Samsungの折りたたみスマートフォン「Galaxy Z Flip4」が発売されました。国内ではNTTドコモとKDDI、そして楽天モバイルから発売され、タブレットになる「Galaxy Z Fold4」よりも一般層に訴求できる折りたたみスマートフォンとして注目の製品です。

なお、今回のレビューにあたって試用した機材はグローバル版のものですが、ネットワークの対応、おサイフケータイの有無、キャリアアプリを除いて日本国内版との違いはありません。

  • Galaxy Z Flip4

    開いて手に持つと、普通の大画面スマホに見える「Galaxy Z Flip4」

大画面がコンパクトに

「Galaxy Z Flip4」は、同じ折りたたみスマートフォンでもタブレットを折りたたむとスマートフォン型になる「Galaxy Z Fold4」とは異なり、「スマートフォンを折りたたむ」という構造です。Z Flip4は、スマートフォンを半分に折りたたむため、折りたたみ時は非常にコンパクトなサイズになります。

  • 折りたたむと手のひらにおさまる

    折りたたむと手のひらに収まるコンパクトサイズ

一昔前に流行した折りたたみケータイと同じスタイルですが、大画面化の著しいスマートフォンにおいて、持ち運びが容易になるZ Flipスタイルの折り方は、かなりの利便性があります。

開いたときの画面サイズは6.7型。スマートフォンの中では最大級の画面サイズですが、それも折りたたんでしまえばサイズが半分(厚みは2倍)になり、コンパクトに手のひらに収まります。

  • 開いた状態

    大型ディスプレイのスマートフォンとして使えます

  • 折りたたんだ状態

    そのまま折りたためば半分のサイズです。日本では折りたたみケータイが流行したので、サイズ感としては懐かしいという人も多いでしょう

ヒンジは堅めで、昔の折りたたみケータイのようにパカパカ開け閉めするような感じではありませんが、開いている途中でも角度を固定できるので、テーブルに置いて画面を見るといった使い方ができます。

  • 約150度
  • 約90度
  • 約45度

    無段階で角度が固定できます。ギリギリまで固定できるので、好きな角度で扱えます

基本的な機構は前モデルを踏襲していて、ヒンジが薄くなって縦横のサイズがわずかに小さくなりましたが、それほど大きな差ではありません。基本的にはZ Fold4と同様、性能向上が中心のアップデートという感じです。

  • 背面

    背面はツートンカラー。マットでポップなカラーリングも好印象

  • 折りたたんだ状態の側面

    折りたたむと厚みは2倍になりますが、全体としてはコンパクトなサイズです

  • 左側面
  • 右側面
  • 上面
  • 底面

    開いた状態だと厚みはかなり抑えられた薄い側面になります

外観は前モデルとほとんど変わらないので、見た目での違いはカラー以外には分からないでしょう。そのため、Z Flip3ユーザーが買い替えるほどではありませんが、少しコンパクトにはなっているので、新規ユーザーには良いアップデートです。

大幅に性能向上

外観は変更されていませんが、内面は大きく向上。SoCはSnapdragon 888からSnapdragon 8+ Gen 1にとなったので、性能という意味ではより強力になっています。

実際にベンチマークテストをしてみました。Z Fold4と同様、3DmarkのWild Lifeテストでは「Maxed Out!」の表示が出て測定不能だったため、重量級のWild Life Extremeを使用しています。

そのスコアは2,848。Geekbenchのスコアはシングルコアが1,318、マルチコアが4,173、GFXBenchのマンハッタン3.1が5,568フレーム、同オフスクリーンが6,042、T-Rexが6,694フレーム、同オフスクリーンが17,828フレーム、Aztec Ruins OpenGL High Tierが2,107、Aztec Ruins Vulkan High Tierが2,356などといった結果になりました。

Z Fold4、Z Fold3との比較表を見ると、当然ながらおおむねZ Fold4と同等の性能と言えそうです。

Z Flip4 Z Fold4 Z Fold3
3Dmark Wild Life Extreme 2,848 2,781 1,303
GeekBench Single-Core 1,318 1,322 561
Multi-Core 4,173 3,963 2,046
GFXBench マンハッタン3.1 5,568 3,866 2,285
マンハッタン3.1オフスクリーン 6,042 6,962 4,130
Aztec Ruins OpenGL High Tier 2,107 2,070 1,234
Aztec Ruins Vulkan High Tier 2,356 1,992 1,270
GeekBench ML CPU 514 537 383
GPU 2,125 2,219 1,570
NNAPI 2,821 3,272 1,659

従来通りのデュアルカメラは従来通りの高画質

カメラは従来通りデュアルカメラ。メインとなる広角と超広角の2つのカメラで、いずれも12メガピクセルのセンサーを搭載。広角カメラは従来よりピクセルピッチが少しだけ大型化。とはいえ、基本的には従来通りでしょう。

  • カメラ部

    カメラは従来通りのデュアルカメラ。描写は十分な画質です

実際の画像も従来通りという印象です。同じ折りたたみのZ Fold4は50メガピクセルのセンサーを搭載してピクセルビニングに対応していましたが、Z Flip4は従来との大きな変更はなし。

