圧洗浄機や、自宅の水栓ホースの水で下洗いする場合、少し注意が必要です。クルマはエンジンやシート、メーターなどは金属製ボディの傘ですっぽり覆われていますが、バイクはこれらがむき出しになっているからです。

近代のバイクは雨天でも走行できるように設計されていますが、完全な防水ではありません。高圧で水が吹きかかるのは、高速走行時に雨が当たる車体の最前部や、タイヤが路面の水を巻き上げる車体下部で、四方八方から大量の高圧水を浴びせられることは想定されていないでしょう。

  • バイクの造形は複雑でホコリもたまりやすいが、高圧で水を吹きかけるのは避けたい

■雨の走行のような優しい水流で

水で下洗いをする場合、至近距離で高圧水を浴びせることは避け、通常の雨天走行時をイメージしながら、前方や上方からシャワーのように優しく水をかけ、車体の上から下に向けて汚れを流していきます。

フレームとエンジンの隙間やハンドル廻りなど、パーツがゴチャゴチャしている場所は汚れが溜まりやすいものです。高圧の水を吹き付けると気持ちよく落ちますが、飛散したミストが細部に入り込んでしまいます。マフラーの排気口やカギ穴なども含めて、水を入れたくない所は粘着力の弱いテープでマスキングしておくとよいでしょう。

  • カギ穴やマフラーの排気口などは、洗車前にマスキングしておくのもよい

■洗剤やスポンジ、ブラシは極力優しいものを使う

水で落ちない汚れは、カーシャンプーや中性洗剤を利用します。シミや変色の原因にならないように水で薄め、スポンジで泡立ててから使いますが、まだスクラッチ傷の原因になる汚れが付着しているので、やはり「優しく丁寧に」が基本です。家庭用の酸性やアルカリ性の洗剤は汚れもよく落ちますが、塗装や金属を痛めるため使わない方がよいでしょう。

ホイールやエンジンなどはブラシを使うと細部の汚れを掻き落とせますが、これもできるだけ柔らかいものを使います。金属部だからと硬いブラシで毎回擦っていると、表面の塗装やアルマイトのツヤが落ちたり剥がれてしまいます。ブラシも入らないフォークやスイングアームの裏側などは細く切ったウエスを使う方法もあります。

  • スポンジやブラシなどは、場所によって種類を使い分ける

■ホースで水を浴びせることを嫌う人も

新しいバイクはゴムやシールもしっかりしているので、高圧洗浄機の水を数回浴びた程度ではトラブルにならないでしょう。しかし、それが頻繁に続くと細部に水が入り込み、徐々に腐食やサビの原因になってしまいます。古いバイクの場合、ゴムやシールのほか、塗装も痛んできているので、高圧洗浄機はもちろん、ホースで水をかけることを避ける人はたくさんいます。

その場合、バケツの水とマイクロファイバーなどを使って慎重にホコリや汚れを取り除き、頑固な汚れにのみシャンプーや磨き用のケミカルを使います。タンクやカウルなどの美しい塗装部分や、エンジン、ホイール、マフラーなど、場所によって用具やケミカルを使い分けるので手間はかかりますが、細部に水分が侵入することを防げるため、腐食やサビのトラブルは格段に減るというわけです。

  • カウルなどは水と洗剤を使い、複雑なところは素材に適したケミカルで丁寧に拭き上げる

洗車も丁寧にやればやるほど体力を使いますが、疲れたからといって拭き上げたらガレージにしまったり、車体カバーをかけて終わりにしてませんか?

次回は、せっかくの洗車を台無しにしないための「ボディケア編」です。

クルマとは違う! バイク洗車のコツとNG行為【中編・ボディケア】はこちら
クルマとは違う! バイク洗車のコツとNG行為【後編・グリスアップその他】はこちら