Samsungの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Flip4」が発売されました。国内ではNTTドコモとKDDI、そして楽天モバイルから発売され、タブレットになる「Galaxy Z Fold4」よりも一般層に訴求できる折りたたみスマートフォンとして注目の製品です。
なお、今回のレビューにあたって試用した機材はグローバル版のものですが、ネットワークの対応、おサイフケータイの有無、キャリアアプリを除いて日本国内版との違いはありません。
大画面がコンパクトに
「Galaxy Z Flip4」は、同じ折りたたみスマートフォンでもタブレットを折りたたむとスマートフォン型になる「Galaxy Z Fold4」とは異なり、「スマートフォンを折りたたむ」という構造です。Z Flip4は、スマートフォンを半分に折りたたむため、折りたたみ時は非常にコンパクトなサイズになります。
一昔前に流行した折りたたみケータイと同じスタイルですが、大画面化の著しいスマートフォンにおいて、持ち運びが容易になるZ Flipスタイルの折り方は、かなりの利便性があります。
開いたときの画面サイズは6.7型。スマートフォンの中では最大級の画面サイズですが、それも折りたたんでしまえばサイズが半分(厚みは2倍)になり、コンパクトに手のひらに収まります。
ヒンジは堅めで、昔の折りたたみケータイのようにパカパカ開け閉めするような感じではありませんが、開いている途中でも角度を固定できるので、テーブルに置いて画面を見るといった使い方ができます。
基本的な機構は前モデルを踏襲していて、ヒンジが薄くなって縦横のサイズがわずかに小さくなりましたが、それほど大きな差ではありません。基本的にはZ Fold4と同様、性能向上が中心のアップデートという感じです。
外観は前モデルとほとんど変わらないので、見た目での違いはカラー以外には分からないでしょう。そのため、Z Flip3ユーザーが買い替えるほどではありませんが、少しコンパクトにはなっているので、新規ユーザーには良いアップデートです。
大幅に性能向上
外観は変更されていませんが、内面は大きく向上。SoCはSnapdragon 888からSnapdragon 8+ Gen 1にとなったので、性能という意味ではより強力になっています。
実際にベンチマークテストをしてみました。Z Fold4と同様、3DmarkのWild Lifeテストでは「Maxed Out!」の表示が出て測定不能だったため、重量級のWild Life Extremeを使用しています。
そのスコアは2,848。Geekbenchのスコアはシングルコアが1,318、マルチコアが4,173、GFXBenchのマンハッタン3.1が5,568フレーム、同オフスクリーンが6,042、T-Rexが6,694フレーム、同オフスクリーンが17,828フレーム、Aztec Ruins OpenGL High Tierが2,107、Aztec Ruins Vulkan High Tierが2,356などといった結果になりました。
Z Fold4、Z Fold3との比較表を見ると、当然ながらおおむねZ Fold4と同等の性能と言えそうです。
Z Flip4 | Z Fold4 | Z Fold3 | ||
---|---|---|---|---|
3Dmark | Wild Life Extreme | 2,848 | 2,781 | 1,303 |
GeekBench | Single-Core | 1,318 | 1,322 | 561 |
Multi-Core | 4,173 | 3,963 | 2,046 | |
GFXBench | マンハッタン3.1 | 5,568 | 3,866 | 2,285 |
マンハッタン3.1オフスクリーン | 6,042 | 6,962 | 4,130 | |
Aztec Ruins OpenGL High Tier | 2,107 | 2,070 | 1,234 | |
Aztec Ruins Vulkan High Tier | 2,356 | 1,992 | 1,270 | |
GeekBench ML | CPU | 514 | 537 | 383 |
GPU | 2,125 | 2,219 | 1,570 | |
NNAPI | 2,821 | 3,272 | 1,659 |
従来通りのデュアルカメラは従来通りの高画質
