油脂酵母によるパーム油代替油脂を生産するための実用化に向けた課題としては、主に以下の4点などが挙げられている。

  1. 油脂品質の向上
  2. 油脂生産性の向上(油脂生産速度、対糖油脂収率)
  3. 細胞増殖性の向上(比増殖速度、細胞密度)
  4. 培養から菌体回収・油脂精製プロセスの実用的な製造工程

今回のテーマでは、これらの課題を解決していく中で、より高付加価値な油脂組成のオレイン酸を高効率で発酵生産可能なスマートセル株を用いて、油脂酵母からパーム油の代替油脂の培養を5L発酵槽で実施したとする。その結果、6日間で培養液1L当たり98gの油脂の生産に成功したという(油脂生産性98g-Lipid/L/6days)。

また対糖油脂収率では20%と良好な成果が得られ、今回のテーマの中間目標(2022年度)「脂溶性化合物の生産性70g-Lipid/L/6days(油脂変換率:20%)」が達成された。この成果は油脂生産量としては世界トップレベルの水準で、パーム油代替油脂の実用化に向けた、2026年度の最終目標である「100g-Lipid/L/4days」、対糖油脂収率25%の達成に大きく近づいたとする。

  • 研究開発の概要

    今回の研究開発の概要 (出所:NEDO Webサイト)

さらに、この油脂生産に使用する産業用スマートセルについては、油脂合成が効率よく進むよう、代謝経路を改善した産業用油脂高蓄積酵母として継続して開発・改良しているとした。

NEDO、不二製油グループ本社、新潟薬科大は、油脂酵母による高効率な油脂生産技術の確立を目標とし、引き続き産業用スマートセルの開発を進めていくという。今後、油脂生産速度や対糖油脂収率を向上させ、最終的には2050年ごろ、世界最高水準の油脂生産性を持つ産業用スマートセルによる、カーボンリサイクル型の国内油脂供給システムの実現を目指すとしている。