藤井聡太竜王に広瀬章人八段が挑戦する、第35期竜王戦七番勝負(主催:読売新聞社)の第1局が10月7、8日(金、土)に東京都渋谷区の「セルリアンタワー能楽堂」で行われました。結果は107手で広瀬八段が勝利し、開幕戦を飾りました。
本局は振り駒の結果、広瀬八段の先手で角換わりに進みます。藤井竜王は自身が過去に指して勝った順をしばらく踏襲しましたが、先に手を変えました。対して広瀬八段が先攻する形で銀交換が実現します。藤井竜王は「攻め合いにできればと思ったのですが、そのあとわからなくなってしまいました」と振り返りました。
果たして、藤井竜王が6筋を攻めるべく歩を突いた瞬間に、広瀬八段が後手陣に打った銀が好手。タダですが、この銀を取ると角で両取りをかけられるので、これは取れません。数手後に封じ手となりましたが、ここでは既に先手がリードを奪っています。
2日目は攻め合いの順に進みましたが、先手が徐々にリードを広げていきました。苦しくなった藤井竜王は終盤で△7二飛という勝負手を放ちます。▲同馬でタダですが、馬の利きをずらしたことで、△7四桂と王手に打つことが出来ました。以下▲9七玉△8六銀▲8八玉の形は先手玉もかなり危なくなっています。
しかし広瀬八段の見切りは正確でした。危なくとも正確に対応すれば後手の攻めは続きません。実戦は▲8八玉に藤井竜王が△4一銀と自陣に手を入れて頑張りましたが、その頑張りも及ばず、広瀬八段が開幕戦を飾りました。「全体的に悪い手もなく、まずまず指せたかなと思います」と振り返りました。
開幕戦の勝利が大きいことは間違いありませんが、その一方でここまで番勝負無敗の藤井竜王は、直近2度のタイトル戦で初戦敗戦後からの連勝、防衛という形を繰り返しています。広瀬八段もそれはわかっているでしょうから、次戦が早くも山場になりそうです。藤井竜王が勝てば流れを自身へ引き戻せるでしょうし、逆に広瀬八段が連勝すれば、七番勝負で藤井竜王に2つ黒星をつけた初のケースになり、そこから初の対藤井戦タイトル戦勝利も見えてきます。次戦の第2局は10月21、22日(金、土)に京都府京都市の「総本山仁和寺」で行われます。七番勝負序盤の山場に注目しましょう。
相崎修司(将棋情報局)