カメラは従来通りデュアルカメラ。メインとなる広角と超広角の2つのカメラで、いずれも12メガピクセルのセンサーを搭載。広角カメラは従来よりピクセルピッチが少しだけ大型化。とはいえ、基本的には従来通りでしょう。
実際の画像も従来通りという印象です。同じ折りたたみのZ Fold4は50メガピクセルのセンサーを搭載してピクセルビニングに対応していましたが、Z Flip4は従来との大きな変更はなし。
撮影機能としても大きな違いはありません。折りたたみを生かした各種撮影方法は健在なので、使い勝手の良いカメラ機能となっています。
折りたたんだ状態でサブディスプレイを使って撮影する機能では、表示方法が改善されました。Z Flip3では、サブディスプレイいっぱいにライブビューが表示され、実際に撮影される領域全体が確認できませんでした。
Z Flip4では、サブディスプレイをダブルタップすると全画面と拡大表示の切り替えが可能になり、全画面表示すれば実際に写る範囲全体がサブディスプレイでも確認できるようになりました。画面が小さいので細部は見にくいですが、余計な写り込みなどが避けやすくなりました。
折りたたんだ状態でも、電源ボタン2回押しでカメラが起動してサブディスプレイをモニターとして撮影可能。スワイプすることで静止画/動画/ポートレートの各モードを切り替えでき、上下にスワイプすればズームもできます。
手早く自撮りができるのはいい機能で、インカメラよりも高画質に自撮りができます。細かい点ですが、今まで折りたたんだ状態でカメラを起動して、そのまま端末を開くとサブディスプレイの画面がオフになっていました。それがZ Flip4ではサブディスプレイの撮影が継続するので、折りたたんだ状態で撮影を開始し、テーブルに固定したいと思った場合に、そのまま開いて置けば撮影が継続できるようになりました。
このように三脚代わりに撮影することも可能ですし、サブディスプレイを使えば、画質のよいメインカメラを使って集合写真を撮る、といった使い方も簡単にできます。
ちょっと面白いのが、90度まで本体を折りたたみ、横にして握るとビデオカメラのようなスタイルで撮影できるという点。ディスプレイの角度が上下に変えられないため、バリアングル式モニターのような自由度はありませんが、意外に撮りやすいスタイルでした。
カメラは相変わらずのこってり系で、シャープネスも強めですが、幅広いシーンをまんべんなくカバーできる性能を備えています。画質はスマホカメラとしてはトップレベル。Z Fold4が50メガピクセルのピクセルビニングですが、現時点でそれほど大きな差は感じません。
画質以上に、様々な使い方が可能な利便性がZ Flip4のメリットでしょう。このあたりはZ Flip3でも変わらない部分で、一度体験すると折りたたみの良さがよく分かるポイントです。
折りたたみの使い勝手を高める機能
ソフトウェア面では、Android 12Lを搭載したZ Fold4とは異なり、Android 12を搭載しますが、使い勝手を向上させる機能が設定にある「ラボ」に追加されています。
1つがマルチウィンドウの起動方法で、画面下から2本指で上にスワイプすると画面分割画面になり、アプリ一覧からアプリを起動できるようになりました。より手軽にマルチウィンドウが使えるようになりました。
半ばまで折りたたんで使用するフレックスモードでは、半分まで折ったときに表示されるフレックスモードパネルにタッチパッドが追加されました。タッチパッドを使用すると、アプリ側にカーソルが現れて操作できることに加え、2本指のスワイプでスクロールも可能です。
サブディスプレイは、時計や再生中の音楽コントロール、ボイスレコーダー、タイマー、カレンダーといった機能に加え、天気予報/スケジュール/歩数計といったウィジェットも追加可能。
時計を表示している状態で画面上端から下にスワイプすると、Wi-FiやBluetoothのオンオフといったクイック設定が利用できますが、新たにフラッシュライトを点灯したり、顔認証の利用も可能になりました。
背景に動画を設定したり、AR絵文字を追加できるなどのカスタマイズ機能も強化。バッテリー容量が増加し、充電速度が高速化するといった、基本的な性能も向上しています。
アップデートとしてはやや地味なところはありますが、より完成度が高まったZ Flip4。問題は本体の価格で、円安の中、なかなか低価格化は難しいところでしょうが、Z Fold4に比べれば幅広いユーザーにお勧めしたいモデルです。