1899年に創業したドイツの家電メーカー、ミーレが掲げるブランドプロミスは「Immer Besser(常により良いものを)」――。デザイン性、優れた耐久性、環境への配慮など、見た目も機能もプレミアムな家電ブランドとして、多くのファンに愛されています。

そんなミーレが日本に参入したのは1992年。アジア初の支社としてミーレ・ジャパンが設立されました。2022年の今年はミーレ・ジャパンの設立30周年ということで、創業ファミリーで4代目のミーレ本社 共同経営者兼代表取締役 Dr.Reinhard Zinkann(ラインハルト・ツィンカン)氏が5年ぶりに来日。ミーレ本社 マーケティングおよびセールス担当取締役 Dr.Axel Kniehl(アクセル・クニール)氏とともに、メディアギャザリングに登壇しました。

  • ドイツの高級家電メーカー、ミーレのブランドプロミスは「Immer Besser(常により良いものを)」

    ブランドデザインにも「Immer Besser(常により良いものを)」

  • ミーレの人気アイテム、ビルトインタイプのオーブン

  • スクエアデザインのドラム式洗濯乾燥機も憧れアイテム

  • 掃除機はアタッチメントが豊富。付け替えて我が家にぴったりの掃除ができます

海外生活経験者を中心に人気が広がったミーレ

オープニングスピーチではミーレ・ジャパン 代表取締役社長の冨田晶子氏が、ミーレ・ジャパンのこれまでのあゆみを紹介。

「設立当初は、海外生活の経験者もしくはオーダーメイドのキッチンを通して購入する層など、ユーザー層は限られていましたが、今ではより多くの方々にミーレを知っていただけるようになりました」(冨田氏)

  • ミーレ・ジャパン 代表取締役社長 冨田晶子氏

日本では現在、食器洗い機、ビルトインオーブン、ビルトインコーヒーマシン、IHクッキングヒーター、掃除機などの製品が購入可能です。

「日本ではミーレといえば食器洗い機というイメージを持っていただけるようになりましたが、実は昨今では衣類をケアしながら大切に洗うランドリー、材料をセットするだけで素材本来の良さを最大限に引き出す調理機器などをお求めいただくお客さまも増えています」(冨田氏)

そうした人気の広がりとともに実物を見てみたいという人も増えており、ミーレ・ジャパンでは製品を実際に試せる「Miele Experience Center」を、東京の表参道と目黒、兵庫の神戸、そして大阪の4店舗へと拡充。今後も実際に体験できる場を増やしていく考えです。

  • 「ミーレといえば食器洗い機」というイメージの人も多いかも? 2022年9月には「ミーレ・ジャパン 30周年記念モデル」として、ビルトイン食器洗い機「G 5434 SCiステンレス(クリーンスチール)」を台数限定で発売

さて、一般的に海外メーカー製品は購入後のサポート体制に不安を感じる人も少なくありません。そんなユーザーの不安を払拭するため、ミーレ・ジャパンは2004年にコンタクトセンターを開設し、サービス体制を年々強化しています。

「お客さまに安心して購入いただき、メンテナンスや修理をしながら1つの製品を長く使っていただける体制を日本全国で強化し、プレミアムなサービスを提供していきたいと思っています」(冨田氏)

プレミアムなサービスの一例を挙げると、2022年2月にスタートした「ミーレ掃除機ケア 修理サービスパッケージ」があります。修理を依頼すると、診断、見積もり、部品交換、検品、クリーニングを行って返却するサービス。修理期間中は最上位機種の貸出機を用意するところがユニークです。また、電話対応のトレーニングも強化しています。

「電話口でも正しく診断できるよう、何が問題なのかをしっかり理解・把握したカスタマーサービスのメンバーが対応します。問題によっては、お客さま自身が直せるようにお手伝いしています。同時に、修理になるべく早く伺う体制も整えています」(冨田氏)

買って終わりではなく、買った後に安心して使える体制を整えることが、長期使用につながり、ミーレ製品の良さが伝わり、ファンも増えていくというわけです。ミーレの製品は、開発の段階から修理することを考慮して設計しているそうで、「壊れたら買い換える」のではなく、「壊れたら修理して使い続ける」という前提が特徴的。今でいうところのサステナブルな取り組みを123年前から続けていたともいえます。

サステナビリティは創業時からのミーレのDNA。創業時から取り組む

  • 創業ファミリーのDr.ツィンカン氏

ミーレが創業した1899年というと、日本は明治時代。この時代から長期使用への意識に取り組んでいたというのは驚きですよね。Dr.ツィンカン氏は次のように語ります。

「私の曽祖父、ラインハルト・ツィンカンとそのパートナーのカール・ミーレ、2人の創業者は、他社の製品を見て、一定期間が経つと(またある程度使用すると)壊れるだろうと思いました。彼らには、品質、信頼性、責任の重要性という共通概念があり、壊れにくく長持ちする製品を作ることを考えたわけです。これがすでにサステナビリティの概念であり、その言葉の意味を人々が考え始めるずっと前に、ミーレの創業者たちは体現していたのです」(Dr.ツィンカン氏)

「(ミーレ製品は)信頼性があり、耐久性に優れたサステナブルな製品として見られています。創業当初からお客さまのニーズを理解し、喜んでいただくことをずっと目指してきました。常により良くあること――。これは、品質における私たちの(お客さまに対する)約束であり、私たちのDNAにあることです。常にこれを守っていくということに尽きます」(Dr.ツィンカン氏)

  • 1923年ごろに製造されたミーレのクリーム分離機(牛乳をクリームと脱脂乳に分離する機械)。当時、耐久性を大幅に向上したそうです。これにより、クリーム分離機の販売台数は月間で300台弱から900台に!