  • 撮影例

    描写は十分以上で、スマホカメラとしては見栄えはいいのですが、ちょっと色味は派手。強い光の反射でもフレアやゴーストはあまり出ません

  • 撮影例

    全体的に明るめに写るので、少しマイナス補正はしたくなりますが、くっきり、はっきりという感じで写ります

撮影機能としても大きな違いはありません。折りたたみを生かした各種撮影方法は健在なので、使い勝手の良いカメラ機能となっています。

  • 撮影例

    ボケ味も自然で細部の描写も良好

  • 料理の撮影例

    料理も違和感なく美味しそうに写ります

折りたたんだ状態でサブディスプレイを使って撮影する機能では、表示方法が改善されました。Z Flip3では、サブディスプレイいっぱいにライブビューが表示され、実際に撮影される領域全体が確認できませんでした。

Z Flip4では、サブディスプレイをダブルタップすると全画面と拡大表示の切り替えが可能になり、全画面表示すれば実際に写る範囲全体がサブディスプレイでも確認できるようになりました。画面が小さいので細部は見にくいですが、余計な写り込みなどが避けやすくなりました。

  • 従来のサブディスプレイのプレビュー

    平面に置いて安定した状態で撮影できるのは強み。従来はこのように一部しか確認できませんでした

  • Z Flip4のサブディスプレイのプレビュー

    新たに全体を確認できるようになり、ちゃんと構図を確認できます

折りたたんだ状態でも、電源ボタン2回押しでカメラが起動してサブディスプレイをモニターとして撮影可能。スワイプすることで静止画/動画/ポートレートの各モードを切り替えでき、上下にスワイプすればズームもできます。

手早く自撮りができるのはいい機能で、インカメラよりも高画質に自撮りができます。細かい点ですが、今まで折りたたんだ状態でカメラを起動して、そのまま端末を開くとサブディスプレイの画面がオフになっていました。それがZ Flip4ではサブディスプレイの撮影が継続するので、折りたたんだ状態で撮影を開始し、テーブルに固定したいと思った場合に、そのまま開いて置けば撮影が継続できるようになりました。

このように三脚代わりに撮影することも可能ですし、サブディスプレイを使えば、画質のよいメインカメラを使って集合写真を撮る、といった使い方も簡単にできます。

ちょっと面白いのが、90度まで本体を折りたたみ、横にして握るとビデオカメラのようなスタイルで撮影できるという点。ディスプレイの角度が上下に変えられないため、バリアングル式モニターのような自由度はありませんが、意外に撮りやすいスタイルでした。

  • ビデオカメラ風の撮影スタイル

    ちょっと面白いスタイルでの撮影。ビデオカメラ風ですが、意外に安定します

カメラは相変わらずのこってり系で、シャープネスも強めですが、幅広いシーンをまんべんなくカバーできる性能を備えています。画質はスマホカメラとしてはトップレベル。Z Fold4が50メガピクセルのピクセルビニングですが、現時点でそれほど大きな差は感じません。

  • ポートレートモードの撮影例

    ポートレートモードでの撮影

  • 撮影例

    HDRが効いてこってりとした色再現

  • 撮影例

    このぐらいの方が自然でしょう。質感もリアルです

画質以上に、様々な使い方が可能な利便性がZ Flip4のメリットでしょう。このあたりはZ Flip3でも変わらない部分で、一度体験すると折りたたみの良さがよく分かるポイントです。

  • ライブビューを下半分に表示

    ライブビューを下半分に表示すると、足元の撮影もしやすく自由度が高いのもメリットです

折りたたみの使い勝手を高める機能

ソフトウェア面では、Android 12Lを搭載したZ Fold4とは異なり、Android 12を搭載しますが、使い勝手を向上させる機能が設定にある「ラボ」に追加されています。

  • 分割画面表示1

    ラボに追加されたスワイプして分割画面表示

  • 分割画面表示2

    簡単に画面分割ができるようになりました

1つがマルチウィンドウの起動方法で、画面下から2本指で上にスワイプすると画面分割画面になり、アプリ一覧からアプリを起動できるようになりました。より手軽にマルチウィンドウが使えるようになりました。

半ばまで折りたたんで使用するフレックスモードでは、半分まで折ったときに表示されるフレックスモードパネルにタッチパッドが追加されました。タッチパッドを使用すると、アプリ側にカーソルが現れて操作できることに加え、2本指のスワイプでスクロールも可能です。

  • フレックスモード時の設定1
  • フレックスモード時の設定2
  • フレックスモードは、単に画面が上下に分割されるだけでなく、トラックパッドを使うような操作ができるようになりました

サブディスプレイは、時計や再生中の音楽コントロール、ボイスレコーダー、タイマー、カレンダーといった機能に加え、天気予報/スケジュール/歩数計といったウィジェットも追加可能。

時計を表示している状態で画面上端から下にスワイプすると、Wi-FiやBluetoothのオンオフといったクイック設定が利用できますが、新たにフラッシュライトを点灯したり、顔認証の利用も可能になりました。

  • サブディスプレイ
  • クイック設定
  • 便利なサブディスプレイ。時計表示だけでなく、各種設定やコントロールが閉じた状態でもできます。上から下にスワイプするとクイック設定も利用可能

  • サブディスプレイ(アラーム)
  • サブディスプレイ(タイマー)
  • 音楽コントロールやアラーム、タイマーなどの設定も可能

背景に動画を設定したり、AR絵文字を追加できるなどのカスタマイズ機能も強化。バッテリー容量が増加し、充電速度が高速化するといった、基本的な性能も向上しています。

  • ウィジェットの追加
  • 天気予報
  • さらに新たなウィジェットの追加も可能

アップデートとしてはやや地味なところはありますが、より完成度が高まったZ Flip4。問題は本体の価格で、円安の中、なかなか低価格化は難しいところでしょうが、Z Fold4に比べれば幅広いユーザーにお勧めしたいモデルです。