  • 日本参入は1992年。会場ではミーレの歴史をボードで紹介していました

日本はミーレにとって重要な市場

マーケティングとセールスを担当するDr.アクセル・クニール氏からは、日本市場がアジアにおいて重要な市場だという話がありました。

「日本のお客さまは品質に対する鋭い感覚、デザイン、クラフトマンシップ(職人の技術)、テクノロジーに対する正しい理解を持っており、要求が非常に厳しいことで知られています。ミーレはそうした要求を完全に満たすことができる立場にあります。お客さまに感動を与え、あらゆる面において最高の品質、利便性とソリューションを実現した製品を日本では30年にわたってお届けし続けています」(Dr.クニール氏)

  • Dr.アクセル・クニール氏

「製品を長く使うことは、日本のお客さまにとっても重要な価値観。持続性もとても大事なものであり、私たちが同じく共有する価値観です。私たちは日本に大きなポテンシャルを感じており、特にビルトイン機器の可能性が大きいと感じています。日本の人々は要求が厳しく、違いを求め、価値を求め、品質を追求します。こうした理由で日本とミーレは非常に相性がいいと考えています」(Dr.ツィンカン氏)

実はミーレの製品は、ドイツ本国で発売していても、日本では未発売の製品も多いのですが、ミーレ・ジャパンが事業を始めてから30年の間に、少しずつ扱うカテゴリーが増えてきました。Dr.クニール氏は日本における今後の展開にも触れ、筆者も一人の消費者として楽しみです。

「製品ポートフォリオを日本国内で増やしていく考えです。冷蔵庫もそのうちのひとつ。日本においても、サステナブルな暮らしを提供できるような多くのカテゴリー、より多くの製品を導入したいと考えています」(Dr.クニール氏)

  • 会場には、日本未発売のビルトイン冷凍冷蔵庫「K7000」シリーズを展示。回転する棚や、加湿して果物や野菜などの鮮度を保つ機能を備えています

【動画】アーティチョークの上に注目。ミストが出ていますね。これが野菜の鮮度を保持します

  • 棚が回転し、奥の食材を取り出しやすい仕組み

  • 食品を整理しやすそうな棚。見通しが良いので使い忘れを防ぎ、フードロス低減に役立ちそう

スピーチの中では、Dr.ツィンカン氏の日本への想いも語られました。

「約38年前、父と初めて日本を訪れて以来、日本の歴史・文化に魅了されました。日本という国は、世界の主要な経済大国として台頭し、ドイツでは深い敬意を持って受けとめられています。何十年にもわたって、ニコン、ソニー、ホンダといった多くのブランドは特別な地位を占めてきました。私の考えでは、ミーレも取り入れてきた『カイゼン』や『トヨタ方式』がなければ、多くのドイツメーカーは、今日ほど成功していなかったであろうと思っています。ミーレが1992年にアジア初の子会社設立を決めたとき、当然のことながら日本を選びました」(Dr.ツィンカン氏)

このほか、Dr.ツィンカン氏の親戚には世界でも指折りの日本版画の収集家がいて美術館を立ち上げた話や、ハーバード大学在学時のルームメイトが日本出身だったというエピソードも紹介しました。

  • 「日本ではキッチンスペースが貴重なので、電子レンジ機能付きオーブンやスチームオーブンなど、2つの機能を1つに組み合わせたものを取り入れることが1つのソリューションになるのでは」(Dr.ツィンカン氏)

  • 「ブランド、そしてブランドが反映されている製品、サービス、ソリューションによって、喜びに満ちた体験を創り出すことを目標にしています。(お客さまと)信頼を構築するポイントは、お客さまの期待を超え続けることです」(Dr.クニール氏)

長期使用は究極のサステナビリティ

ミーレは「長期使用は究極のサステナビリティ」というメッセージを発信しています。

「省エネ機能を搭載した製品でも、製造にあたって排出されるエネルギー量は、使用時に削減できるエネルギー量より大きいのです。最新の省エネ機器を製造するよりも、今ある機器をできるだけ長く使うほうが環境負荷は少なくなります」(Dr.クニール氏)

こうした製品を作る一方で、ミーレは製品自体の省エネ性能にも力を入れており、「この20年間でミーレの家庭用電化製品の電力消費量は平均して55%削減しています」(Dr.ツィンカン氏)といいます。さらに、寿命を終えた機器は環境負荷を抑えた方法でリサイクルするなどしています。

ミーレのブランドプロミスは「常により良いものを」ですが、「過去の自社製品よりも良く」「他社製品よりも良いもの」を目指し、製品とサービスを進化してきました。ミーレ製品は、国内メーカーの一般的な家電と比べて高額な製品が多いのですが、長寿命で環境負荷が低い、使ったときの喜びをトータルで考えると、ファンが増えていくのもうなずけます。

  • 左から、Dr.クニール氏、冨田氏、Dr.ツィンカン氏

  • 30周年を記念したミーレケーキ

  • 展示されていた手動の洗濯機。マイナビニュース・デジタルの林編集長と比較すると大きさが分かりますね

  • こちらは1958年発売の全自動洗濯機「505」。このころからすでにタイムレスなデザインを採用していました